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山本彩『RGB』ツアー 悩み、とにかく解放されたかった訳とは

 大阪拠点に活動する元NMB48でシンガーソングライターの山本彩が3月15日・23日、『Sayaka Yamamoto Hall Tour 2024 RGB supported by メメントモリ』に出演した。今回は23日の東京・NHKホール公演をレポートする。

 山本のホールツアー東京公演が開演すると、客席では歓声や拍手が沸き起こる。ステージ上のモニターには、山本が活動休止期間などを振り返る姿が映し出される。

「何かをやろうとすることもしんどかったし、何かに刺激されることもしんどかったし、それゆえ好きだったことも楽しめなくなったし。何でやってんねやろ、もういっか、とか。何も考えたくない、何にも刺激されたくない。とにかくこの気持ちから解放されたい」

「言葉にするのもあんまり得意じゃないし、でも歌うのも音楽も好きだから、音楽を通して本音をさらけ出すものですよね、シンガーソングライターは。みんなそれぞれの中に悩みの種とか不安とかあるんだろうけど、そういうものを見せずに、それまでネガティブな感情があろうが、不安を抱えようが、やるときはやりきるって姿勢が保てたらいいなって思います」

 そして、ステージ中央で山本がアコースティックギターを勢いよく鳴らし始める。2023年にリリースされた活動復帰後初となるアルバム『&』の新曲『劣等感』を、"チームSY"メンバーのクラップに包まれながら披露した。ちなみに山本は今年、自分自身を「歩く劣等感」とテレビ番組『=LOVExLOVE』(日本テレビ)で説明している。

 次に「東京、行くぞー!」と会場全体に向け歌ったのは、2019年のアルバム『α』収録の『TRUE BLUE』。山本が音楽人生を歩む過程で、歌詞「♪ムカつく程に今日も劣等感に生かされる」「♪本当は初めから分かってた追いかけたのは/自分の背中」と、自分を他人と比較しつつ前進する姿を音に乗せた。

 NMB48卒業後初のシングル『イチリンソウ』収録の『Are you ready?』では、ファンのコールもあってギアを一気に上げていき、チームSYでギタリストの草刈浩司と背中合わせに弾く場面が印象的だった。

『みんなのうた』楽曲、上坂すみれが演じたあのキャラ曲も

 MCで山本が挨拶すると「今日が日曜日やから? みんなそんな元気なん? 日曜日ちゃうか。土曜日や。明日休みやからそんな元気なん? 私のライブに来たからそんな元気なん?」と喜びつつ、「NHKホールでいうと4年ぶりで、『α』ツアーぶり」「本日SOLD OUTということで本当にありがとうございます」「ここを世界で一番熱い場所にしましょう」と感謝の言葉を伝える。

『イチリンソウ』の後にリリースされたシングルの表題曲で、挑発的な姿勢で自己を貫き通す『棘』(とげ)ではそれまでの一点の曇りもなく晴れ渡るような空気感からは一変。山本はイントロから頭を振り乱す。ヴァイオリン・Ayasaの悲劇的なソロから始まる『棘』のカップリング曲『unreachable』がそれに続いた。

 ダンスパートの『Nocturnal』、『feel the night』では夜の雰囲気をたっぷりに堪能。NMB48在籍中に作詞・作曲した『彼女になりたい』に切り替わると爽やかな笑顔を見せ、『Weeeekend☆』ではステージを出て1階席を駆け巡り、「みんな最高! ありがとう!」と伝えるなど、会場全体で盛り上がっていた。

 山本が「みんな、歌ったあとは踊りましょうか。あの振り付けは覚えてきた? 大阪、思ってたよりみんな踊っててくれてびっくりした」「全力で踊ってくれたら最高です」と話し、『ぼくのおもちゃ』を歌う。この曲は『みんなのうた』(NHK)で過去に放送されたものだ。

 そしてステージモニターには山本がレコーディングに臨む姿が映し出され、PCゲームに没頭している最中に画面が落ち、部屋中に光線が走る。原始的で明るい曲調のイントロを受け、山本がRPG『メメントモリ』のキャラクター専用曲『ラメント』の世界観をしっとりと作り上げる。次曲『残影』と併せて、シンガーソングライターの山本と、声優の上坂すみれは、"200年前の主を今も一人で想い続けている少女"ロザリーにそれぞれ扮した。

