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『ApartmentBand』が好き(「D.U.N.K. Showcase in K-Arena Yokohama『Apartment B Special Session』」編)
2024年の5月~9月に日テレにて全20回に渡って放送され、現在はTV放送でカットされたシーンも含めた「特別版」としてHuluで配信されている音楽番組『Apartment B』。BMSG所属アーティストを中心に、ALIのフロントマンであるLEOさんや、Dos Monosの荘子itさん、アオイヤマダさんといったアーティストが出演されていたのだが、時折番組内で行われるスタジオセッションのホストバンド「ApartmentBand」として、ゴンドウトモヒコさん、松江潤さん、tatsuさん、オータコージさんが名を連ねていた。
その『Apartment B』が遂にアパートを飛び出してオーディエンスの前に登場する。2025年1月12日~13日、Kアリーナ横浜で2日間に渡って開催された『D.U.N.K. Showcase in K-Arena Yokohama』、初日の冒頭を飾ったプログラムが「Apartment B Special Session」だ。
SKY-HI、LEOさん、荘子itさん、アオイヤマダさんを中心に、これまで番組に出演した"アパートの住人達"のみならず、D.U.N.K.出演の各グループからもボーカリストが多数参加したセッション。そのバックは勿論、番組同様にApartmentBandが務めている。
当アカウントでは、少々偏重気味にApartmentBandの出演回にのみフォーカスして感想記事を書いていた(「Apartment Balcony」コーナーも、P-FUNK回も、そして大好きなOvall出演回も触れたかったが、全く追い付かなかった)。現地参加こそ叶わなかったが、今回のセッションを配信で観た感想を過去記事に倣って此処に残す。
オープニング
参加メンバー:SKY-HI, LEO(ALI), 荘子it, アオイヤマダ, ゴンドウトモヒコ(フリューゲルホルン), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
D.U.N.K.の2日間の幕開け、オープニングセッションのイントロ部分。既に高まりを見せる会場内の熱気をさらに高めるかの如く堂々と鳴り響くのは、ApartmentBandのサウンドだ。TV放送の第1回もそうだったが、ApartmentBandはいつも不意打ちで現れる。広いアリーナクラスのステージ上で、たった4人の音からこのセッションは始まるのだ。
イントロが終わりテーマへと切り替わると、オータさんが刻むどっしりとした8ビート、サウンドを牽引するようなtatsuさんの指捌き、イントロでグッと上げた熱を持続するように鳴る松江さんのカッティング、エフェクトが効いて切れ味の良いゴンドウさんのフリューゲルホルンと、最初の4小節だけで聴きどころが満載。このビートに呼ばれるかのようにSKY-HIが登場し、D.U.N.K.の始まりを告げる。「心も体も躍らすのはアンタ達だ!」と煽る中、まさにオーディエンスをダンスへと誘うのが、(奏者が居ないのでトラックで流していると思うのだが)バンドサウンドの上に重なるシンセのメロディだ。
さらに此処で、"アパートの住人"こと、ALIのLEOさん、荘子itさん、アオイヤマダさんが呼び込まれる。番組のメインMCである4人が揃い会場の温度がさらに上がる中、私が好きな"細かすぎる"ポイントは、オーディエンスを煽りながら手を挙げる荘子itさんがそのまま後方を向いてゴンドウさんに合図をし、今度はそれを受けたゴンドウさんが手を挙げてバンド全体に向けてカウントを出している、ように見えるところだ(引きの映像なので、実際はどうだったのかは分からないが)。
準備がバッチリ整ったところで始まるのは、TV放送の第1回と同じくあの曲である。
「Boom Boom Back」
参加メンバー:BE:FIRST, SKY-HI, LEO(ALI), 荘子it, アオイヤマダ, ゴンドウトモヒコ(フリューゲルホルン), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
TV放送の第1回で披露され今もYoutubeで観ることの出来るBE:FIRSTの「Boom Boom Back」だが、アパートでのセッションよりも勢いがあるのにこなれた印象になっていた。2番のブリッジの最後でMANATOさんと(ALIの)LEOさんがユニゾンする部分などは、TV放送の頃よりも番組メンバー間の距離が縮まったであろうことが垣間見える。
