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俺からお前へ3

拝啓 友よ、


わざわざ南方の島より手紙をありがとう。
いつにも増して重量が乗った便箋を頂いた気持ちだ。
運んだ潮の分だけ増したのであろうか。


君の沖縄探検記?は魅力的だな。
率直に言ってうらやましい。近頃思うが人生にはバケーションは必要だよ。つくづくおもう。

視点を洗ういい機会だ。コンクリートジャングルはまさしく毒さ、実りがしょぼいな。

俺は今、我らが京都の実家から筆をしたためている。
深夜は午前四時。時期では朝日が出かけている。


日頃は他人と分かりあうために、プロセスを踏んだ言葉を使っているつもりでいる。
酒気を帯びた朝日の最初にそんな丁寧は難しくてな。そのままを書く。


大袈裟な話ではない。藍色のセンチメンタルが身体を駆けるから、恐る恐るお前にだけ手紙を書くんだ。

今日も中学の友達と飲みに出かける。25歳に相応の悩みがいくつもでた。
違和感がずっとあったんだ。背景も育ちも感性も違う中で、年代が一緒なだけで問題を重ね合わせないでほしいと思った。


これは友達にではなく、社会全体の風潮とそれを教科書にしてるかのような恋人に対してだ。
彼女に悪気と自覚はない。過敏な俺が悪いんだ。


お酒が回ると吐露が出る。分かってもらうつもりもないのに自己開示の蜜を啜ろうとする俺の悪い癖が出た。
みんな優しく言ってくれるからインスタントに心は綻ぶけれど、一人になると窮屈になる。


他人に優しくされたいわけじゃない。痛みが理解できるわけじゃない。遠い目的地の話だから、そこで会おうなんてことは夢のまた夢なんだろう。


「結婚」、「育児」、「老後」、概して「シアワセ」。
美しいな。
否定はしない。
ただ俺には絢爛すぎるんだなあ。そんなことを感じた。


俺は後悔と懇ろな関係性を長らく続けていて、
それはまだ継続調子だ。
前向きな話題には気が滅入る。昔の辛さや、痛みを蒸し返したり癒したりを続けながら、ただ今をどうにか生きている。


そんな感覚を持ち続けているものだから。
明るすぎる希望は影を追いやる。
ポジティブは俺の悩みの種だ。


劣等感に違いはないし、社会的に目線が前を向くように努力はしてきた。
根本はあまり変えられていない。


「つまるところ、何の話?」


ごもっともだが、端的に言うと地獄が終わらないんだってことだ。
社会的な進歩が充足に寄与していない。
そんな進歩は渇きを加速させるだけで、心を救ってくれる泉には変貌しない。


「結婚の時期が、」
「どこどこで家を〜」
「こんな将来を〜」


そんな呑気なことを言ってこないでほしい。
みんなが期待するほど、俺には余白はないんだから。

余裕は見掛け倒しなだけ。煮えくりかえるストレスにずっと半身浴って感じ。
常にイライラしているんだ。

折り合いがつかない後悔が、正直になると帰ってくる。
そんな恐怖を知っているだろうか。
人には人の地獄、
よく言ったものだ。

ふと思い出すのはとある歌詞

“振り返った季節に立って
思い出せなくて嫌になって
流れ流れてた鳥だって
街で鳴いてたろ
鳴いてたろ“

特段好きなアーティストではないけども、
自己陶酔気味に一致を見つけたりなんかしてみちゃったり出来た。

これは勲章だろう。その記念にこうやって文にするんだ。

こっち都合のメディアをお前に押し付けてすまない。
怪文書と理解してほしい。
宛先になってくれて本当に助かる。
心から感謝をするよ。


弱音は吐きすぎると浅ましいな。
今度だけだと許してくれ。


では、また東京で会おう。


まだまだ人生半人前男 より

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