花泥棒は赦される?

※記事内の画像は全て『スカウト!プリティ5』ストーリーから引用しております。
『スカウト!プリティ5』ストーリー感想です。

副題『花泥棒は五人いた』は狂言からでしょう。
元ネタから生まれた諺では花盗人は花を愛でる風流で粋な心を咎めるのは酷なことである、という意味になっています。

参照:https://wood.co.jp/6-bunka/kotowaza/kotowaza584.html

ストーリーの最後で鳴上嵐さんはそんな事柄を否定しています。

画像1

それは
「愛するものを傷つけられ、傷ついた心が否定されてはならない」
と言いたいのだと解釈すると、鳴上嵐さん自身がそうされて苦しんできたような、"属性"で個人を規定し"常識"で個人の善し悪しを判断する事柄へのカウンターまたは反省になるのかなと思いました。

というのもこのストーリー、メタ的に見てもどのように好意的なメッセージを受け取ればいいか分からず、頭を悩ませていました。
今後の布石として種をばら撒いている段階だとしても、作中人物に対しても読者である自分個人に対しても、反芻すればするほど心に刺さってしくしくしてきます。

というわけでこの記事のタイトルもこうなりました。
元ネタ通りいくと、姫宮桃李さんの妹さん(以下妹さん)の"属性"と世間一般的な"常識"を考慮し"自分の心に正直に、自分の大切なものを守る為の戦いをして""妹さんの心身的自由を守る"行いをし、結果的に妹さんの心を無視し邪魔したとしても、プリティ5のみんなが自分だったり仲間だったりを尊重したその心自体は赦されるべきなんです。
ただし、最後に「花を愛していた人にとって花泥棒は犯罪者である」と述べているので、ただただ全肯定しているわけではない。

画像2

画像3

画像4

画像5

天祥院英智さんの「愛は尊いものだけれど、愛した結果、周囲に及ぶ影響についてもうすこし考慮しなさい」の通り、愛を大義名分にして他者の心を侵害したことについてしっかり釘を刺しているのです。

だからこそイヤだな〜……心がしくしくするな〜……と落ち込んでしまうんですが……。
ストーリー内で描かれていた各々の持つお互いの尊重の仕方や自身含めの愛し方が素晴らしいものだったので余計に……。

鳴上嵐さんなんて自身の在り方に関して「自分がスルーしてしまうとそのせいで同じ立場の子達が傷ついてしまう」という心の持ち主なのに……と落ち込んでしまいますね……。

ただこういうことが描写されるからこそ「むしろ、なるちゃんの思った通りにならへん、この世界のほうが変で悪いんや」「自分自身を変えるのがいちばん簡単だとはいえ、世界のほうを変えることだって別に不可能じゃない。アイドルには、それだけの力がある。ううん、ESは、そんな力を君たちに与えるためにあるんだ」という台詞が非常に沁みるんですが……ウテナですね……。

画像6

画像7

画像8

世界を革命するのには痛みが伴うし時には他者を犠牲にしなければならないので…どちらにせよ痛みが伴う。
夢ノ咲という箱庭から抜け出した先の世界で生きるアイドル達を見れるのは嬉しいですね……。

話を戻します。
ただこの話を「自分の心を守る為に誰かの心を侵害してしまった」とは絶対したく無い、そうでは無いだろう、何故ならそうだと私自身が滅茶苦茶傷つくから……というエゴ丸出しの気持ちで『スカウト!プリティ5』について考えていました。
目の前で暗い顔をしている仲間を放っておけないのも、他者の境遇に自分を重ねて自分の心を救いたいのも、他者のそれも家庭の事情に踏み込むべきでは無いというのも、どうしても妬んだりしてしまうのも、それぞれ否定されず尊重されて然るべき気持ちだと思うので……。
抱くのは自由とはよく言います。
ただしそれは他者を傷つけたり迷惑をかけないのならというのが必ずくっついてきます。
それは当然、正論です。文句のつけようがありません。
ただ私が頭を悩ませすぎて視界が狭まり極端になってしまっているだけというのもありますが、絶対気持ちを外に出した時点で誰かを傷つけて迷惑になる可能性は絶対発生するものかと考えてしまい、だとすると他者を慮る気持ちとは……それに伴う行動とは……とずっと延々リピートしていますね。
そのストーリーに限った話でいえば、今後鳴上嵐さんが世界や自分に向けられる目に対してどう向き合っていくか、そして自分がどうなるかの糧になるのでしょう、多分そういう捉え方でいいのかなと、今現時点では思います。

起きてしまったことに対し、全肯定の赦しが得られるのは、人間と人間の間では無い。
だからこそ……の部分が重要ですね。


余談です。

画像9

画像10

影片みかさんが他者の家族の問題に口出しすべきでは無い、という立場なのが人間形成に影響した生育環境人間関係を大きく伺えて非常に良かったです。
家族の問題ほど複雑で繊細で個々の差があってに他者が簡単に口を出せる問題では無い、というのが彼の経歴を踏まえると大変説得力があるなと(ちなみにこれを打っている時点で発言と行動が矛盾しており私はかなり嫌なやつですね)。
あとはそれに紐づいて、影片みかさんは「自分は斎宮宗さんの家族」と思えても「斎宮家の一員」とは思わない、少なくとも現時点では思っていないと捉えられるのも収穫でした。


『スカウト!プリティ5』ストーリー、非常に面白かったです。
原作、そしてこの記事を読んでくれた方、一人で読むのが怖いからと一緒に読んでくれた友人、本当に本当に本当にありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!