サービス精神旺盛! 山本彩、草刈浩司らがピックをファンにプレゼント

 再びアコースティックギターを携え、『モスバーガー』CMタイアップソング『愛なんていらない』を弾き語り、亀田誠治らが楽曲制作に参加した『夢の声』が響き渡り、山本が謙虚に着実に人生を歩む姿に心打たれたファンもいた。山本は貴族的なお辞儀ボウ・アンド・スクレープで敬意を表した。

 今回のツアータイトルになった三原色『RGB』(Red、Green、Blue)の映像を挟み、山本は相棒エレキギターを手にする。光と影といった意味を込め、活動復帰後に発表した『&』に収録の『Bring it on』では、歌詞通り「♪静寂切り裂いて」「♪溜め込んだ熱」を解き放った。会場は大きな拍手と歓声に包まれ、『against』では「♪逆風蹴散らし」ていくようにファンもクラップで盛り上がる。元WEAVER・奥野翔太(ベース)、草刈(ギター)、THE&・SATOKO(ドラム)による3分間の音楽の対話を通してチームSYが紹介された。

『Let's go crazy』では山本がステージ内を大きく動き、無邪気な笑顔を見せる。NMB48在籍中にリリースした2作目アルバムの収録曲だ。さらに池脇千鶴主演のドラマ『その女、ジルバ』主題歌の『ドラマチックに乾杯』でライブ本編を締めくくった。

 アンコールは、ライトノベル『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?』を原作とする、2024年4月期アニメのエンディングテーマ『ブルーローズ』で始まる。

 再度クラップに身を包まれた山本は、「まだまだ山本彩は『♪無限の可能性』を信じながら自分貫いて行きますんで、これからも期待して付いて来てくれたら嬉しいです。今日は本当にありがとうございましたーー!!」と熱いメッセージをファンに贈り、自身にとって初のアルバム収録曲『レインボーローズ』を弾き語った。

 山本は「ホンマに人生で一番と言っても過言ではないぐらい最高です。ありがとうございます!」と重ねてお礼をし、「今回はこれまでのツアーで最多の14名でステージを作らせていただきました」と総括。その際SATOKOがドラムスティックなど、草刈がピックを1階席のファンに投げて贈る。山本はこう続ける。

「今日はみなさん本当に、改めて最高の時間をありがとうございました。チームSY、そしてカルテットの皆さん、ダンサーの皆さんでした。ありがとうございました~!! 3階席の後ろの方も、2階席の後ろの方も、ずーっと元気に飛び跳ねてくれてありがとう。ありがとう! ちょっと最近肩が落ちててあんま(ピックが)飛ばへんかも。次回までに3階席までに飛ぶようにやっときます(笑)」

 山本は自身のピックと、左手に着けていたゴムバンドを1階席に投げ「またね。またすぐ会いましょう!」と言ってツアーの幕を閉じた。また、山本彩YouTube公式チャンネル「Sayaka Yamamoto」にて、東京公演のライブカメラ映像が無料公開中なのでぜひチェックしたい。

 この後、山本は5~6月に『Sayaka Yamamoto Asia Tour 2024 - 彩 -』、9~10月に『Sayaka Yamamoto Acoustic Tour 2024「Organic」』を開催。現在は『APOLLO AMATEUR NIGHT JAPAN 24-25』で小籔千豊と共にメインアンバサダー&決勝MCも務めている。11月19日(火)からは『山本彩×ライブナタリー Zepp TOUR「SYnergy」』と称したツアーで各日に阿部真央、ACIDMAN、SCANDALとそれぞれ対バン予定だ。

 山本の音楽人生は、光と影の意味を持つアルバムのタイトル『&』などに表れている。最初はMETALLICA、Slipknot、DIR EN GREY、ELLEGARDENなどロックから開かれていき、ガールズバンドやNMB48での活動を経てジャンルレスな楽曲を歌うことでその幅を広げていった。彼女の歌声がそれぞれの楽曲の色に溶け込んでいることは一聴すれば分かる。これからも多趣味に多様に活躍する山本の姿をしかと見届けていきたい。

東京公演セットリスト

▼Sayaka Yamamoto Hall Tour 2024 RGB supported by メメントモリ 3月23日セットリスト

1.劣等感
2.TRUE BLUE
3.Are you ready?
4.棘
5.unreachable
6.Nocturnal
7.feel the night
8.彼女になりたい
9.Weeeekend☆
10.ぼくはおもちゃ
11.ラメント
12.残影
13.愛なんていらない
14.夢の声
15.Bring it on
16.against
17.Let's go crazy
18.ドラマチックに乾杯

EN1.ブルースター
EN2.レインボーローズ


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