夫は家の中でカニ歩きをしています。ー連載スタート
突然ですが、家の中でカニ歩き(横歩き)をしたことがありますか?
・物がギチギチに配置されているお部屋に住んでいる
・廊下や扉が狭めである
・引っ越しの途中で家の中がダンボールだらけで散らかっている
・本人がビッグサイズである
場合、しかたなく家の中でカニ歩きをするかも知れません。
でも、私たちはゆったりとモノを配置し、廊下幅も扉も1〜2メートルあり、引っ越しも終わり、夫は普通体型です。
それなのに、夫は家の中でカニ歩きをしています。
なぜなら、 #夫は強迫性障害 だからです。
はじめまして
はじめまして、あおいと申します。
少し前から、 #夫は強迫性障害 というハッシュタグでたま~にツイートしています。ツイートだけでは収まらなくて、シリーズ化しようと思い、noteに行きつきました。
強迫性障害って聞いたことありますか?
私は夫と付き合うまで、存在自体も知りませんでした。そして、夫と付き合っても、しばらくはピンときませんでした。
目に見えてわかりやすい障害ではなく、脳の中で起こる不都合です。
英語ではOCDと呼ばれます。
解体すると、"Obsessive-compulsive disorder"。
obsessiveは頭から離れない、とか、こだわりがある。
compulsiveは強迫的に何かをせずにはいられない状態。
disorderは障害ですね。
つまり、不安が頭から離れなくなり、そのせいで強迫的に何かをせずにはいられない、もしくは何かができなくなる障害のことです。
例えば、子供を殺してしまうかもしれない、ケガさせてしまうかもしれない、という考えが頭から離れなくなって、子供に触れなくなる、子育てに関与できなくなる。(そんなことはしないと理論上ではわかっているのに)
鍵を閉め忘れたかもしれない、という不安が離れなくなって、なんども鍵を確認しに行く。(本当は鍵を閉めたことを知っているのに)
致死性の伝染病になるかもしれない、という考えが頭から離れなくなって、公共のモノに触れない。友人や家族とハグができない。触った後には長時間のシャワーを浴びる。(そんなことをするのはおかしいとわかっているのに)
他にもいろいろパターンはあります。多分、上記のような不安を"一瞬"感じることは一般的にもありますよね。わたしも鍵閉めたかな?とかガス切ったかな?と戻ることはあります。
でも、強迫性障害を持つと、その考えが自分でコントロールできないほど頭にこびりつき、行動を制限してしまうんです。家族や友達がそんなことないと説得しても、自分の頭の中で分かっていても、自分ではどうしようもできないんです。
#夫は強迫性障害
そして、私の夫は、上記の強迫性障害の3つ目の例、病気の原因になる細菌への強迫観念があります。
カニ歩きの正体は、”汚染”を避けるための行動なんです。壁や家具、私の持ち物や服などに触れないために極力自分の接触可能面積を縮めているんです。
あ、ちなみにずっとカニ歩きをしているわけではないですよ。夫の通り道で特に不潔なことが起こった場合、もしくは起こる可能性がある場合(どちらも夫判断です)に正面を向いて歩きません。まぁ、ほぼ毎日ですがね。
ただし、正面を向いて歩いていても、腕はポケットの中か、胸の前でクロスさせて、周りのモノに触れないようにしています。腕をだらーんとリラックスして歩くことはありません。肩が緊張しているのがわかります。
他にも、
・人が触ったものには触りません。
・公共のドアノブ、ボタン、椅子、机、ペンなどは素手で触りません。
・自由に手をつないだり、ハグをすることはできません。
・家で食事をするときは半裸で、食事のあとはシャワーを浴びます。
・ゴミ袋、ゴミ箱は恐怖なので、お菓子のカラを頻繁に捨てに行けません。
・家の中にも聖域があり、そこは容易に他人に侵略されてはなりません。
・1日中聖域で生活します。そこから出た場合にはシャワーが必要です。
・外部から購入したものは基本的に6週間放置します。
・突然の訪客には対応できません。
・一度に”汚染”されていいのは片手だけです。
・”清潔”にするために非常に多くの時間がかかります。
・”清潔”にできるのは特別な液剤だけです。
・消毒用品を切らすことは恐怖です。
・”清潔活動”後は、2時間~3時間、隅々まで自分の体をきれいにする必要があります。
このリストは終わることはないでしょう。
強迫性障害の夫と結婚した私
そんな夫と結婚した私は、正直に言って、とても苦しんでいます。私の知識が足りな過ぎたんです。想定外が多すぎるので、結婚生活の理想と現実とのギャップに苦しんでいます。
知識があったとしても、頭では理解していても、感情はついていきません。
別れるとかそういう話ではありません。夫のことは心から愛していますし、治療を続けると改善することも知っていますし、改善も見ています。それに、強迫性障害は夫の一部であって、夫本体ではありません。
そして、理解者が少なすぎることも私を苦しめています。上にあげたような症状は一緒に住んでいる人でなければ分かりません。夫の親族も友人たちも彼の強迫性障害を認知していますが、理解には程遠いと感じます。
目に見える身体の不都合ではない上に、本人の安全領域内で起こることの方が多いため、理解しようがないんです。
インターネット上を探しましたが、なかなか家族目線で客観的に書かれている記事を見つけることができませんでした。それなら、私がみなさんに伝えます。
できるだけポップに伝えようと思いますが、私の愚痴になるかもしれません、それでも、それが現実なのです。伝えたいので、伝えます。
一人でも多くの方が強迫性障害と聞いて、ピンとくるようになるために。その家族の苦労を聞いて、共感できるようになるために。
(2021/03/05 タイトル変更、加筆しました。)