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800字日記/20221129tue/143「2022年の冬には菊次郎の夏を」
コロナ感染は大変でしたね。「新潟にいらして、近くにお立ち寄りの際はお声がけください」
その言葉、確かに受け取りました。
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ある映画を思い出しました。昔の映画ですが北野武監督の「菊次郎の夏」です。
ある日、少年菊次郎の元から母親が消える。菊次郎は心細くなって母をさがしに出る。
途中、おじさん(ビートたけし)にであう。おじさんは一緒に母を探してくれると言う。
菊次郎はある家の玄関先で母を見つける。その家からは別の子の声が聞こえてきた。
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時間はながれ、人生は変わるものです。
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二十五年前、僕は学生だった頃、他大学のサークルでKちゃんと仲良しになりました。ぼくには彼女がいてKちゃんには彼氏がいた。それでも仲良くなって二人で品川から四国の愛媛(Kちゃんの同級生が通う愛媛大)まで列車の旅をしました。
「十年十五年たって互いに独り身だったら結婚でもするかね」
と互いに笑いました。
僕は韓国人と国際結婚をしてわかれ、彼女はインド人と結婚して今では三児の母親。幸せそうです。
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十年前、精神的にキツいことがあって相談相手がひとりもいなくて(なにがあってもこちらから連絡はしてはいけないと心に決めていたのだけど)、Kちゃんに連絡をしたことがありました。深夜だった。Kちゃんは僕の苦痛に親身に応えてくれた。
けど、そのとき「せな」と呼ばれていた名前は「蒼井さん」となっていました。
あの喪失感はなんだったんだ。笑。
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Fさんは十年後、何歳になって何をしているのでしょうか。
十五年後、二十年後はどこにいるのでしょうか?
二十年後に僕が、実際にFさんが働く建物(あるいはその敷地だった場所)の前に立って見えるものはなんだろうか。
僕の希望はFさんが将来、幸せに暮らし、見知らぬ書籍を手に取って(あるいは電子辞書でも)読む、著者などはまったく気にせずに。じつはその本の著者は僕だった。
答えは二十年後に。
新潟の2022年の冬に「菊次郎の夏」。ぜひ。
それでは、
(797文字)
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