魚に愛は伝わるか(初日の反省のお話)

ポリプテルスたちをお迎えした初日、エンドリケリーに事件が起こっていた。
水槽に無事入ったポリプテルスたちを眺めて、パートナーと一緒ににやにや癒されていたところでそれに気づいた。
エンドリケリーが、とても尾を反った状態で動いていた。例えるならしゃちほこのように。
なんの知識もない人間2名は「おもしろいクセがあるねぇ」などと最初は笑って見ていたが、私はどんどん不安になっていってスマートフォンで該当しそうな症状を調べた。
お迎えしたエンドリケリーはお店では物陰に隠れてなかなか動かない子だったため、泳ぐ光景をほぼ見ていなかったのだ。パートナーがこの子と目が合ったんだと言って選んだ。
逆にセネガルスは一番動いていた子を選んだ。お店にいたときから今でも、底棲魚とは言いつつも水槽の上の方に行くことが多い子だ。
該当しそうな症状を見つけて、笑い事ではないことを知った。
「転覆病」にあたる症状に近かったのだ。
お腹に空気やガスが溜まり、尾の方が浮いてしまう。ひどい場合お腹が上になりひっくり返ってしまう。死に至る可能性もある。
それを知って動悸のように心臓がバクバクいい始めた。
症状を確認したのは22時頃。お店はやっておらず、相談することも薬を買いに行くこともできない時間帯だった。
とにかく自分ができることを調べた。
すると水温を上げて28℃前後にすると治ることがある、という書き込みを見つけ、水温を上げることにした。
そのときの水温は26℃前後。すぐには上がらないので、水温計が28℃を超えるまで見守る。
笑い事ではないのに、クセだと思い込んで笑っていたことを後悔した。
次の日に薬を買おうか。ポリプテルスは薬に弱い。塩浴が良いのか。なんとかリットルの水になんパーセントの塩を入れる。
不安と情報量が比例していく。
こんな超初心者に薬を扱えるのか。塩浴なら塩分濃度を間違えずに塩水をつくることができるのか。
心と頭が悶々としてきて、どんどん思考に靄がかかる。
自分の不注意で、死んでしまったらどうしよう。
水槽から離れるのが怖かった。眠って翌朝を迎えて、何か悪いことが起こっているのではないかと悲観してしまい怖くなった。
そんな気持ちが伝わったのか水温が28℃を超えた頃、パートナーが寝ようと声をかけてくれた。
勝手に不安になって悪い方向の考えばかり巡らせてしまう。悩むのがクセと言われてもおかしくない性格を、普段はおちゃらけているパートナーが理解してくれていた。
翌日に薬を買いに行こうかなど、ベッドに入ってからもとにかく考えることばかりしていた。

翌朝、寝坊した人のように飛び起きて水槽に向かった。
エンドリケリーは、尾が浮くことなくのんびりしていた。
治っていた。よかった。
ずっと緊張していたらしく、身体から一気に力が抜けたことがわかった。
症状の原因は結局わからなかった。
メダカは1匹いなくなっていたので、どちらかが食べたことはわかっていた。お腹の膨らみ具合で、おそらくエンドリケリーの方だと思われる。
空腹か。環境が突然変わってしまったストレスか。
これ以降、エンドリケリーに尾が上がる症状は出ていない。セネガルスも似た症状はなく元気そうでいてくれている。
初日にして、生き物を迎える重さをひしひしと感じる出来事となった。


2022年8月25日 投稿
2022年8月26日 リンク追加


見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。
ありがとうございます。


次のお話らしきもの


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