ミニチュアペイント初心者ガイド③【ベースデコレーション入門・仕上げのトップコート】
こんにちは。あおいです。
前回までの初心者ガイド①②では
下地塗装をし、色を塗り分け、明暗を付けるところまで進みました。
今回はモデルを完成させるべく「ベースデコレーション」と「トップコート」をしていきます。
初心者ガイド①②を先に読んでおくと、よりこの記事が楽しめるかと思います。是非下記リンクからご覧ください。
いざベースデコレーション!
必須ではないけどデコレーションしたらよりカッコいい
上の画像を見ると、ミニチュアの乗っている台座(ベース)がフラットな状態になっています。
勿論これはこれでミニチュア感があっていいのですが、ここに情景(ミニチュアが立つ戦場など)をイメージしてデコレーションを施すことで更に情報量が増えてカッコよくなります。
今回はこの「ベースデコレーション」から簡単な、砂の地面や石の瓦礫、水たまりにフォーカスして紹介していきます。
と、その前に今回使用しない手法や素材を用いたベースデコレーションの一部も紹介します。
ベースデコレーションは自由自在!
ベースデコレーションは基本的には自作することになるので、裏を返せば自由自在、あらゆる素材や手法でアプローチできます。
(市販のデコレーション済ベースやベースの情景も造形されているキットも存在します)
例えば・・・
園芸用品のバークチップを切り貼りして岩場っぽくし、隙間に草を模したナイロンを植えることで更に臨場感をアップ!
動物飼育用の針葉樹チップで地面が割れて盛り上がる様を表現し、植物はクラフトパンチで切り抜いた画用紙と針金で作っています。
ボールペンの先で溝を掘ったスタイロフォームにジェッソ(目止め材)を塗って石のタイルっぽくしてみたり!
デジタル上で情景を作ってベースデコレーションそのものを3Dプリントすることもあります。
他にもゲルメディウム(アクリル絵具の盛り上げ材)レジンでの水面表現や、パテを使った造形など様々な素材や手法があります。
小さなジオラマと考えていいでしょう。
今回は入門編ということで先に挙げた簡単な3つのアプローチでデコレーションしますが、今後発展編として色々なベースデコレーションを紹介できたらと思います。
それでは実際にデコっていきましょう!
実際にやってみよう!
ベースデコレーションをするときに悩ましいのが
「ミニチュアとベースを合体させた状態でやるorミニチュアをベースに合体させる前にやる」
どちらがいいのか、一長一短ありますが今回は合体前にデコレーションする方法でいきます。
この方法は手数は増えますがデコレーション材が意図せずミニチュアに付着するなどの事故が少ないです。
まずはデコレーションする範囲の目安をベースに書き込みます。
ミニチュアを一旦ベースに置いて、設置部分の周囲を囲うように目安の線を引いてみましょう。
ベースと接続するピンなどがないミニチュアの場合は練り消しやブルタックでミニチュアをベースに立たせて行います。
今回は記事の順序の都合でペイント後に行っていますが、モデルが汚れる可能性があるのでなるべくペイント前にやっておくことをオススメします。
画像右端で赤い部分はデコレーションしてしまうとミニチュアと干渉する部分になるのでデコレーションしないようにします。
青い範囲がデコレーション箇所となります。
この段階でどのような情景を描くか思い浮かべながら作業しておくとスムーズです。
今回はミニチュアがお化けで墓石の造形があるので、古びた墓地のイメージでいきます。
霊気っぽい水たまりを作りたいので、まずは①の記事でミニチュアの霊体部分に使用した「ファレホゲームカラー フォールグリーン」で想定範囲をベタ塗りしていきます。
この段階では水たまりに見えませんが、大丈夫。進めていくとそれっぽくなるので安心してください。
続いて、百均などに売っているコルクボードをちぎった破片を瞬間接着剤で散りばめていきます。
これは岩っぽい瓦礫に見立てています。
この際、後でミニチュアと干渉しないようにするのは勿論なのですが、ミニチュアの”映えポイント”を隠してしまわないよう留意しましょう。
例えば、墓石を覆い隠すほどの大きな破片を置いてしまうとそれが主張しすぎてミニチュアのインパクトが損なわれてしまいます。
良い塩梅になるよう、じっくりと配置してきましょう。
ミニチュアの隙間にも同じようにそれっぽくコルクの破片を植えておきます。
次は地面を作っていきます。
ペースト状の専用塗料も存在しますが、今回は砂と木工用ボンドを使って地面を作ります。
まずは地面にしたい部分にボンドを塗ります。
容器から直で塗ると難しいので、小皿などに出して筆で塗るのがおすすめです。
ボンドを塗ったら乾かないうちに砂をまぶしていきます。
私が普段使用している砂は観賞魚用の目の細かい砂で、粒子の大きさが若干不揃いなのでランダム性があってそれっぽくなります。
百均などにも大粒小粒問わず色々な砂状の素材が売っているので色々試してみるのもいいですね。
砂を振りかけたら、持ち手を振ったり息を吹きかけたりして余分な砂を落とします。(砂が散るので不要な袋の中などでやるのがおすすめ)
これを十分に乾燥させればザラザラとした地面の造形が完成します。お手軽!
