週末ごはん(2月下旬)
■2月〇日(土)下旬
【夜ごはん】
ほっともっとのお弁当
大変だー!
ママが怒った。
俺とお姉ちゃんに怒ったんだけど、パパがなだめてもだめで、
「クールダウンしてきます」
と言ってお散歩にでたきり、ママはまだ帰ってこない。
パパとはメールでやりとりしているらしい。
「ママ、もともと体調がよくない日だったんだ」
スマホを見てパパが言った。
ああ、たぶんあれだな。
たまごが出る日か、血が出る日だ。
ママが怒ったのは、俺たちもほんとうに悪かったんだけど、
それにしても、いつも以上にひどく怒るときがあって、
そういうときはたいていあとからママが「ごめんね」って言う。
「体調が悪かったからよけいに怒っちゃったの」
って謝るんだ。
ママもつらいんだろうなって思う。
でもさ、俺たちだって大変だよ。
ママが怒ったら、いっつも「やばい!」ってなるもん。
パパはママとやりとりしながら、
「おべんとうやさんに行ってくるね」
って、俺たちの注文を聞いた。
お姉ちゃんも俺も、唐揚げ弁当をたのんだ。
ママは、どこかで食べてくるらしい。
やさしいパパでよかったよ。
ごはんのまえにお風呂も済ませたし、ゲームの時間もちゃんと守った。
俺たちはすごくおりこうにしてた。
もしママが帰ってこなかったらどうしようと思うと、ちょっと苦しかった。
みんながお弁当を食べ終わったころ、ママは帰ってきた。
「ただいまー」
おちついた明るい声が聞こえたとき、俺は(たぶん、みんな)すごくほっとした。
あー、平和が戻ってきたかも。
それでママは、パパとおばあちゃんとお話したいって言った。
ママはたぶん、俺たちの子育てのこととか、ひとりで悩んでたんだ。
聴いてもらってらくになったのか、それきりママは落ちついた。
お布団に入ると、お姉ちゃんも俺もしんみょうに黙ってた。
明日は平和だといいなー。
俺はいい気もちになりたくて、タイタニックのジャックとローズのことを考えながら寝た。
長男より
■2月〇日(日)
【お昼ごはん】
春菊のてんぷら
かき揚げ
さつまいも天
冷たいお蕎麦
スーパーに行ったら春菊が出ていて、思わず買ってしまいました。
お休みの日のお昼ご飯は、わが家は麺類が多いです。
今日はお蕎麦だから春菊天を添えることにしました。
いつも、米粉と片栗粉で揚げているのですが、ちょっと楽をしたくなって、
「コツのいらない」粉を試してみました。
ところが、なぜー!?
コツのいらない粉で、失敗続き。
ああ。
ペタッとした春菊とかき揚げの姿が悲しくて、いつもの粉の配分にかえて残りを作りました。
それはいつも通りの出来栄えに。
「ごめんねー。半分は失敗しちゃった。わたしが責任とって食べるからね」
そう言って食卓にてんぷらを出すと、
「ああ、失敗しちゃったの。だいじょうぶだよ」
だんなさんがほんわか言いました。
「ちくわがないの~」
とテーブルを見るなり言った長女も、お蕎麦を夢中で食べています。
今日のお蕎麦は、長女のすきな銘柄の乾麺なのです。
「ぺちゃっとしてても、おいしいよ」
春菊を食べた母がそう言うと、だんなさんも、
「うん。おいしいよ」
と言って、かき揚げをお箸でつまみます。
だんなさんは、天ぷらならなんでもおいしく感じてくれるようです。
認知症の父も、珍しく自分でお箸を使って食べています。
麺とさつまいも天を。
「よかった」
失敗しちゃった春菊も、やっぱり香りはいい香り。
この苦味も、春の訪れを歌ってる。
のこりの春菊は、胡麻和えにして夜出しましょう。
昨日のわたしのあらくれの名残があり、こどもたちはまだおりこうにしています。
いつもは食事中に喋りつづける長男も、今日は真面目に食べていました。
気をつかわせてごめんね。
でもわたしね、
みんなのおかげでここのおうちが大好きだよ。
みんなが大好きだよ。
お蕎麦を食べているみんなを見ながら、そんなことを思いました。
春の訪れは、食卓にも花びらが舞うようです。
妻より