六等星の夜
星のような、星より強い夜のひかり。
その余りの強さに、いくつもの夜空の光が消える。
いや。消えたようにみえる。
作りものに比べてどんなにか細く、
どんなに不安定で頼りなく見えても。
小さな光はひとつひとつがそっと息づいている。
お隣さんに手を伸ばす光がいる。
手を繋いで何かを形づくる光がある。
自らの輝きを高める光もいる。
静かに温かく周囲を照らす光がある。
でも光が、どうしようもなく暗くなる夜もある。
大きな世界のうねりの中で。
他から見れば小さな、でも逃れ難い柵の中で。
あるいは最も小さく、そして大きな己の中で。
傷つき、転び、眠れず、涙し。
想いが届かず。願いが叶わず。
うつむき、立てなくなる夜がある。
かなしみをかなしみ、くるしさにもだえる。
それじゃ意味がないと頭でわかっていても!
抗えない夜はいくつもある。
きっと、誰しも。
眠れず長い終わらない夜に。
届いたのは歌声だった。
私もそうだよ。私がいるよ、と。
そして隣には同じように俯きながら、
どこかへ誰かへ手を伸ばす人がいるよ、と。
貴女の歌声が世界のすべてを変えたわけじゃない。
明日の暗闇が消えたわけじゃない。
でも。
隣に寄り添って温もりをもらった。
闇の中で、そっと立ち上がる支えをくれた。
朝日が昇るまでの、夜の居心地の良さを、
夜に安らげる気持ちの変化を、
泣いてもいいと、自分に優しくできるきっかけを。
たくさんのものをくれた。
小さな光の粒たちの、夜を変えてくれた。
ここにいたこと、気づいてくれてありがとう。
この10年、本当に本当にありがとう。
私たちは小さな小さな光かもしれないけど、
たくさん、たくさん集まれば、
きっと大きな光で貴女を照らすこともできるはず。
貴女と私たちの明日を照らす。
ひとつひとつ、ひとりひとり。
次の10年へ向けて、最初の一歩を。一緒に。
星のない空に 輝く光を
from Aimer/六等星の夜
1stアルバム『Sleepless Night』収録 2012年
Aimerさんのメジャーデビュー曲。
人生初のライブはAimerさんだったのですが、初めてこの曲を直接聴いたときは、涙が止まらなかったのを今でも覚えています。
デビュー12年目が始まる今日。あの頃からの感謝を込めて。私自身も明日を照らしていけるように、ひと夜一夜を丁寧に越えていきたいと思います。
Aimerさん本当にありがとうございます。
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