撮りたかったけど、撮れなかったもの
趣味のひとつに「写真」があった。
エチオピアに行く前は、愛用のオリンパスOM-Dを片手に写真をたくさん撮りたいと思っていた。
今の私の手元に写真はたくさんあるけれど、そこにあるのは「エチオピアにおける私の日常か、皆の非日常」だなと思う。私が撮りたいと思っていた「エチオピアの人たちの日常」はほとんど撮れなかった。
理由ははっきりしている。
道端でカメラなりスマホなりを出すと狙われるから、だけではない。『撮る』行為が私と相手の間に線引きをして、『自分と違う』と際立たせてしまうような気がして、嫌だった。
実際自分の生活様式と違うのだけど。
物珍しく思うのだけど。
地域に入って協働する私が、言外に「違う」と叫んでいるような行為をやたらめったらするのは違うんじゃないのか。
それなら、任期が終わるころに仲良くなった人にお願いして撮らせてもらおう。と、思っていた。今、そうしているはずの時期だった。
私が赴任してすぐに任期満了になった先輩隊員が、似た感覚を持つ人だった。
「写真をあまり撮ってこなかった。日本に帰ったら特別だったなぁと思うかもしれないけど、あまり特別と思いたくない気持ちもある。」
という言葉にすごく共感した。
後悔はない。
写真を考える、いい機会だった。