800字日記/20221023sun/106「マシューはマイ・シュー」
目覚める。九時。はだ寒い。体内リズムは戻りつつある。昨晩はあたたかかった。今頃は東京にいる予定だった。羽毛ふとんは春に処分していた。いずれ買わねば。
オナラがでる。朝方に頻繁に用を足したが、また尿意が催してトイレに行く。汗をかかないぶんが溜まったのか。ながい小便をする。昨晩に飲んだビタミン剤で小便の色が異様に黄色い。リポビタンDのようだ。
「こら、やめなさい」
股の下に前足をかけたネコが便器のなかをのぞく。レバーを引いて流すと、音でネコが逃げていく。
ドアを閉めて便座に座って大便をする。
ちゅぽん。いっぽん糞が、まるで優秀なウナギのように水面に沈んだ。
最近はレトルトばかりで硬い。気になって昨晩はゴボウの味噌汁を作ったのだ。今晩はカボチャにしようか。ヨーグルトは関係ない。腸を動かさないとダメだ。ネコを観察しているとわかる。遊んだ後に決まってウンチをする。腸がうごいたからだ。
音楽をかけて、窓をあける。絵に描いたような秋晴れだ。掃除が終わって、文通アプリを開く。UKに住むマシュー君から届いていた。
彼は十七歳で日本語をまなんでいる。彼と音楽や絵やネコの話をする。
一週間前、二匹のネコの画像がとどいた。妹が名づけた「ケバブ」と黒い口ひげがある喜劇王から名づけた「チャーリー」だ。
「いま、ケバブは妊娠で忙しい」
色々と想像する。
彼にぼくのネコ「泪」の名前の由来を聞かれた。娘の名は「雫」。ぼくの苗字は「大澤」。雨が降って雫は川を流れて海にでる。海から蒸発した雲からまた「雫」となる。娘の弟と思って泪とつけた。
彼の教えてくれたUKソングはみんなカッコ良かった。知らない曲を薦められ、戸惑いと心地よさが混じる。なん度も聴くとマシュー君の顔が見えてきそうだ。感動する。
僕は何かに気づいた。あなたの下の名前「あき」が「秋」と同じだ!とてもいい。僕のマシューは発音が難しい。マイシュー(僕の靴)に聞こえます。
僕は笑った。
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