天使は実在した日・前編

ついにこの日が来た。私はこの日を生きがいに六ヶ月間を生き抜いてきた。
今日は、Newjeansの東京ドームライブに行くのである!
思えば去年、年末の紅白をぼーっと見ていたら突如現れたNewjeans。その圧倒的なビジュアルとダンスを持つ彼女たち。二次元でも三次元でも可愛い子が好きな私にとっては青天の霹靂だった。それからすぐにファンクラブに大金を払って入会し、今に至る。年会費6500円はバイトができない学生にとってかなりの痛手だった。今思えば、入会したての私が当選するなんて奇跡としか言えない。あの時の私は謎の自信に満ち溢れていたが、あれで落選していたらと思うとゾッとする。
さすがに夜から始まる東京でのライブに一人ではいけないので母に同行してもらった。当初は顔の見分けがついていなかった母も、今や自分のお気に入りのメンバーができている。布教した努力が報われた。
ただ、ここに来るまでに私が乗り越えた壁は数知れない。
なんとライブの日は木曜なのだ。なぜよりによって平日なのか、せめて金曜にくれ、と私と母は憤った。翌日に残る平日の重みは計り知れない。
さらに運の悪いことに、その木曜は期末一週間前であり、ほぼ全教科の提出物がある日だった。なので前日に貴重な休み時間の合間で職員室とクラスを往復し、全ての提出を済まさせた。一階から四階の距離はなかなか足にくるものである最後に私を悩ませたのは、当日の学校に出席するか。私はフルの状態で行きたいのでもちろん欠席した。しかし、それを知った友人たちの目は忘れられない。なぜだ、午前中はこればいいじゃないか。なんだ、ずる休みじゃないかそれは……そんな悪意の追求をくぐり抜け、今に至るのだ。


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