更に局所的にボンドを塗布して砂を撒き、地面の凸凹感を出してみました。
この砂系素材+ボンドは応用が利くので色々試してみると面白いです。
砂ボンドが完全に乾燥したら、ベースを塗り分けていきます。
地面部分は「シタデルカラー メカニカス・スタンダード・グレイ」、瓦礫は①で墓石に使用した「ホルベイン アクリリックガッシュ アッシュイエロー」で塗り分けました。
先程ミニチュアのほうに付けた瓦礫も忘れずに塗っておきましょう。
段々それっぽくなってきましたね!
乾いたら②で使用した「シタデルカラー アグラックス・アースシェイド」を全体に塗布します。
しかしこれだと単調なので画像のような感じでポイントポイントに「ファレホゲームウォッシュ グリーンウォッシュ」と「ファレホゲームウォッシュ ブルーウォッシュ」を塗って変化をつけてみました。
岩や地面などが単調になりがちな場合はこのようにうっすら色を乗せてあげると緩和されます。
と、ここまででお気づきの方もいるかもしれませんが、
「このザラザラ地面全部にハイライトを入れるのめっちゃ大変じゃ??」
実際、ここに一粒一粒手書きでハイライトを入れるのは大変です。
こういった場面で効果的なのが「ドライブラシ」です!
「ドライブラシ」にチャレンジ!
ドライブラシとは「筆の塗料が掠れて僅かに着色力を持つ状態(ドライな状態)でモデルに擦り付けて着色する手法」です。(説明が間違ってたらごめんなさい)
いまいちピンとこないと思うので実際にやってみましょう。
極論ほとんどのタイプの筆で使える手法なのですが、筆に大きな負担がかかる手法でもあるので個人的には専用の筆を用意して使うことをおすすめします。
画像の「アーミーペインター マスタークラスドライブラシ」がとても使いやすいのでどれを買うか悩んでいる方は候補に入れてみてください(イチオシ)
(画像は分かりやすく青の塗料を使用しています)
筆先に塗料を付けたら、ティッシュやキッチンペーパーなどでよく拭います。
この際、シャバシャバとした粘度の低い塗料(エアブラシ用塗料やシェイド、ウォッシュ塗料など)だと扱いが難しいので、ある程度粘度のある塗料(多くのチューブ塗料、シタデルベースカラー、ファレホモデルカラーなど普段ベタ塗りに使う塗料)を使用しましょう。
専用の塗料も存在するので気になる方は調べてみてください。
かなり拭って、僅かに着色される状態になったら準備完了!
造形の凹凸に掠めるように優しく擦りつけると出っ張った部分だけ着色されます。
「ホルベイン アクリリックガッシュ チャイニーズホワイト」で地面や瓦礫にドライブラシをするとこの通り!超簡単にハイライトが入りました。
このチャイニーズホワイトは②のTipsで触れたジンクホワイトなどと同じ混色用の弱い白なのですが、チタニウムホワイトと比べて優しく色が乗るのでドライブラシをした際に自然な仕上がりになりやすいです。
白くなり過ぎた部分などは下の色で重色(②参照)すると上手く馴染みます。
ドライブラシ後、霊気の水たまり部分を軽く塗りなおしてはみ出しを修正しました。
光沢感を使い分けよう!
