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素人カメラマンがブライダル業界に飛び込んだ話
小学生の時、初めて自分でカメラを買った。
たしかバッドばつ丸が描かれた青いカメラだったと思う。
6年生、転校が決まっていた最後の運動会はたくさん写真を撮った。
写真にキャラクターとメッセージ欄がプリントされてくるインスタントカメラを愛用していた(調べたらかきこめーる24という商品だった、使用していたのはゴーゴーコニーちゃんver.)
中学生の時、PTAで広報係になった母から広報誌用に写真を頼まれた。
張り切って修学旅行に父から借りたカメラを持って行った。
撮影が楽しくなりその後も友達と遊ぶときにたくさん写真を撮った。
高校生の時、楽しそうだからという理由で3年続けた吹奏楽をあっさり辞めて写真部に入った(吹奏楽部が人数がおらず活動が少なかったのもある)
一眼レフを与えてもらい、バイト代でフィルムとカラー現像代を賄い、本当にたくさんたくさん写真を撮った。
初めて作品作りをした。
先生直伝の焼きこみ技術で全国大会にも行かせてもらった。
カメラを持って歩くことも、手探りでフィルム現像することも、酢酸臭い暗室におやつを持ち込みつつ写真を焼きこんだことも、全部楽しかった。
ある日部活の顧問に「写真の専門学校に行きたいと思う」と告げた。
先生はあっさりと「大学の方がお前には向いているよ」と言った。
そうなのか?と思いつつも、そっかと納得する自分もいて、写真とは関係のない大学に進んだ。
友人は写真の専門学校に進んだけど何が違うんだろう?あの子は才能があるから?なんて思ったりもした。
だけど今なら分かる。
私は作品作りに向いていない。
本当に向いていない。
進学した後も、就職した後も、気が向けばカメラを持っておでかけした。
技術をつけるとか何かに応募するとか考えたこともなく、ただただ趣味だった。
そんな私が、
写真好きなだけの素人が、
勢いで写真スタジオの面接を受けに行った。
◇◇◇
30歳を見据える年頃、アルバイトなのに店長で、店長手当と少し離れたところから通う同僚の交通費がほぼ一緒なことに気付き、「あ、転職するなら今しかないな」と急に思い立った。
必要経費である交通費と手当を一緒にしてはいけないけれど、金額だけ見たら一緒で。
人間関係も悪くなく楽しかったのに、ムクムクとこのままではいかん!ぬるま湯から出ないと!という思いが湧いてきた。
タイミングよく求人情報誌に写真スタジオが載っていて、近いし写真好きだし~くらいの軽い気持ちで応募。
まさか受かるとは…。
雑談で上司に採用基準を聞いたことがある。
カメラの技術や写真の撮り方は教えればなんとかなる、大事なのはコミュニケーションが取れるか、人にも仕事にも誠実か(嘘をつかないか)が重要とのことだった。
写真技術よりもコミュニケーション(接客)!!
長い接客業の日々が役に立つ時が来たのだ。
こうして私はカメラマンの第一歩を踏み出した。
◇◇◇
入社後はブライダルのマナーを勉強したり、カメラの説明書読んだり、アルバムのレイアウトを教えてもらうところから始まった。
この時はカメラマンとしては使えなくてもよかった。
大量のレイアウト作業を先輩一人でやっていたから、そっちを早く覚えることを求められた。
「色温度」でつまづいた。
写真の色調整をするのに、写真が青いとか赤いとか分からなかった。
「この時間は光が青いでしょ?この会場は赤く写るでしょ?肌の色がキレイに見えるように調整するんだよ、あとページごとに色揃えてね!」
え?みんな肌色ですが…。
本当に目が慣れず全然分からないまま補正→チェックを繰り返す日々。
少しずつ分かるようになってくる。
休みの日、友人と出かけた先で「あぁ、光が青いな」と実感した景色は今でも覚えている。
◇◇◇
現場に出る前にアルバムのレイアウトを覚えることにはメリットがあったと思う。
私は当時未婚で、結婚式への参列経験も少なかったので1日の流れを理解していなかった。
新郎新婦がどういう流れで1日を過ごすのか、どこで何が行われているのか、自分がどう動きどこで何を撮るのかが見えてくるのである。
ブライダルの写真は基本「記録」だ。
絶対に残さなければいけないカットがある。
撮り逃しがあってはいけない。
チャペルでの指輪交換にキスシーン…写真がなかったら困る(行わない人もいるので要確認)。
アルバムで絶対に使う写真、それらはすなわち撮らなければならない写真だ。
何をどう使うのか?が分かっていれば、自ずと撮るべき写真が分かる。
縦で撮った方がいいかな、横の方がいいかな?引きかな、寄りかな?なども考えられるようになる。
縦も横も引きも寄りも主役もゲストも全部取れればいいけれど、時間が限られると結構難しい。
キスシーンが一瞬触れただけで終わる人もいる。
めちゃくちゃ焦るので恥ずかしかろうとなんだろうと3秒くらい心でカウントしてほしい、できれば。
(自分は諸々が恥ずかしかったので神前式をした。キスシーンはない。ただ酔っ払い(夫)にほっぺチューされた写真は残っている…うっ。自分がしてないことを人に求めていいのか…)
