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 ぷりぷり市の謎のカード(オチ) 

 👆前作・多分、武智さんご自分で繋げそうなオチが出そうですが、↓の下書き再生工場にあったので、恐れ多くも挙手しました(`・ω・´)ノ

※登場人物はこちら【前作】から

俺:松田優作や古谷一行のような癖毛でロン毛の探偵。名前はただの探偵。無名であることを選んだ、冷静で皮肉屋のプロフェッショナル。今回の移住手続きで、ぷりぷり市の奇妙な陰謀に巻き込まれる。


 俺達は忍者のように執拗な追跡から何とか免れ、裏路地にあるイケメンマスターのいる喫茶店に足を踏み入れた。先客で大き目のパーカーを着た愛らしい少女がいたが、彼女は葵と顔見知りのようで、お互いにっこりと会釈していた。そちらは葵に任せ、俺達はカウンターから離れて裏の方にある奥のソファに座る。

「タイパカードにコスパカードか……一見使い勝手のよさそうな名前だが、裏で市民の情報を全部統一しているとはな」

 俺はマスターが淹れてくれたコーヒーを飲みつつ途中まで得た情報の整理をしていた。黒幕である市の支配者を引きずり下ろすには俺達のような部外者が必要。しかし、《なんのはなしです課》、《どうかしているとかし課》、《どうでもいい課》の三課は完全に黒だと思う。が、今のところ厳密な証拠はない。
 イケメンマスターにデレデレしている変態ナースは役に立たないので、俺はすのう市長と『みくまゆたん』の三人で話を進めた。

「市役所にあるあの三課は一体どういうシステムなんだ?」
「彼らは市役所内でも優秀な人材よ。多分、黒幕が表面上普通に見せる為に外部から寄せ集めたんでしょうね」
「ネーミングセンスが秀逸すぎる。この三課が黒なんじゃないの?」

 俺も『みくまゆたん』の意見に同調した。しかし外【名前】だけの情報で惑わされては裏で暗躍する人間の思うつぼだ。多分、黒幕はかなり頭がいい。優秀な人材の集う三課に注目を集めさせることで、万が一、裏情報がすのう市長の手によって露見された時は”すべて切り捨てる”覚悟を持っている。

「そうそう!もうひとつ情報を得たの。ぷりぷり市には密接に関係する《ワールド・ブルー》という取引先があるわ。ただ、こっちも社長の名前くらいしか情報がなくて、細かいことは分からないまま」
「それなら、次は《ワールド・ブルー》について調べてみる必要があるか」

 俺は次々に出てくるぷりぷり市を取り巻く謎のキーワードに頭を捻らせた。
「世界の蒼……か。名前にブルーが入っているということは、ブルーがキーワードなのかしら?」
 必死に独自取材メモを広げ、『みくまゆたん』が素朴な疑問を投げる。
「……いや、それはないわ」
「なぜ?」
「女の直感よ」
「はあ……」
 どうしてか分からないが、普段から自分の発言に自信を持っているすのう市長の言葉は何となく腑に落ちる。こころの中にスッと入り込み自然に馴染む。だから、根拠の欠片もない女の直感と言われても何故か納得できた。

「因みに、《ワールド・ブルー》に接触できそうな人を知っているか?」
「Mトンなら知ってるよ」

 一応ここまでの話を聴いていたのか、後ろのカウンターでデレデレしていた葵が突然声を上げた。
「Mトン?何かの単位か?」
「変態仲間だよ。キレッキレの頭脳派で《ワールド・ブルー》の中心に近い人だったはず」
 変態仲間、と言う葵の言葉が妙に引っかかったが、常識人であることを期待して俺達は明日Mトンと呼ばれる人物に接触を図る事にした。