TV放送版はスタジオセッションということもあり、バース部分が抑えめだったりブレイクがあったりと、余白を多めにしたコンパクトなイメージだった。それに対して今回最も特徴的なのは、大きなステージで演奏する為にギラギラとした音に変化していたことだ。SKY-HIのラップパートがその変化の中心にある事は間違いないが(ここで荘子itさんがサビのメロディを弾いているのも左側から聴こえてくる)、バンドの方は特に、松江さんのギター(右側から聴こえる)が最初から最後まで前面に出ている。TV放送版では荘子itさんのギターとの緩急差こそが聴きどころでもあったが、今回はむしろ、松江さんの方が目立つぐらいだ。特にアウトロ部分のフレーズが好きだったのだが、今回の方がよく聴こえていて曲の熱さがダイレクトに伝わってくるようだった。
前半は暫く、松江さんの見せ場が続くと言っても過言では無い。
TV放送版:第1回
参加メンバー:BE:FIRST, LEO(ALI), 荘子it, ApartmentBand
「Thinkin' bout you」
参加メンバー:ShowMinorSavage, LEO(ALI), 荘子it, BE:FIRST, SKY-HI, ゴンドウトモヒコ(フリューゲルホルン), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
ここでAile The Shotaさんが登場し、ステージ下手側にShowMinorSavageが集結。先ずはTV放送の第18回でも披露された「Thinkin' bout you」が始まった。
今回はApartmentBandとのセッションだが、ベースになっているのはTV放送版に参加したOvallのアレンジだ。Ovall版はセッキーさんこと関口シンゴさんの"Chill Guitar"がそこかしこに散りばめられているが、ApartmentBand版もとにかく、松江さんのギターに耳を傾けたい。セッキーさんとはまた違った閃くような音色で、違った動き、特に1回目と2回目共にバースの終わりの一瞬が好きなのだが、4小節や8小節単位のメロディが終わる毎に洒脱なフレーズが入ってくる。
また、Ovallのアレンジで特に好きなのが3回目のサビからその後のブリッジまで続く、ギターとベースが同時に食い気味で入るバッキングなのだが(此処に細かく言及するとOvallについての記事になってしまうので割愛するが、Ovallらしいアレンジだと思う)、引っ掛かるようなリズムと重みのある跳ね具合が、tatsuさんと松江さんによって増幅されたような印象だった。そして、このバッキングで難なく歌えるShowMinorSavageの3人のスキルの高さは言うまでも無いし、その後の荘子itさんのラップがオータさんのビートの上にハマっていくのも聴いていて気持ちが良い。この辺りからラストにかけての止まる事の無い流れも良く、特にラストのサビの2周目からのtatsuさんのベースの細かな動きによってドライブ感が増していく。
最後に、Ovall版との一番大きな違いは、言わずもがなゴンドウさんのフリューゲルホルンだ。仮に他の奏者がこの曲を吹くとすれば、もっとスムースなミュートトランペット(そもそも、こういうサウンドでワウミュートを使ったものは、フリューゲルホルンよりもトランペットが多いと思う)になっていたかもしれない。だが、スムースやチルといった感触とは違い棘さえチラつくミュートフリューゲルホルンが、原曲からOvall版を経由してオルタナティブな色を増した今回の「Thinkin' bout you」を形作る重要なピースだと私は思っている。
勿論、ShowMinorSavageのパートは1曲では終わらない。
TV放送版:第18回
参加メンバー:ShowMinorSavage, LEO(ALI), 荘子it, Ovall
「Ocean」
参加メンバー:ShowMinorSavage, BE:FIRST, SKY-HI, LEO(ALI), 荘子it, ゴンドウトモヒコ(ユーフォニアム), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
引き続きShowMinorSavageがもう1曲、今度はTV放送第16回でOvallによるアレンジとセッションが行われた「Ocean」だ。
こちらも原曲やOvall版にはホーンは無いのでゴンドウさんの音はどう入るのだろうと思っていたのだが、冒頭からゆったりと響くユーフォニアムの音に、その手があったか、と目から鱗が落ちた(てっきりフリューゲルホルンを使うものだと思い込んでいたのだ)。こういったサウンドに重なるユーフォニアムの音色は新鮮に思えたが、大らかな海の景色を添えるようでもあった。
それから、この曲で一番好きなのは2番のバース前半でSOTAさんとShotaさんが六連符で畳み掛けるように歌う所なのだが、この直前にSOTAさんが歌い始める裏で、フィルから始まるオータさんのドラムとそれに絡むように動くtatsuさんのベースも聴きどころだ。
