冒頭で出会うVol.4_アンテナショップ
二時半になった。安藤真帆はブラインドを下げようとして手を止めた。西の駐車場に背の高い銀のモニュメントがある。カモメのようだが。
「どう、慣れた? 」
本部の藤原だった。
「はい。まだ不安ですけど」真帆は適当にいった。
藤原は笑った。おれが採用したんだぞ。ジョークなのか意味深に真帆の胸のネームの角度を直す。顔が近い。マスクの奥からタバコの脂と歯垢が腐ったような黄色い息が鼻についた。顔を背けるわけにもいかず目を細め息をとめる。苦行だった。
「すみません。」
客だ。貧乏くさい男だった。藤原は真帆をのけて男に笑顔を振りまく。真帆はブラインドを下げる。
「あのモニュメント、なんでしょうか?」
背に青いリュックを背負った、メモ帳とペンを握った男が窓の外を指さしていう。やはりカモメのような背の高い銀のモニュメントがある。藤原はブラインドをさげる真帆の手を止めた。
「そんなこと考えたことなかったですよ」
藤原は男に慇懃に笑った。筋金入りの営業スマイルだ。そちらの方もですか? と男が訊いてきた。ええ。考えたことないです。ああ、そうですか。男は肩を落とした様子だった。藤原と土産物について話す男は旅行客じゃないと思った。スニーカーに薄手のシャツだった。
失敗。状況を真帆が独白で説明してるだけ。
書いて感じたこと、
「なぜ男は訪れたのか?」=「マクガフィン」☞「じつは男は真帆を狙って訪れた」無意識にきれいな掌編で纏めようとしていた、かも。
以後の文脈はともかく「その場の出会い」を描くこと。
描こう描こう(こねくり回そう)とすると沼にはまり込む。
頭に浮かんだ情景をサッと掬い取る感じだと思う。
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