スタートの合図(J.Iくん)
この記事は2019年4月14日にホームページにて掲載したものです。
「真っ白な画用紙を目の前にして、
「なにを描いたらいいのかわからない」
と思う子って、多い。
とっても多い。
でもこれって子どもだけの問題じゃない。
大人にだって、多い。
というか、大人の方が多い。
絵を描く力ってなんだろう?と僕はよく考える。
絵が得意な人と、苦手な人の違いってなんだろう?
絵が好きな子と、嫌いな子の違いってなんだろう?
デッサンの練習が足りないからだ、とか
色彩感覚が養われてないからだ、とか
むつかしいことを言う人たちもいる。
「練習を重ねれば、経験と自信がついて、自分で描けるようになるでしょう。」
なるほど、OK。
そういう分野のことは、そういう分野の人たちに任せる。
僕はもうすこし、シンプルに考えてみる。
たとえば一つの考え方として、
「絵」を「言葉」に置き換えてみる。
どうして僕らは、喋るんだろう?
何を表したいんだろう?
誰に何を伝えたいんだろう?
そのようにして巡らせた考えと答えを、
そのまま「絵」について当てはめてみる。
どうして絵をかくんだろう?
何を表したいんだろう?
誰に何を伝えたいんだろう?
*
この日、Jくんは悩んでいた。
「なにを描いたらいいのか分からない」とつぶやいていた。
僕は彼の最近の出来事について何気なく尋ねてみた。
楽しかったこと、つらかったこと、がんばったこと。彼がそう思えたこと。
するとJくんは最近参加したマラソン大会のことを僕に教えてくれた。
とても楽しかったらしい。
走ったコースの道順から、応援席の場所、食べたもの、当日の天気……
いろんなことを絵で表して僕に見せてくれた。
あっというまに描きあげた10枚ほどの彼の絵を見て、僕の心が「わぁ」と動いた。
その中の1枚をみんなにも紹介します。
「スタートの合図のピストルの音が、うるさかった。」
そのときの絵だって。
僕は彼のことを、とってもとっても、いい絵描きだと思っている。