いよいよ水たまり部分を仕上げていきます!
「ファレホ メカグロスバーニッシュ」とごく微量の「ファレホゲームカラー フォールグリーン」を混ぜたものを水たまり部分に若干厚めに塗っていきます。
都度乾かしながら3回ほど塗るといい感じになります。
めっちゃそれっぽくなりました!!
このように光沢感を付与することでも質感の表現ができます。
ベースの外周(リム、はかまなど色々な呼称があります)も塗ってみましょう。
「シタデルカラー スティール・レギオン・ドラブ」をベタ塗りします。
この色は公式作例でもベースの外周によく使用されている色となります。
決まりはないので好きな色で塗りましょう(私は黒派です)
ベースデコレーションが完成しました!
(撮影用に合体させましたがこの後トップコートを吹くのでまだバラの状態で大丈夫です)
情景が加わることで、より一層豪華な感じになりました。
ここで完成でもいいのですが、最後にトップコートをしてみましょう。
トップコートは必須ではありませんが、施すと塗装が剥げにくくなるのでミニチュアをよく触る場合にはしておいたほうが無難です。
あと一息、もう少し頑張ってみましょう!
仕上げのトップコート!
まずはスプレーでトップコート!
早速スプレーでトップコートをしてみましょう。
表面保護や光沢感を整える効果のある塗料で、透明です。
缶のものだと「クレオス Mr.スーパークリアー 溶剤系スプレー UVカット つや消し」がオーソドックスな性能で使いやすいです。
エアブラシをお持ちの方は「クレオス Mr.カラー スーパークリアー半光沢」と「クレオス Mr.カラー GXシリーズ スーパースムースクリアー〈つや消し〉」をひと瓶ずつ混合し、2~2.5倍に希釈した”半々つや”がめっちゃおすすめです。ミニチュアっぽいツヤ感になります。
スプレーなので①で紹介した下地塗装のように換気をし飛散対策をした上で吹いていきます。
下地塗装と同様、軽く濡れたような状態が適切です。
薄く吹きすぎるとザラザラになってしまい、厚く吹きすぎるとペイントが溶けてしまいます。(大変!)
また雨の日や湿度の高い日に吹くとトップコートが白く濁ってしまう場合があります。なるべくカラッとした日に吹くようにしましょう。
最初は適当に色を塗ったプラスプーンなどで試してからミニチュアに挑むのもおすすめです。
トップコートをしたことで表面が保護され、質感も整いました。
しかし、全体にスプレーしたため金属部分や霊気の水たまり部分もつや消しになってしまいました。
部分的に光沢クリアーを塗ってみよう!
このような場合は先程登場した「ファレホ メカグロスバーニッシュ」などの光沢クリアーな水性エマルジョン塗料を部分的に塗ればOKです!
他の部分にはみ出さないよう、慎重に該当部分へ上塗りしていきます。
鎖の部分などは影になっている部分のつや消しを残すように塗ると奥行きが出ます。
そして十分に乾燥させ、ミニチュアとベースを合体させたら・・・
完成!
遂にミニチュアが完成しました!
下地塗装から始まり、塗り分け、影入れ、ハイライト、ベースデコレーション、トップコート。
このような過程を経てめっちゃ立派なカッコいいイケてるフルペイントミニチュアになりました!
ミニチュアペイント初心者ガイド①、②、そして今回の③
これら全てをひと通りやると初めての場合は1ヶ月ほどかかるかもしれません。
しかしコツコツやっていけばここまで紹介してきたようなカッコいいミニチュアが完成します。
①②③全て難なくこなせるようになったら初心者マークは卒業かもしれませんが、このシリーズはまだまだ続きます。
次回以降はここまでの内容を踏まえて、発展的な内容を扱っていきます。
例えば・・・
「よりリアルな、光源に沿ったような明暗の表現」
「白黒に依りきらない差し色を用いた明暗の表現」
「炎や魔力に照らされた照り返しの表現」
「より立体的で複雑なベースデコレーション」etc
ここまでと同じように、なるべく分かりやすく書きますので「なーんだ、次回から難しいならここまででいいや」とならずに読んでいただければ幸いです。
それでは次回もお楽しみに!