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雪の気配

東京で生まれ育ったわたしにとって、雪は特別なものだ。

寝ている間に積もるかも、という夜が明けた朝、母に「雪積もってるよ!」と起こされドキドキしながら障子を開けた思い出がある。
障子越しの雪景色の予感。いつもよりまぶしくて、発光しているような感じ。
障子を開けて、庭もデッキも真っ白になっているのを見ると、なぜかうれしくなった。

ひと冬に何度も降らないのに、「雪積もってるよ」という言葉はしょっちゅう母から繰り出されるようになった。
なかなか起きないわたしたちを、まったく雪の気配のない日にも「雪積もってるよ!早よ起きんさい。(広島弁)」と起こすのだ。
この言葉を聞くと、そんなわけないでしょ、と思いながらも、そろりと障子を開けて確かめてしまう。そんな魔法の言葉だったのだ。

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