そして、原曲、セッキーさんによるチルなアレンジのOvall版、と踏襲されてきたギターを主軸に置いたサウンドはApartmentBand版でも変わらず、またもや松江さんがイントロからラストまで裏の主役のような存在感を示す。リラックスムードが漂う部分も良いが、終盤のギターソロはどのバージョンよりも熱かった。
続いてSKY-HIがセンターへと歩み出る。
TV放送版:第16回
参加メンバー:ShowMinorSavage, LEO(ALI), 荘子it, Ovall
「i just wanna be myself」
参加メンバー:LEO(BE:FIRST), Aile The Shota, SKY-HI, BE:FIRST, LEO(ALI), 荘子it, ゴンドウトモヒコ(フリューゲルホルン), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
SKY-HIが出てきた、と思ったらそれは寸劇(?)で、軽快なイントロと共にBE:FIRSTのLEOさんがセンターへ。ここで披露されるのはLEOさんのソロ曲。私は初めて聴く曲だったが、数回聴いただけで覚えられるような耳馴染みの良いディスコブギーだ。曲の人懐っこさにマッチするLEOさんの伸びやかな歌声と表情や、サビの前半でリズムに乗るSKY-HIとALIのLEOさんの様子(カメラに抜かれてモニターに映し出されていた部分が好きだった)も楽しいが、ブリッジやサビで聴こえてくるShotaさんの華やかなファルセットにハッとさせられる。
聴けば自然と体が揺れるバンドサウンドの要は、tatsuさんのベースだろう。粒が細かくはっきりしたベースラインは此方の心(と耳)を掴んで離さず、ついついベースばかり耳で追ってしまう。
間髪入れずに、再びBE:FIRST全員がマイクを握って次の曲へ。
「Grow Up」
参加メンバー:BE:FIRST, LEO(ALI), 荘子it, Aile The Shota, SKY-HI, ゴンドウトモヒコ(フリューゲルホルン), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
TV放送の第3回で披露された「Grow Up」だが、TV放送版以上に、ALIのLEOさんがファルセットからハスキーな低音までの幅広い音域を使い分けながら、名バイプレイヤーとしての存在感を発揮する。特に、(恐らくLEOさんだと思うのだが違ったらすみません)ラストのサビで入ってくるリードより上の音域のコーラスはTV放送版には無かった部分なので、え、今の何?と思わず再生画面を巻き戻してしまったほどのインパクトだ。また、荘子itさんのラップにSKY-HIが声を重ねて来たり二人で煽ったりする場面もあり、TV放送版以上にセッションの色が強い(特にラップ明けのブリッジの頭で二人が煽る一瞬のシーンが好きだった)。
バンドアレンジはTV放送版と大きくは変わらないと思っていたが、冒頭のバース部分の緊張感が増したように感じて、もう一度TV放送版を観てみると今回はギターの音が減っていた。これだけでも随分と印象が変わる。
基本的に8小節単位で場面転換が行われていく曲だが、改めて今回のセッションを観ていると、その8小節間の後半や終盤でフレーズを締めたり次の展開へと繋ぐような動きが良いアクセントになっているな、と改めて気付く。例えばサビに入る直前2小節のギターや、サビの後半で加速して次のバースへと繋ぐベースライン、サビが終わる部分のフィルや2番のバースの前半を締めるクラッシュシンバルなど、挙げ始めたらキリが無い。原曲のトラックがシンプルだからこそ、セッション版はこういった細かなプレイや遊び心が随所で光る。
ここまでが前半戦。ここからは「Apartment Balcony」パートと呼んでも良いだろう。
TV放送版:第3回
参加メンバー:BE:FIRST, LEO(ALI), 荘子it, ApartmentBand
「ICE」
参加メンバー:KAIRYU(MAZZEL), REIKO, 松江潤(ギター)
ここからは番組内の「Apartment Balcony」コーナーで披露された楽曲が続く。先ずはMAZZELのKAIRYUさんとREIKOさんがステージに登場。TV放送の第17回でオルゴールに乗せて歌われていた「ICE」だ。
今回はサビから松江さんのアコースティックギターが入ってくるのだが、シンプルなギターにKAIRYUさんとREIKOさんのシルクのように柔らかな歌声が重なることで、この曲のメロディそのものが持つ暖かさが伝わるセッションだったと思う。
続いて選手交代、TV放送版とは違う顔ぶれでのセッションが繰り広げられる。
TV放送版:第17回
参加メンバー:KAIRYU(MAZZEL), REIKO
MusicBox Arragement:ALYSA
「接吻」
参加メンバー:MANATO(BE:FIRST), 小波津志(PSYCHIC FEVER), 荘子it(ギター)
