NMB48・木下百花作詞『チュッてギュッてグッと♡』の世界観とは
NMB48の約10年半ぶりとなる劇場新公演『天使のユートピア』が5月14日から上演されている。この公演は、全曲が新曲ということで注目された。中でも、アーティスト ぶっ恋呂百花(ぶっころももか)として活躍する、NMB48 1期生・木下百花が作詞した楽曲『チュッてギュッてグッと♡』は、山本望叶(やまもと みかな)と新澤菜央(しんざわ なお)が、コールの飛ばない秘密の空間を作り上げている点で特別な存在感を放っている。
同曲の歌詞を見てみると、「♪悪夢かどうかは私が決めること/貴方と迷い込んでみて遊びましょう」「♪『マトモ』になんてなれない!/貴方とこのまま(一生一緒♡♡♡)」「♪こんなにも壊したくなるオモチャだっけ/たまんないけど死ぬまで大事にして」と、 「私」の「貴方」に対する強い独占欲が描写されている。山本と新澤は、“締め付け”を意味することから独占欲を思わせる黒ベルト付きのドーリーな衣装で登場する。こういった姿を見ると、ふたりが童話の主人公になったように感じ取れる。
そこで、童話的な空間に立つ山本と新澤は一つ一つの歌詞を点として扱うようにささやいて歌う。音楽としてはポップな軽い音とふたりのささやき声が聞こえるだけで、他の公演曲と比べても圧倒的に静かだ。
筆者が劇場公演・ライブを配信で見た限りでは、悪夢的な歌詞と静けさの中で、ファンに大きな声で「超絶可愛い! みかにゃん!」「超絶可愛い! しんしん!」とコールを入れる人はいないようだった(控えめに声を出したりする人はいた)。コールを入れられないというより、かけ声をすると楽曲の雰囲気が変わってしまうと大半の人が考えているからであろう。
※9月21日開催の『This Is NMB48 2024』まではコールがなかったが、10月16日の劇場公演では、来場したファンによって「ガチ恋口上」が取り入れられた。
『チュッてギュッてグッと♡』のステージを見ていると色々と考えさせられる。もっとも、劇場公演をどう楽しむかはファンそれぞれに委ねられる。コールを入れたり、声援を送ったり、曲によってはしっとり聴いたりしていいのだ。小規模な劇場公演ではコール文化が重要視されているが、こういう曲においては、ステージに立つふたりの世界に浸ることも大切だと個人的には思う。
そして、 『チュッてギュッてグッと♡』は歌詞の意味と絡めて様々な演出で楽しめる曲といえるだろう。現在、山本と新澤はガーリーで“きゅるきゅる”した衣装で曲を披露しているが、逆に、クールなふたりの関係だって見てみたいし、他メンバーが違うコンセプトを用意するなどして長く歌い継がれる曲になれば嬉しいなと思う。
この曲に限らず、NMB48は「大阪から世界へ」という活動テーマを掲げ、特に最近はグループとしての結束力を高めている。この勢いをさらに加速させて、メンバーひとりひとりが大きな翼で羽ばたいていってくれることをずっと願っている。
♪『チュッてギュッてグッと♡』音源
・・・劇場公演CDジャケット写真は、5月発売の29thシングル『これが愛なのか?』Wセンターの一角を担う塩月希依音(しおつき けいと)