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800字日記/20221030sun/114「冬の足音」
尿意で目覚めて急いでトイレに立つ。昼過ぎだった。明け方はなん度もトイレに立った。買ったばかりの掛けふとんがふかふかで温かでちょうど良く汗をかかないぶん尿が溜まったのか。
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起きて冷蔵庫を開ける。朝食は奮発するか。昨晩、アイデアが浮かんだ自分への褒美だ。ソーセージにスクランブルエッグを焼く。これが褒美なんて情けない。ノルマは月末だ。カレンダーを見る。十月は三十一日あった。猶予が一日、延びた。
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そうじを終えて、ひとふんばり書こうとパソコンをひらく。ネコが足に絡んでくる。心を鬼にして無視を決め込む。ネコは寝床に入って丸くなる。
小一時間、書いた。それだけなのに、集中力と体力の消耗がはげしい。最近その衰えが手に取るようにわかる。老いが恐ろしく感じる。これからは老いの足枷もふまえてなんでもやっていかねばと肩を落とす。時間は替えの効かない貴重な資源だと若いときは気がつかなかった。浪費し放題だった。
ネコは成長が速い。人間の四倍の速さで老いる。二歳半だから二十歳をすぎた頃か。元気いっぱいだ。すぐにおなじ年齢になって再来年には年齢を追い越されているかもな。それ以上は考えないことにした。
こんな枯れた思念が浮かぶのも秋の季節のせいだろうか。春先や真夏には、たとえじっさいに四十肩やギックリ腰をしたとて、こんな後ろ向きの考えには及ぶまい。
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ベランダでネコが洗濯機の上で日向ぼっこをしていた。澄みわたった秋の空は晴れてはいるが陽は傾きはじめているのがわかる。カチャカチャと壜が酒屋のケースに入るような音を聞く。となりのベトナム人かな。
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財布は持たずにパーカーを一枚はおって階下に降りる。ロードバイクをまたぐ。肌寒い。見上げると空はどこまでも高い。ひと漕ぎで一気にからだが冷える。
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海岸にでる。陽が水平線に落ちるグラデーションは明らかに冬の始まりだった。スーパーの旗に「肉の日」。いいのだ。財布には五円しかないのだ。
(800文字)
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