TV放送版では第14回で、ゴンドウさんがアレンジしたオルゴールをベースに、KAIRYUさんとREIKOさんによって歌われた「接吻」だが、今回は荘子itさんがギターを弾き、MANATOさん、そしてPSYCHIC FEVERの小波津志さんのデュオで披露される。
誰が歌っても良い曲になるのは約束されているが、MANATOさんの真っ直ぐな歌声と、小波津さんの憂いを帯びたような声、そのコントラストの感触が強く耳に残る組み合わせだった。
「Apartment Balcony」と言えば、まだ出てきていない方がいる。スポットライトがステージ中央を照らす。
TV放送版:第14回
参加メンバー:KAIRYU(MAZZEL), REIKO
MusicBox Arragement:ゴンドウトモヒコ
因みに「Apartment B」からは離れるのだが、小波津さんの事を調べていたら、「接吻」を弾き語りされている映像があった。
「Flavor of Life」
参加メンバー:JUNON(BE:FIRST), YUMA(&TEAM), 荘子it(ギター)
「Apartment Balcony」はこの曲から始まった。TV放送では第2回、JUNONさんと荘子itさんのセッションだったが、今回は&TEAMのYUMAさんも加わる。特にこの曲を待ち望んでいた方は本当に多かったのだろうな、と思うほど、会場の歓声が大きい。
お二人ともリードに回ってもコーラスに回ってもクリアな声で、特に高音域でハモる部分は原曲が持つ繊細さがダイレクトに伝わってくるようだった。それを支える荘子itさんの堅実なギターバッキングも忘れてはならない。
舞台は再び、ベランダの片隅から住人が入り乱れるアパートの一室へと移る。
TV放送版:第2回
参加メンバー:JUNON(BE:FIRST), 荘子it
「LOST IN PARADISE」
参加メンバー:LEO(ALI), タカシ(超特急), シューヤ(超特急), MAKI(&TEAM), 荘子it, アオイヤマダ, KAIRYU(MAZZEL), REIKO, 小波津志(PSYCHIC FEVER), 上杉雄一(アルトサックス), 長田明宏(トランペット), YOSHIO(トロンボーン), ゴンドウトモヒコ(ユーフォニアム), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
新たにゲストボーカリストとバンドメンバーを迎え大所帯となった後半戦。ギターとユーフォニアムによる"アパB版"とも呼ぶべきアレンジのイントロをバックにALIのLEOさんがステージに戻り、「ALIの曲やらせてもらってもいいですかー!」と叫ぶ。TV放送では第20回(最終回)の冒頭を飾ったALIの「LOST IN PARADISE」だ。
フロントは、LEOさんに加えて超特急のタカシさんとシューヤさん、&TEAMのMAKIさん、さらに直前のApartment Balcony楽曲のパートから引き続き、KAIRYUさん、REIKOさん、小波津さんがステージに残り、ギタリストに徹していた荘子itさんは再びラッパーとしての立ち位置へ。
さらに、この曲にはホーンセクションが必要だ。今回はALIのサポートを務めるホーンセクション、アルトサックスの上杉さん、トランペットの長田さん、トロンボーンのYOSHIOさんが加わる。
なお、本セッションのみYoutubeにアップされたダイジェスト版でも観ることができる。
この曲はとにかくフロントマンが多いので、歌割りというよりは、歌い繋いで行く、という表現の方が合っているだろう。今回は荘子itさんが最初のバースを担当するが、突破口を開くような勢いだ。ブリッジはタカシさん、サビはシューヤさんと続くのだが、お二人ともゲスト参加とは思えないほど曲に馴染んでおり、そのレベルの高さに慄く。サビの後のアオイさんの全身を使った叫びや、KAIRYUさん、REIKOさん、小波津さんによるファルセットも聴き逃せない。2番に入ると満を持してLEOさんが登場、"セッションホスト側"としての余裕が見える歌いっぷりだ。直後のMAKIさんは一瞬にして場を掌握しステージの主役に躍り出る(MAKIさんが歌い始めた瞬間の歓声が凄くて驚いた)。2回目以降のサビではメインボーカリストが順番に歌っていくが、MAKIさんのリードに対してシューヤさんが高音でハモる部分や、ラストのオクターブユニゾン(誰が上のパートを歌っているかまでは識別できなかった)など、ボーカルの層の厚さをしっかりと感じられる作りだ。
