生まれてきてよかったのか
私には生まれたときからお父さんがいなかった。
「かわいそうに。」
そう思われることが多かったかもしれないけれど
私にとってそんなことはごくごくささやかなことだった。
正確に言えばお父さんはいた。
一緒には暮らしていないお父さん。
私のお母さんではない奥さんと
私ではない子供がいるお父さんが。
これまた
「かわいそうに。」
と言われてしまいそうだけれど
私にとってはとてもささやかなことだった。
お父さんは頻繁に私に会いに来た。
「なんてやつだ。」
「最低。」
そんなふうに聞こえてきそうだけれど
それが私のお父さん。
生まれてきてよかったのかな
なんて考えたこともあったけど
「まぁいっか。」
そう思えるほど、周りのひとたちに私は愛情をもらってたんだなと思う。
世の中の“ふつう”からしたら大きく脱線した家庭でったことは間違いないんだけれど
私は幸せな世界で約2年間を過ごしたんだ。
なぜ言い切れるのか。
私には0歳からの記憶があるからだ。