『探偵ごときに何が出来るというのか』
『しかし、すのうも関わっているとなると厄介では?女性市長として突然君臨し、支持率95%を超えている』

 市民の心の殆どを掌握しているすのうという市長は実に類まれな存在だった。彼女が実施した政策は数多く、どれも前向きに生きていく為の方法だ。彼女が模索した人生の中で得た知識と、子育ての本音で付き合う真摯な向き合い方が男女問わず評価され、その数字に至ったらしい。中にはそれを批評する者もいたようだが、彼らにとってそれはどうでもいい。
 黒髪の男は揺れる赤ワインを流し込み唇の端を吊り上げた。

『そう、その揺れ動かない数字こそがあいつを市長に抜擢した理由なのだがな。余計な事を知り、わざわざ首を突っ込むとは』
『捨ておくか?』
『いや……あいつを消すのは惜しい。情報だけ動かして、好きにさせておけ』
『課』
 黒服の忍者が部屋から出る前に、すのう市長好みLABなロン毛の男が右手を翳した。
『例のカードは、”機能停止”したという情報を流せ』
『蚊』


 翌日、Mトンに接触を図ろうとした俺達だが、その前に衝撃的なニュースがぷりぷり市全域を襲った。
 何と、俺達が探っていた例のカードが『機能停止』したと言うのだ。
 とは言え、市民達には元々政府からマイナンバーカードが与えられている。別にタイパカードとコスパカードが失われたとしても、PayPayや楽天Pay、LINEやD支払い等世の中にはポイントで還元されるシステムが潤っている。偶々、ぷりぷり市が独自にコスパカードを導入していた事で、ポイントを有効利用して市内での生活が安価で賄えていたというだけの話だ。

 タイパカードについては表面上のシステムでは、例えダブルワークをしても働いた事で発生する追加課税が取られない(現金直接支給)というとっても有難い代物だったので、一部の市民からはタイパカードだけでも即機能を復活させてほしい、と翌日市役所にクレームの電話が相次いだ。
 回線がフリーズするくらい恐ろしい量の電話をさばいたのは、《なんのはなしです課》と《どうかしているとし課》を兼任する《マッシュルーム課》に属す、一風変わった寿司柄スカートを靡かせる女性だったと言われている。

 この2つのカードを巡る不思議な事件の黒幕は、こちらが捜査を開始した時点で何処かへ隠れたらしい。敵は相当な切れ者に違いない。俺はすのう市長と接触して丸1日程だと言うのに、何故こうまで情報が露見したのか。
 それに、追跡してきた市の職員は皆スキンヘッドの忍者でまるでロボットのようにさえ見えた。もしも、このまま2つのカードでぷりぷり市が謎の黒幕によって掌握されていたら一体どうなっていただろうか。ひとつの市を発端に、政府や日本全土が謎の組織に掌握される事を未然に防げたのか……
 彼らはぷりぷり市を捨てて次なるターゲットへ向かったのだろう。市を掌握するという凶悪な野望を抱いて。

 そして翌年。
 ぷりぷり市では、男性市民の一部をロン毛『神が与えし髪比率7:3』にする条例が何と賛成多数で可決された。しかし、これが全ての男性市民が対象とされるわけではなく、ごく一部の中村倫也や、山下智久のようなイケメンが基準とされるらしい。俺はロバート秋山を推したかったが、彼のロン毛は黄金比ではないとダメ出しをされたので多分、彼はランクインしていないだろう。
 
 結局解決できないまま、事件に巻き込んだ葵と『みくまゆたん』に別れを告げ、俺はぷりぷり市を後にする。心の中で一瞬感じてしまったが、本当の黒幕は、条例可決まで持ち込んだ敏腕すのう市長だったのかもしれない。


                          了



 武智様の文章を見てから自分の中で消化しても、やはりついていけない点が多々。しかし、オチをどうしてもすのうさんに持って行きたかったので、自分の中で「がんばったで賞」を贈りたいと思います(勝手にwww)

 うまい人の後に続いて書く練習(いつかコメント小説リレーに参加したい涙)を続ける為の初試みです。
 ネタを置いてくださった武智先生へ感謝を。

 苦情は受け付けません(`・ω・´)ノ。相当好きに書かせてもらいました。
 ただ、登場人物で読んでて不快に感じた方はお知らせいただけるとイニシャルに変更します!


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