有言不実行の男

「じゃあ、また連絡するね」
それは、彼のお決まりの台詞だった。
でもいつもその後何日待っても連絡は来ない。それもお決まりだった。待ち切れなくて私の方から連絡する。通話は三回のうち一回出てくれればラッキー。LINEを送っても既読になるのも遅く返事が来るのもまたそこから数日後だった。

今こうして振り返ると、彼は明らかに私に興味がない。それなのに私は、いつか絶対に彼と自分は結ばれると信じて疑わなかった。若さゆえの愚かさとも言えるが、私は現実を見ようとしない単なる馬鹿者だった。それから私は勝手に彼を試し、勝手に大失恋をした。みんな嘘つきだ口ばっかりだと勝手に世の中に失望した。

時を経て、私はこの春に結婚を控えている。相手は有言実行の男。そして私はもうすぐ夫になるその人をエスパーだと思っている。私が頭の中でその人を思うだけで、数分後には必ず連絡をくれるからだ。私は安心して幸せになれる、と思っている…

身辺整理のため、アカウントを削除しようと、何年も開いていないフェイスブックを開いた。見ることもなく放置していた新規メッセージに目をやる。私の思考はそこで完全に止まった。そこには全く連絡をしてくれなかった彼から、何年にも渡って大量のメッセージが届いていたのだ。

「また連絡するね」
約束は果たされていた。
鼓動がはやる。
私は幸せになれるのだろうか…