『デート』をがっつり褒めたくなったので(その1:伏線と小ネタがぎっしり)

 月9ドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』が最高に面白い。面白すぎて次の月曜が待ちきれず、毎日録画を見ては何かしら発見してツイッターでつぶやきたい欲に駆られるのだが、見てない人にとっては何がなにやらだし、いいかげんウザくなってきている自覚もあるので、ここでガーッと吐き出しておきたいと思います。今週が第5話だったので、まとめるのにも折り返し地点でちょうどいいですし。

 デートの何が面白いって、まずは脚本なんだけど、あの『リーガル・ハイ』や『キサラギ』や『相棒』や『ALWAYS 三丁目の夕日』の古沢良太がおそらくノリにノッて書いている脚本がすごい。それに、役者とスタッフが全力で応えてるのでとんでもないことになっている。

 どこもかしこもすごくて、ダラダラ書くととっ散らかりそうなので、項目別に褒めますね。以下、ここがすごい点列挙。

・伏線の張り方と回収
・小ネタと引用
・時系列の扱いと捨てカットのなさ
・毎回の「お約束」進行の扱い
・登場人物へのまなざしと役者の活かし方
・ニッチなコメディに見えて「月9の王道」
・ジェンダーと現代社会の若者への視点

 項目別に褒める前に、見たことのない方のためにドラマをざっくり説明すると、東大院卒で融通の効かない超合理主義者の依子・29歳(杏)と自称「高等遊民」で一度も職についたことのないニートの巧・35歳(長谷川博己)が、婚活を通じて知り合い「お互いに好きではないけれども“理想の結婚”をするべく」デートを重ねていく、という話です。ラブコメです。

■もう大ネタ(伏線)を振るのってダサいのかも 〜伏線の張り方と回収〜

 このドラマはミステリーではないので、別に伏線なんかなくてもいい。でも張る。気づかなくてもいいですよという体で張る。
 たとえば、第2話の赤っ恥フラッシュモブプロポーズ。選曲が広末涼子の『大スキ!』だというところでもう爆笑なのだけれど、その前のシーンで、このフラッシュモブプロポーズを計画した巧の幼なじみ・宗太郎(松尾諭)の部屋にさりげなくその『大スキ!』のポスターが貼られていた。宗太郎は元ヤン風で会話にしばしば「ロック」を持ち出すのだけれども、プロポーズには広末が最適だと心から思ったんだろうなと思うと可笑しみも倍増。
 第5話の冒頭では、クリスマスデートに依子は恰幅のいい“本物の”サンタコスプレで登場する。完璧主義だがズレている依子らしいエピソードだが、これがドラマ後半の、巧が依子だと思い込んでサンタ変装をしている依子父(松重豊)に夜這いをかける際に、見間違えて抱きつくことへの説得力を増している。お見事。
 他にも、伏線とまではいかなくとも、第1話で依子が自己紹介で披露した「健康上の問題は強いて言うなら肩こり」というエピソードが、何気ない“あるある”ネタのようでありながら、第4話で依子と巧がはじめてスキンシップ(肩もみ)する際に活かされたり、第1話で描かれた制限速度を頑なに守ってスクーターに乗る依子の日常の設定が、第5話で巧に会いに行くために制限速度をオーバーする(おそらく倫理上の問題でズバリ描かれてはいなかったけど)という感情の高まりを描くのに活かされたり、とにかく小さくあちこちに関連性と必然性があって説得力がある。ムダがない。
 こういうのを見せられると、勿体ぶりながらもドラマの肝だから気づいてもらわなきゃ困るしという感じで説明過多に伏線を見せつけるドラマが、とたんにダサく思えるという罠。怖いなぁ。

■わかる人だけにわかればいい! 〜小ネタと引用〜

 タイトルは『あまちゃん』の菅原ちゃんの台詞で、つまりは脚本のクドカンの言葉なんだけれども、クドカン脚本よろしくこのドラマも小ネタがわんさか詰まっている。巧の台詞にちょいちょい挟み込まれる作家の名言をはじめ、上記にある広末涼子や、巧の本棚の書籍のチョイス、四角四面な依子の作る料理が全て四角形の具材で構成されていること、剣道を嗜む依子父の晩酌の際の酒の銘柄(「一刀両断」「親心」など)などなど。1分に1ネタぐらいはありそう。
 特に巧のキャラ設定を裏付ける書籍などの選び方は秀逸で、好みの女性は「ヘップバーンと原節子と峰不二子とメーテルを足して4で割った」、好きな少女漫画家は「里中満智子、萩尾望都、いくえみ綾から、羽海野チカ」と年齢のわりにはちょっと古いものの、趣味としては屈折していない人物像を描き出しつつ、羽海野チカの同人誌時代などちょっと分かる人にはニヤリとさせるネタを用意。
 書籍関連のネタで言えば、巧が依子へのクリスマスプレゼントを買う資金を得るべく苦渋の決断をして売った古書が「小林多喜二全集」だったのも笑えたし(どんなつもりで読んでたんだニートよ)、依子が巧の部屋に入り勝手に図書分類表に基いて整理した本の並びも面白かった。「ベルサイユのばら」「みかん絵日記」「ヤマトナデシコ七変化」が“植物”に分類される時点で笑えるんだけど「ドカベン」まで植物の棚に……? “ド花弁”ですかそうですか(脱帽)。
 第4話の巧が依子へのクリスマスプレゼントを届けに行くシーンに「恋人はサンタクロース」が流れるのはまぁベタだけど、自称「高等“遊民”」の巧がユーミンの曲をバックに走るというダジャレまで盛り込まれているし、第5話のカウントダウンパーティーの設定(横浜、花火、寺島進出演)は脚本の古沢が昔書いた名作の呼び名高い(私は見たことないんだけど)『相棒』の「バベルの塔」回のオマージュになっているらしい。濃い。小ネタと引用が濃い。
 ジャニヲタ的には、鷲尾役を演じるHey! Say! JUMPの中島裕翔くんに(高等遊民に固執する巧に向かって)「今は平成だ!」という台詞を言わせたことにひたすら拍手です!


まだ2項目めなのに長くて時間がなくなってしまったので、続きはあとで。

 

 



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