ヴェラキッカ感想(ネタバレ注意)
見終わった感想としては「末満風宝塚歌劇」である.歌が上手なメンバーを揃えたと言うだけあって、美弥るりかさんの圧倒的スター感と実力キャストの面々。和田さんの難しい楽曲も安心して聞けるのでこれまでのTRUMP作品の中で一番完成度が高いなという印象でした。
楽曲中にリリウムで使われているセリフが盛り込まれていることや設定からも、リリウムを意識した、対となる作品ということが分かります。
本作はTRUMPシリーズの中でも珍しい死者のでない作品で「末満さんの血は赤い」などと妄言が囁かれていますが(失礼)、個人的にはモヤモヤとした気持ちばかりが残り、救いのない印象でした。なぜならリリウム=リリーの共同幻想の終わり に対して、ヴェラキッカ=シオンの共同幻想の始まり であるからです。リリーがあれほど否定した共同幻想を肯定する本作。リリウムから履修した私にとっては、シオンの前に登場するノラは偽物でありハリボテで、シオンにとっての理想の共同幻想にすぎない。シオンが作中で「初恋だった」とノラへの気持ちを過去形で表現しているのは、シオンの中で本物のノラと共同幻想のノラが区別されてるのだと思う。「君が思っていたのと違ったかな?」とノラが言いますが、実際シオンの回想で出てくるノラとは全く異なる姿で登場します。ノラへの罪悪感から増幅された愛が偽物のノラへ注がれていくシーンはまさにシオンの幻想が始まるシーン。なんとも悲しく煮え切らないモヤモヤとした気持ちで終わりました。その後ヴェラキッカの一族が速攻で流れ、重たい気分を吹き飛ばしていきましたが。(この曲が本作で1番好きです)
ヴェラキッカ単体で見ると共同幻想を肯定し贖罪が果たされる作品ですが、リリウムからヴェラキッカを見るとなんとも重たく救いのない話のように感じてしまう。見る順番によって作品の印象が180度変わる末満トリックがここにあるわけです。ヴェラキッカからリリウムという順番に履修するとさらなる絶望感を味わるという訳ですね。私も記憶を消してヴェラキッカ、リリウムの順番で是非とも見たい。リリウム再演が待ちきれません。その前にとりあえずヴェラキッカサウンドトラック発売してほしい、、