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オランダのチョコレート

大学2年の夏休み、フランスに行った。
初めての欧州だった。
日本を発った時はまだぎりぎり10代という年齢の時だった。

名目は語学研修旅行で、約1か月間研修先(語学学校のある街)に滞在した。
私の滞在した所は、パリから列車で1〜2時間程の距離にあるトゥールという、古く中世からの街で、日本で言う京都のような所だと、フランス大使館で入手したパンフレットにも書かれていた。
研修期間の前後10日間程はパリの集団宿泊施設に、他の滞在先の生徒たちも集まって過ごす日程になっていて、パリの街はその間に散策した。

トゥールの街には、美観地区のような古い歴史的建物が固まって残っている場所が「Vieux Tours」として、観光客向けにも指定されているのだが、その他にも古い石造りの建物がそこかしこにちょっと足を伸ばして散策すると見つけられた。
古い石造りというのは、何とも凄い迫力があるものだ。石だと長く持つので、おそらく復元ではなく当時のまま残っているのだろうけど、何百年もの重みがあるのだから、それも不思議はないのかもしれない。
あまりその中に感性を広げ過ぎると、中世の化け物でも出てきそうなほどだ。(そういえばもうすぐ万聖節前夜…)
石畳なんて、日本のなんちゃって石畳もどきとは全く別物で、一つ一つの石が大きく不揃いで、その間の溝が深いので、ヒールの靴には到底向いてないしスニーカーでも歩きにくいほどで、「ああ、ここをかつて馬車が通過していたんだなあ」と、車輪の響きを連想させてしまうくらいどっしりと迫力があるのだ。

トゥールに滞在している間はホームステイで、私の他に他大学からの学生がもう1人いて、部屋は別だったがマダムの作る夕食は一緒に取った。マダム、ムッシューとは普段一緒には食べないで、5歳の少年ニコラと3人の食事だった。
アメリカのホームステイとはまた違った感じである。
話に聞いていた「フランス人」らしく、5歳児でも我々と同様にワインが食卓に並ぶ。その家では主にロゼワインを使っていたのだが、ニコラにはそのロゼワインを水で薄めたものが用意されていた。
そして洋の東西を問わず、子どもというのはとかく偏食がちで、中でも炭水化物くらいしかなかなか食べたがらぬもので、ニコラはバゲットくらいしかあまり好んで食べようとしなかった。(日本だとさしずめおにぎりくらいしか食べないという場合もあるだろうが、"バゲット"というところがフランスらしい。カナダにいた時は、同じくらいの年齢の少年は"チーズ&スティック"だっただろうか…)

もう何十年も前の記憶を辿ると、つい話があちこち飛んだりあらぬ方向へ広がっていったりしてしまうが、今回言いたかったのは、そのフランス滞在中、そしてその後の人生でもその前の人生合わせても、自分の中で一番おいしかった「チョコレート」というのが、このフランス滞在中に見つけたとあるチョコレートだったのだ。

トゥール滞在中に数日間の休みがあり、同じステイ先のもう1人と語学学校のもう1人と女子3人で、イギリス旅行に行ったことがある。
パリから列車でカレーまで行き、そこからフェリーでドーバー海峡を渡るという旅だった。そのフェリーの中で買ったチョコレートが、自分史上1番のものとなった。
ついでに、同じくフェリーで買ったデニッシュが、これまたとてもおいしかった。何の変哲もない断面切り(パン・オ・レザンのようなカットした断面が上になる成形)のプレーンなデニッシュ生地に、中央に赤いゼリーがちょこんと、ドレンチェリー代わりに載っているだけのシンプルなパンだが、パリッともしていないのにリアルバターが使ってあるからなのか、ゼリーの甘酸っぱさも相まって、意外な所で意外なものが意外においしかったのだ。
チョコレートの方はオランダ製らしく、細長い箱に10個くらい、大きいコイン状の丸く平たい物が縦入れされているのだが、ダークチョコレートの中にはウイスキーボンボンのようにドロッとしたリキュールが入っている。リキュールとチョコレートの間にシャリシャリした糖衣の層があるのだが、マジパンのようなものが薄くその層を形成していた記憶である。
名前は憶えていないし、以来どこを探してもお目にかかれないのが残念だが、あのチョコレートを超えるものに出会ったことがない。(後にベルギーのGODIVA本店にも行ったのだが…)

そして研修が終わってのパリ滞在期間中は、皆個別で欧州のあちこちにせっかくだからと旅行していたのだが、私はチョコレートのこともあり「オランダ」という国に何かとても惹かれるものがある気がして、友人たちは皆南のイタリア等に行く中、私はオランダ・ベルギー行きの組に混ぜてもらった。2〜3泊のパリ発の旅行に、北を目指して寝台車で向かった。
(オランダ・ベルギー旅行に関してはまた後日)

それにしてもあのオランダ製チョコレート、どこかで見つけられないものか…
ウイスキーボンボン(チョコレートがない版)の作り方というのがネットにも載っていたので、かくなる上は自分で作るしかないのか…

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