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闘鷲降臨~闘う意志の使い方(20-21Game38)

 今季イチのカムバックでしたが、エナジーは出力だけでなく向ける方向も重要なのだということがよくわかる試合になりました。

FE名古屋 87-76 熊本

 1Q序盤はFE名古屋のターン。ラベネル、ドブラスともに機動力のある守備ができない熊本の泣き所をピックで突くかたちでできたズレを効率的に得点に結びつけ、12-4までリードを拡げてタイムアウトを相手に取らせます。
 ここで熊本は守備をゾーンに切り替え。さらに、ローソン、フィッツジェラルドが相次いでそれぞれ2つのファウルを犯し、ベンチに下げざるを得なくなったことで攻撃が停滞。結局23-19と4点差まで詰められたところで1Qを終えます。

 2Qはさらなる厳しい展開。熊本のファイサンバを交えた3ビッグに対してこちらはファウルトラブルを抱える展開でサイズが劣勢。ゾーンでもまんつーでもそこをデイビスとサンバに突かれる形となり、逆転を許します。
 一方のFEはゾーンアタックがとにかく捗らない状況。特にティルマンとシェリフの組み合わせの時はとにかくペイントタッチができない状況で苦しみます。それでも何とかティルマンの個人技で粘り、4点ビハインドで折り返します。

 3Qも苦しい展開が続きます。足は動いていましたが、守備がハマりきらない状況が続き、相手の攻撃の成功率を落とすことができず、じわじわと点差は2桁、最大12点まで広がり、さらにローソンが4つ目のファウルを犯し、ベンチに下げられることとなりました。
 しかし、ここでシェリフを入れた3ビッグの形。いつもだとこの形ではゾーンを敷くことも多いのですが、今日はマンツーマンで、かつこの辺りからスクリーンをミスマッチ覚悟で極力スイッチで処理する、つまり横のズレを許さない方向性に切り替えます。またゾーンオフェンスも3ビッグが立ち位置を入れ替えながらうまくハイ&ロー、ロー&ローで突くことによって改善の兆し。相手の攻撃の停滞もあり、3Q終了時点で6点まで差を詰めることに成功します。

 4Q、FEgirlsのパフォーマンス後のクラップに先導された会場の熱気を背に、躍動したのはFE名古屋の選手たちでした。目まぐるしくマークマンを変えつつもけして楽な攻撃を許さないマンツーマンで相手の攻撃の芽を摘むと、ルーズボールにも鋭く反応してマイボールに。オフィシャルタイムアウトを待たず、1ポゼッション差で競り合う展開に持ち込みます。
 こうなると苦しいのは熊本。ボールムーブに対して必死に食らいつくFEの守備に対し、ファウルをもらって得点をつなぐのが精いっぱい。4Q途中なんと7分近くフィールドゴールによる得点を奪うことができず、逆にオフィシャルタイムアウト前後で松山の同点→飛田の逆転3Pで一気に前に出たFEはその後もしぶとくセカンドチャンスをものにする形で得点を重ね、今季一番の逆転勝ちを成し遂げました。

熊本の二つの武器を封殺した「意志」と「意図」

 熊本というチームの怖さの源泉は、一つに石川らハンドラー陣が前に走った選手に対して大きなパスを出して走らせる速い攻撃。そしてもう一つは、ドブラスがインサイドをがっちり制したそのうえで、石川やラベネル、デイビスといった能力の高い選手たちが、ピックの展開からズレを作ったところで気分よくシュートを打って決める、そういう得点力だと思います。

 今日は一つ目の速攻を抑えることは試合を通してうまくいきました。これは、自分たちのシュートが落ちた時のリバウンド、アウトレットパスの阻害、そして何よりネガティブトランジションの速さ。いずれも意図と意志がかみ合って初めてなせる業。これを一試合続けられたのは収穫といえるでしょう。

 そして、二つ目の熊本のボールマンの「気分」の阻害については、3Q途中、3ビッグでオールスイッチのマンツーマンを始めたところで大きく加速。普段ならああいうところで石川海斗の理不尽が炸裂するのがよくある熊本の勝ちパターンだと思いますが、3Q後半~4Qについては、得点力のある熊本の選手が気分良く放ったシュートはほとんどなかったように思います。

 これはもちろんオールスイッチという守り方がなせる業でしたが、そこには3ビッグという構造も大きく寄与しています。2ビッグでこの守り方をした場合、スイッチの末に2人のビッグマンが外に引き出されて中を攻められる、リバウンドを確保されることも増えるわけですが、3ビッグであれば最低一人はリングの下でリバウンドに絡めます。しかもティルマンとシェリフは機動力もあるため、小さいボールマンとマッチアップすることになってもある程度耐えられます。
 もちろん、この守り方はミスマッチを解消するために、守備に穴を開けないようにしながら機を見てより守りやすいマッチアップに上手くスイッチをしていく必要があります。これまでにこの守り方を敷いたときは時折大きな穴が開いてしまうこともありましたが、今日は小さな穴はありつつも大きな破綻なく、熊本の選手に継続した圧力を与え、そのうえで弱点になりそうなリバウンドにも、常にだれかがしっかりと絡んで確保する、そういう闘い方ができていました。

 ファウルトラブルから苦しんだ試合でもありましたが、そこで粘って闘えたこと、そこから勝ち筋を見出したこと。その「意図」と意図を体現した「意志」が見事な試合だったと思います。

最後に

川辺HCも言ってるけど、今日のプレーが本当に褒められるのは80分やりきってこそ。明日に期待してるよ。

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Nacky a.k.a. 青井高平
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