ふきながし(K.Iくん)
この記事は2018年10月28日にホームページにて掲載したものです。
絵はいつも、自分の心が決める。
良いも悪いも、完成も未完も、成功も失敗も。
ぜんぶ本人の心が決める。
描いた本人が「これでよし」と心を決めれば、たちまちそれはその子の立派な作品になる。
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画用紙に垂らした青い絵の具を、Kくんはストローでいっしょうけんめいに吹いた。いろんな方向に吹き飛ばした。もちろんねらいなんて無い。めちゃくちゃに吹くことが目的であり、楽しみのコアだ。
満足するまで絵の具を吹き終えたあと、画面をじっと見つめた。それから「よし」と言った。
まずはクレパスで目玉を描いた。
そのあとで、「これはぞうだ」と言った。そして、うまそうな大きいリンゴをぞうにくれてやった。
はじめはねらいのない吹き流しでも、できあがった描線を見てKくんがぞう言ったら、そこにいるのは、ぞうだ。
Kくんの心のこもった元気なぞうが、僕にも見えた。
みんなにも、もちろん見える。
このぞうはみんなの心にも残る。
とするとほら、みんなの心に、Kくんの心が残る。
うーむ、これこそが芸術の醍醐味であーる。
絵って楽しい。