第15話 小説より甘い非現実的関係(その2)
第15話 小説より甘い非現実的関係(その2)
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王子と毎月どこかの「土曜日」に会えることになった。
ここでお互いが守るべきものは『非現実的関係』だ。
初見で仕事やなんで出会い系サイトをやったのか話はしたが、その後一切仕事や家庭の話はしなかった。
だが、それがいい。
基本、むっつりorヤリモク9割以上、残りは傍観者とただの茶飲み友達が欲しい人が殆ど。
偶然50円舞剣課金で声をかけてくれた王子の見た目は最高SSS、声も姿も服装のセンスも女の扱い方(笑)もかなりの激レアだった。
何故私に会おうと思ったのか?は尋ねたが、「ちぃさんと話したら、面白そうな気がして」と言い、GACKTさまのような美しい仕草でワインを飲んでいた。
イケメンは生きているだけで尊い。
これを見られるだけでも、生きててよかった〜!!とテーブルを思わず叩きたくなる。
五反田は誘惑が多い。はっきり言って、左も右もグレードの高いラブホで溢れている。
ぱっと見た感じ、ラブホ→飯店(居酒屋含む)→ビジネス街って感じ。
最初、何度か五反田で飲んだが。美味しいワインと肉バルで舌を包み、終電が無くなる前に山手線ホームで解散した。王子の家は知らないが、私と正反対の方角へと帰る。
珍しく、出会い系サイトの中では本当に紳士で、最初の数回はキスもしない、手も握らない、腕も組まない、ただ横を並んで歩き、いつも爽やかな王子スマイルを振りまいてくれた。
そんな彼との関係が変わったのはとある冬のこと。大井町で飲んだ後、私はムラついていた。セフレが欲しい。でも王子はそういう対象じゃない。私は見た目もこうだし、きっと疑似恋愛対象としても微妙なのだろう。そう諦めも含み、王子と駅まで向かう中、本音を尋ねた。
「私じゃあ、欲も湧きませんよね」
「そんな気分になってたなんて知らなかった」
雪でも降りそうなくらい、空気が冷たい11月下旬の夜だった。始めて王子に手を握られた。ベースとギターを趣味で嗜む王子の手は想像以上に柔らかかった。
女性よりも細く長い綺麗な指先。爪はエチケットだから、と私よりも短く綺麗にカットされている。愛おしくその手を撫で、
「……じゃあ、来月は五反田にしよっか?」
その意味は知っている。つまり、そういうことか!(脳内リセット)
もう、頷くしかできなかった。やったー!王子とまさかそういう関係になろうとは!?
帰り道、初めて王子と恋人ごっこのように手を握り、そのまま腕を組んで歩いた。
「そっか。最初っから、五反田にしておけば良かったね」
時計を確認するが、もう終電間近。しょんぼりする私の大きな体を抱きしめて彼は耳に触れるだけのキスと熱を残した。
彼は私と正反対に向かう山手線に乗り、いつもの王子スマイルと手を振ってくれたのをぼんやりと見つめる私。
イケメンは、生きているだけで、尊いの。
王子との関係は色々あったが多分、このシリーズ?の中で一番長かった。
愛車の助手席にも乗せてもらったし、サングラスをかけて颯爽とかっこいい車を運転する王子の横顔にずっとニヤニヤした。
美味しい店のリサーチも凄くて、大井町、吉祥寺、五反田は特にたくさん行った。桜の季節には一緒に花見がてら夜桜を眺めて歩いたのも綺麗な思い出だ。
それが終わったのは、コロナ禍による王子の仕事変更と、私の引越し。テレワークは色々な関係を壊した。自由が効かなくなった王子と必然的に会える回数が減り、長年の付き合いで、やはりマンネリ化を覚えたのか、当初のようなドキドキする関係性は消えた。
気がつくと、他のヤリモクと同じように変貌してしまった王子の態度は変わった。私と会ってもやって、夜飯食べて、はいさよなら、という感じで会話も減った。
私も彼に過剰な期待を寄せたせいかも知れない。やはり王子はセフレではなく、ただの飯友でいた方がもっと良き関係でいられたかも、と今更後悔しても遅いけど…どうしてもそう思ってしまう。
そして、王子と離れる前の誕生日、私に彼はギターを弾いてくれた。
元々、ベースを私の本名と同じ名前の子から教わり、その子に惚れてベースを必死にできるようにしたが、○○ちゃんは別の男とくっついた。モテたくて、それからギターもやり、ギターも普通に弾けるようになったとか。
プレゼントしてくれた曲は、和楽器バンドの
「追憶」
これを、ギターを弾いている方のオリジナル版で歌って弾いてくれた。王子の甘い声と共に、「僕が、君に贈る最初で最後の曲だよ」と言ってくれたのは忘れない。そして裸のままそれを聞いて泣いた。
何度も「この関係に、ピリオドを打つのは君だ。僕はあくまで付き合ってもらっているにすぎない。きみが新しい相手を見つけたら僕はすぐに引き下がるから」と言われた。
当たり前だ、王子には家庭がある。それを理解した上でただの男友達プラスアルファの関係だ。
浦和レッズが好きで、ゴルフについて熱く語り、55歳になっても性欲が落ちないと嘆いていた可愛い一面を覗かせていた王子。見た目は若いからまだまだいい女が見つかると思う。
ただ、王子はメール文面が苦手なので、どうしても初手は堅苦しい印象を与えてしまう。私も最初のメールはどこのおっさんだ?と警戒したのに、来たのはイケメンで驚いたくらい。
顔出ししない人で、出会い系サイトで成功する男は、日頃から文章の扱いがうまいタイプだと思う。
いきなりガチガチで攻めても女は(特に若い子)は食いつかない。トークで趣味や会話に合う部分を見つけてからの勝負となるので、ぜひ頑張ってほしい。