成人先天性心疾患総論:頻度・推定年齢
自分でも勉強しようとまとめを作っています。
大事なことは太文字で、マニアックなことは引用の囲い内に、のつもりでまとめていきます。
※今回のまとめはそこそこマニアックなものになってしまいました。
先天性心疾患の発生頻度
全先天性心疾患の発生頻度はほとんど一定で、生まれてくる子供の約 1% を占めます。イメージ的には学校2クラスに1人の割合です。
計算しやすく日本の出生数は 100 万人程度と表されることが多いですが、そうすると、先天性心疾患をもつ生産児は毎年 1 万人近いと推定されています。
晩婚化・高齢出産時代でも同じなのか
子供の出産に関わる精子卵子の元となる男女ともに年齢が上がってきており、不妊治療を受けることも少なくない時代です。
この辺りはどうなのか、少し調べてみました。
まず1つめの文献では、明らかな差がない、という報告があります。こちらはイギリスからです。
問題点としてはここではあくまで10代、20-24, 25-29, 30-34, 35歳以上のくくりであり、日本で徐々に増えている40歳を超えた区分での検討がされていません。
一方、2つめの文献は差があると報告しています。ヨーロッパ24ヵ国の共同研究成果です。
なんとも不思議な結果で、若い人の出産の方が重症CHDが多く、高齢のほうが軽症CHDが多いと。考察など読みましたが、あくまで事実を述べるのみであまり理由については言及されていませんでした。というより証明不可能というのが事実でしょう。
あまりにsevereすぎると死産になるということが裏に隠れているのかもしれませんが、証明のしようがないところです。
先天性心疾患の成人移行率
ほんの少し前までは成人に至ることなく亡くなる子供が多い時代でした。
科学や医療の進歩って偉大なことで、現在はおよそ90-95%以上が成人へと移行すると言われています。推測ですが現在は日本の成人先天性心疾患患者は50万人を超えていると言われています。
90-95%というと、生存率のようなイメージ鴨しれませんが、当然そんな単純ではありません。ただ一般的には下記の重症度分類がその目安になります。
しかし、この軽症、中等症、重症分類は生存率・死亡率などの区別ではなく、あくまでフォローすべき病院レベルの話をしています。
すなわち、
軽症であればクリニックで可能
中等症は総合病院でのフォローを
重症であれば専門医でのフォローを
という具合です。
成人先天性心疾患患者の推定年齢?
10年ほど前になかなかインパクトが大きな論文が発表されています。
平均寿命と単純に言っても、心疾患が原因ではなく、事故や癌、その他の死因でなくなることも相応にあります。
それは心疾患を持たない患者さんでも同様なわけですが、あくまで傾向として、各先天性心疾患患者は一般の人と比べるとどのくらいの年齢の人と同じなのかを推定した論文が下記になります。
下記が一般人口と比較した各先天性心疾患の推定年齢。これはさまざまな疾患から推定される5年生存率を一般人とマッチさせることで擬似的に年齢を推定しています。
本文でも述べられていますが、例えばフォンタン術後を例に挙げると、40歳のフォンタン術後患者は一般の75歳と同等と算出されています。
同じ疾患名でも病態が様々であることが特徴の先天性心疾患のため、ひとくくりには当然できないわけですが、あくまで傾向として図表が作成されています。
これは2015年時点の論文で1991年から2013年を対象とし、平均的には2000年頃の医療技術が反映されているデータです(そしてイギリス)。
20年前の他国のデータを持ち出してあーだこーだいったところでどの程度意味があるのかではありますが、それだけ一般と年齢差があることを考慮して診療を行う必要があるということは言えます。
心不全に関しての予後はこのときに比べて良くなったと言われていますが、一方で、ACHD患者でも生活習慣病、癌などによる死亡も増えていることが知られており、そのどちらともの影響が現在の状況にどう反映されているのか。
これらが今後の研究結果で明らかとなってくるところになります。
まとめ
医療技術の進歩に伴い、フォローアップが必要となる先天性心疾患患者は急増しています。同時に心疾患だけでなく、生活習慣病や癌といった疾患への罹患も増加しており、多角的な視点からの診療が必要な時代になってきました。
医療機関からの介入だけでは難しい点も多く、今まで以上に健康診断・人間ドックを始めとした予防医療の推進、患者教育を進めていく必要がありそうです。
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