撮り逃したりピントが抜けたりするとフォローが大変で、クレームものである。
あとは各式場の「売り」写真がある。
お客様がよく目にする写真、広告媒体によく載せる写真と言ったらいいだろうか…。
ここで!こんな風に撮ると素敵ですよ!!とウエディングプランナーさんがアピールしてるやつ。
ほとんどの新郎新婦が撮る。
そういう写真はだいたい型が決まっているので、その型どおりに新郎新婦を案内しポーズを付けカメラを設定して撮るのだ。
そう、売りの写真だけでなく必要な写真はだいたい「型」がある。
式場カメラマンはどこで何を撮るか把握しているので「型」と「カメラ設定」を覚えれば一通り撮れるようになる。
素人だった私が撮影できるようになったのもこれを叩き込まれたからだと思う。
ブライダルカメラマンとして必要なスキルは(最低限必要な)写真をきちんと撮ってこられること、新郎新婦に不快な思いをさせないこと。
もちろん写真が上手いに越したことはない。
カメラマンのセンスが発揮されたり、オリジナリティーが出たり…はプラス要素だと思う。
言うのを(書くのを)忘れていたが、式場には専任カメラマンと契約カメラマンがいる。
専任はその式場をメインにしているお抱えカメラマンで、契約はフリーランスのカメラマンとか週末カメラマン。
式場問わずブライダルだけを撮る人もいるし、普段は学校カメラマンとか別のスタジオ勤務で七五三・成人撮ってるとか色々。
言ってしまえば誰でも「カメラマンと名乗ればカメラマン」なのである。
◇◇◇
カメラマンがゲシュタルト崩壊してきた…。
秋のブライダル繁忙期シーズンは運動会に七五三にとカメラマンが出払っていて人員を確保するのが大変だ。
土日の大安や友引は特に忙しい。
この時期は特に色んなカメラマンが出現(?)するので少し注意してほしいなと思う。
(コロナ禍を経て結婚式が減っているけれどカメラマン不足は解消されたのだろうか…、それとも深刻化しているのだろうか…)
今はカメラマン持ち込みも制限がなくなったりゆるくなったりしていると思われる。
昔より選択肢が増えたことはいいことだ。
式場専任は仕事が減るので喜ばしいことではないのだけれど。
持ち込み料を取るなら写真屋にそのまま回してくれ(ほかの式場事情は知らない)。
話が脱線した。
あとは実際に現場に出て先輩カメラマンの動きを見、邪魔にならないところで写真を撮って確認してもらうことを繰り返し。
ある程度写真が撮れるようになったらデビュー。
デビューからしばらくは胃が痛くて仕方なかった。
デビュー後まもなく先輩が病気で休養からの妊娠で休養などがあり、ほとんどのことを一人でせねばならずパンクした。
私のあとに人が入ることはなく…。
スパルタ教育だったと思う。
スタジオのアシスタントさんも辞めてしまい、アシスタント業務も増え、自分が撮影することはなくなっていった。
退職前の1〜2年くらいは事務経理、アシスタント、レイアウト、接客、いざとなったら写真が撮れるマルチ事務員だった…。
(コロナ禍で自宅待機からの妊娠で失職した)。
かくして「作品作り」が苦手だった私は「記録写真」でカメラマンとなった。
写真に色んな側面があって良かった。
私は写真を通して思い出を作り残すことが好きだったのだと思う。
1枚で物語やメッセージを伝えるインパクトを与える「作品」たる写真は撮れなかったけど、誰かの思い出を記録出来ていたなら、誰かの喜びの日のお手伝いが出来ていたならこれ以上嬉しいことはない。
◇◇◇
式場にはプランナーさんや衣装さん、花屋さん、介添さん、披露宴を取り仕切るボス、ありとあらゆる立場の人がいて、協力しつつ、時には駆け引きしたりしながら1日をつつがなく終えられるように皆頑張っている。
新郎新婦、ゲストはもちろん関係者とも密にコミュニケーションを取らなければならないので接客がきちんとできる人というのは大切なポイントだなと改めて感じている。
自分は出来ていたのかなぁと思う時もあるけれど、トータルで考えるとキツイけど楽しかったなとは思っている。
こんな素人を育ててくれた職場には感謝しかない。
◇◇◇
余談・写真にこだわりがあるプレ新郎新婦さん、まずは当日担当するカメラマンが撮った写真を確認してくださいませ。見本のカメラマンがつくとは限りません。
絶対撮りたい写真はスクショしてカメラマンに見せて出来るかどうか、どうしたら出来るか交渉をおすすめします。
撮ってくれるだろうは後悔の元です。必ず伝えておいてほしいです。時と場合によっては撮れないこともありますので要確認です。
楽しい1日を過ごせますよう遠くから祈っております。
和装を撮れる方が減っているそうなので、ブライダルカメラマンを志望している方、和装の勉強おすすめです!
これ以上は本当に何を書いているか分からなくなるので(もうすでに分かってない)以上とします。
あくまでも私と私が所属した職場の話です。他の式場やスタジオ・カメラマンのことは分かりかねます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!
おしまい