白いブラック企業の追い出し部屋
白いブラック企業にも追い出し部屋は存在する。
とは言っても明らかな追い出し部屋ではないところが、さすが白さをアピールしたいブラック企業である。今回はそんな追い出し部屋を実態に迫ってみたい。
追い出し部屋への移し方
白いブラック企業は追い出し部屋への移し方も白塗りを徹底している。基本的には地方に飛ばすのではなく一般的には会社の中枢とされる本社組織に集められる(通称、座敷牢)。その大義名分もしっかりしており「あなたの専門知識を活かして全社的な改善をしてもらいたい」ということで飛ばされる。「専門知識」のところは人によって「専門技術」や「広い見識」「これまでの経験」などなど人によって変わってくる。こうした表面上の大義名分を隠れ蓑にして対象者を追い出し部屋へ追いやるのである。
もちろん会社は明確に「追い出し部屋」などとはしていないのだが、ほとんどの社員はわかっている。その異動対象者は失脚した、粛清されたということを噂されるからである。
追い出し部屋はどんなところか?
それでは追い出し部屋はどんなところだろうか?
パソコンが数人の社員に1台しかないとか、過剰な仕事、過小な仕事(これはややグレー)ということはない。対象者に訴えられてはたまったものではない。白いブラック企業は絶対に訴えられてはならないのである。いわゆる世間で言われるような類のいじめは絶対にしない。それではどのような場所なのだろうか?
まず組織構成は追い出し対象ではない普通の社員と定年間際の社員、そして追い出したい対象の社員で構成される。構成比は感覚的に1:1:1くらいではないかと思われる。そして組織的なミッション、すなわち複数名でともに行うような仕事を持たさず各自独自のミッションを言い渡される。先の移動の大義名分がその伏線なのである。あなたにしかできないからこそあなたに進め方を立案してもらいたいとのことである。最初のうちは対象者も「もしかしたら本当かも」と思いがんばるのだが、「空飛ぶタイヤ」に出てくるホープ自動車カスタマー戦略課課長の沢田氏が異動先で喰らった攻撃を受けるのである。普通の精神の人であれば次第に諦め心を病んでしまうことだろう。大概は時の経過と共になんとか普通の仕事、他の人と協力してできるような仕事をさせてもらいたいと願いでるのであるが、そんなことは許されない。ここで自尊心を傷つけるもう一発がくる。「方々に聞いたがあなたが希望するところは今は人を求めていないのです」と言われるのである。年中人手不足と言って経験者採用をしているのに十分人数がいるという誰でもわかるお断り文句にガックリするのである。
そして十分に弱らせると、それでも何とか普通の仕事をしたいと懇願する。そのタイミングで仕事を与えるのでる。そのミッションは社内ではどうでもよいと思われているような、一方で重要視されているような微妙なラインの仕事である。うまく説明するのが難しいが本気でやるにはリソース不足であったり、やる気のない人たちへの啓発的なミッションであったりと定年間際の上級職だったものたちへの形式的なつなぎの仕事(としか思えないような)、取ってつけたような仕事をさせられるのである。それでも何とか起死回生を願って最初は皆がんばるのだろうが段々と虚しくなり程よく自分の残された期間をゆっくりと過ごすようになってしまう。さらにこれも個別ミッションのため他者との接触が極めて疎遠になる。その結果、次第に心を病んでいくのである。そして自然と自主的に転職などをしてくれるのを待つのである。
大企業は体力があることが多く、一気に殺すようなことはしない。形式的なケアもしっかり行い、絶対に訴えられないラインで徐々に兵糧攻めをしていくのである。白いブラック企業は法令を100%遵守しながら、今日もゆっくりじっくり時間をかけて、コトに励むのである。
追い出し部屋の猛者たち
こんな追い出し部屋でも元気よく「ちっちゃいことは気にしないワカチコワカチコ」と心の底から気にせずにやれちゃうスーパー猛者もけっこういる。
つらい修行を耐えきった猛者だけに血色良く元気いっぱいである。
追い出し部屋は本当はよくないし、なんとかできるものならなんとかすべきと思うが、こうやってどんな境遇でも明るく元気にできちゃう達人もいるのであるから、そこは見習うべきところだろう。正直なところ追い出し部屋の人材は優秀なひとが揃っている。ここに置いておくのはもったいない。こういった人材をしっかり使えないところが白いブラック企業の特徴なのかもしれない。上の顔色だけをみてゴマをするものばかり集めていったいどこへ向かっていくのだろう。「王様は裸だ〜!」と言う中年はもれなく追い出し部屋に招待される。なのできっとずっと王様は裸のままで天寿をまっとうできることでしょう。