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最高に素晴らしいこと(All the bright places)感想

Netflixで『最高に素晴らしいこと(原題はAll the bright places)』を見ました。

 メインキャストは、エル・ファニングと、ジャスティス・スミス(名探偵ピカチュウの人)。キャストの選び方、エル・ファニング演じるバイオレットが身にまとう落ち着いたファッション、さりげなく何気なく輝く景色、心地良い音楽……。透明感がすごい。

 ものすごく完成されている……と思いました。あざといかもしれない。どういう風にとれば、どう見えるだろう。こうすれば、こう感じるだろう。みたいな、計算され尽くして、完成されたプロのお仕事というのを感じました。でも悪い印象を抱いたわけではなく、とても美しかった。

 以下、最後までネタバレ含む。

 この映画、生きることや死ぬことに真摯に向き合っていると言われるけど、見終わると、普通に暗い穴に落ちたように感じるのは、きっと私だけではない。希望を見せているようでも、その希望は見えない人には見えないもののよう。

 ジャスティス演じるセオドアの行動が、最初から全く分からないバイオレット。分からないのは、彼女が経験した不幸が、幼い頃から長く継続するものではなく、「たまたま」起きたものだから。

 セオドアの行動は、分かる人にはすぐ分かるものだと思う。何度も繰り返しメッセージを送り電話をし、ひどく「心配」されることは、善意でありがたくても、同時に恐ろしく重荷であることも、分かる。

 バイオレットの家庭環境は、基本的にかなり良好です。それは家を見ても、父母の雰囲気、彼女への接し方を見ても分かる。「たまたま」不幸が起こっただけで、家庭は安定してるバイオレットは生き残った。

 セオドアが自死を選んだのは、幼い頃に、彼の根幹になるもの、生きていく基盤になるものが、既に破壊されているから。破壊されたまま、内部でぐちゃぐちゃになって、どうしても治せないから。

 そう思えてしまうと、たとえ映画があたたかく、光とともに、どこか爽やかな余韻さえ残しながら終わっても、暗闇が残る人にはずっと残ってしまう作品かもしれない、と思いました。きらきらしているのに、悲しい。

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