夏の思い出2。Crystal Kayの「boyfriend」
Reborn-Art Festivalで牡鹿半島滞在中に泊まった民宿は、食堂に集合して食事をとる形式だった。そこには小さなカラオケ機があって、2泊目の晩、同宿になった高校生の女の子が歌っていたのが、Crystal Kayの「boyfriend」だった。
仙台から牡鹿半島まで約2時間かけて、母親と彼女と2歳になる弟との3人でピンクの軽自動車でやってきていた。彼女の母親は仙台でホステスをしているそうで、17歳のときに彼女を生んだという。別車でやってきた母親のホステス仲間だという家族も一緒。この母親のホステス仲間には、眉毛がほぼなかった。
「コイツ、最近彼氏できたばっかで調子乗ってて」
と冷やかされても、とても落ち着いた様子の彼女は、その静かな声のまま、家族と同じテーブルで話すような調子でケータイで彼氏と通話し、カラオケも歌った。
限(きり)がないほどのキスをしたね 終わりはないと思ってた だってあなたは最初のboyfriend
澄んだ声がきれいだった。
ホステス2人組は高校時代の同級生だったという。
35歳でバツイチ、別れたダンナはともに7歳上、ともに2歳の息子連れというところまでお揃いの2人組は、1歳年上の私にはきちんと敬語で喋ってくれた。タバコは離れて吸ってくれたし、プロの手つきで濃い濃い水割りを出してくれりもした。その合間に、お互いのすっぴんを指差し合いながら「っていうか、あんたってそんなにブスだったっけ?」と大笑いした。
深夜、隣室からバラエティ番組の大きな音が響いてきたのには閉口したけれど、それは単に習慣の違いだったのだろう。
同年代のホステス2人組がカラオケで選ぶ曲は、私には一曲もわからなかった。唯一わかったのは眉なしが自分の夫にむりやり歌わせようとしたらしい「江南スタイル」のイントロだけだった。