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「ホテルのフロントの人」になりたかった

小学生の頃は毎夏、母の故郷である広島へ帰省していた。一週間ほどの旅程のうちの半分は母の実家、もう半分は祖父母といっしょに広島プリンスホテルに宿泊するのがお決まりだった。

窓から瀬戸内海と丸いプールを見下ろす、明るい部屋。きれいに整ったベッド。広々としたバスルーム。朝食のバイキング。朝から晩までワクワクがとまらない。わたしはホテルで過ごす時間が大好きだった。

中学生になると学校で興味のある職種を考える機会があり、いくつか挙げる中に「ホテルのフロント」と書いたことを覚えている。わたしも人を楽しませる仕事がしたい、という単純な理由だったと思う。

それから興味は他の分野にも広がって、美術大学に通ったけれど、ホテル好きは変わらなかった。大学生の頃に行った海外への一人旅では、いつも利便性よりも雰囲気の良さそうなホテルを選んだ。

時はめぐり、今のわたしの仕事の一つは民泊の運営だ。清掃やアメニティの準備のほか、マップを置いたり花を飾ってみたり、子どもがいれば踏み台を出してみたり。ゲストに楽しんでほしくて、少しずつ工夫を重ねることにやりがいを感じている。

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