20240812 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を早送りで読む/『アウトレイジ』の風土

三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を、本書の言葉(当然『映画を早送りで観る人たち』を踏まえてのものだが)でいえば「早送りで」読んでしまった。よく整理された日本読書史の記述だが、そこに特に新しさは感じない。しかし、読書から得られる、この「新しさ」のような「情報」と、「知識」の違いは、「ノイズ」の有無だというのは、なかなかおもしろい見方である。当然、濃密な「読書」には「ノイズ」があり、その「ノイズ」から他の人には聞こえない、筆者にも聞こえていなかった唯一無二の意味が聞こえてしまうのが読書行為の真髄だろうが、三宅は、そもそも読書行為こそが仕事に対する「ノイズ」であって、だからこそ我々労働者は本を読まなくなるのだ、といったことを論じている。納得である。一方で、「自己啓発書」やインターネットやスマホゲームは、「ノイズ」がない(むしろ消去しようとする)から、働きながらでも享受できるというわけだ。三宅香帆の本は、一見「ノイズ」がないようで、意外と鋭いことを言っているという私の印象が、また重ね塗りされた。

粛々と、本を読もう……。


北野武『アウトレイジ』を観た(早送り無しで)。日本的……と、海外のアウトローものと比べて思うのは、裏切りの受容の仕方と、亡びの受容の仕方だろうか。他者は裏切る。亡びるときには亡びる……実に『風土』的。

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