バンド側もボリュームたっぷりで応戦している。ほぼ休みなく鳴り続けている松江さんのギターに、サビの後のアオイさんのパフォーマンスに対峙するようなオータさんのドラム捌き、2番のバースでLEOさんの歌を渋く引き立てるように動くtatsuさんのベースなど、リズム隊には場面毎の見せ場もある。また、この曲のみ参戦のホーンセクションは、遠くまでしっかりと飛ぶ長田さんのトランペットやYOSHIOさんのトロンボーンに、上杉さんの抜けの良いサックスの音色と、煌びやかだ。特にラスト8小節での上杉さんのソロのようなフレーズは、この人数の中でも埋もれずに聴こえてくる。そして、TV放送版と同様にキーボードやシンセサイザーの無いこの編成の中ではゴンドウさんのユーフォニアムがその役割を担い、ホーンセクションと共に動きを見せることもあれば、各セクションを繋ぐように柔らかな音色も響かせる。今回、ユーフォニアムの動きが少しだけ増えているように思ったのでTV放送版と聴き比べてみると、TV放送版では各バースの直前4小節でサックスが最前線に居たのに対して、今回はユーフォニアムがそのフレーズを吹いているようだった。
多様なボーカリストが参加しても各自の歌い方が見事にハマることや、バンドも全員の見せ場がきちんと作られることから、この曲自体が持つキャパシティの広さも窺える。初めてこの曲のライブ映像を観た時にはそのリファレンスの一つであろうCHICの「Good Times」を含む70'sディスコクラシックの姿が見え隠れしていたが、気付けばCHICの影は少し遠ざかり、ユーフォニアムの音が聴こえてくるなんて、他に類を見ないステージだ。この人数と編成を見事に活かし切った本セッション、Youtubeにアップされることも納得の、今回のハイライトシーンだろう。
この勢いのままセッションは大団円へと向かう。
TV放送版:第20回(最終回)
参加メンバー:LEO(ALI), アオイヤマダ, edhiii boi, Luis Valle(トランペット), Ryoji Ihara(アルトサックス), Yusuke Enomoto(トロンボーン), ApartmentBand(この回のみギターが松江潤さんではなく伏見蛍さん)
※この曲の映像はHulu版でのみ視聴可能で、Youtubeには無し。
「Theme of ApartmentB」
参加メンバー:SKY-HI, LEO(ALI), 荘子it, アオイヤマダ, BE:FIRST, Aile The Shota, KAIRYU(MAZZEL), REIKO, 小波津志(PSYCHIC FEVER), YUMA(&TEAM), MAKI(&TEAM), タカシ(超特急), シューヤ(超特急), ゴンドウトモヒコ(フリューゲルホルン), 松江潤(ギター), tatsu(ベース), オータコージ(ドラム)
ラストはここまでの参加メンバーがステージに集結し、TV放送版第20回でもエンディングを飾った「Theme of ApartmentB」が、ゲストを交えた形で披露される。大所帯のセッションだが、コーラスや掛け合いのタイミングが絶妙だ。
フロントマンの見せ場が次々と回ってくるが、やはり最後ということで番組MCを務めた3人とSKY-HIのパートに注目する。荘子itさんの「初めて人前でフリースタイル」というのは最終回のセッション(最終回では、フリースタイルは大嫌いだったというリリックだった)ともリンクする部分だ。前日の朝9時からずっと此処にいた(前日の1月11日には同じKアリーナでBMSG主催の『No No Girls THE FINAL』が開催されていた)というSKY-HIは、やはり"大家さん"と呼びたくなる。アオイさんのトマトを使ったパフォーマンスは番組をオマージュしつつKアリーナ全体を巻き込み、リードを取る場面以外でも曲全体を盛り上げるLEOさんは番組内でのMC同様にこのセッションをファシリテートする役割だ。
この曲は一度曲が終わったと見せかけた後に始まる、後半部分こそがメインディッシュのような作りなのだが、体感だと一瞬で終わるような盛り上がりである。オータさんの地声のカウント(因みに直前の「アパB」コールでのLEOさんの地声も凄い)で始まる16ビートとtatsuさんのベースの疾走感は留まることを知らず、その上に乗っかる荘子itさんとSKY-HIのラップがセッションの勢いを加速させる。特にSKY-HIがブレス無しに駆け抜ける所は観ている此方も瞬きをするのを忘れそうになるほど。また、ラップの隙間を縫って煽るように入るタカシさんや、REIKOさん、Shotaさんのフェイクやファルセットも主役級だ。そして、TV放送版でもこの部分は伏見さんのギターが"静かに目立っていた"が、今回は松江さんのギターが火を噴いている。リズムチェンジ前の前半部分のギターソロ以上に白熱したものだろう。これだけでも十分な熱気なのに、さらにダメ押しで松江さんの隣にいるゴンドウさんが途中からフリューゲルホルンにエフェクトをガンガンかけ始めるのだから、もう手を叩いて喜んでしまった。
「やりすぎでしょう」と思うほど盛り沢山の曲だが、ラストの着地で綺麗に締められる様子に拍手喝采。
TV放送版:第20回(最終回)
参加メンバー:SKY-HI, LEO(ALI), 荘子it, アオイヤマダ, JUNON (BE:FIRST), RYUKI (MAZZEL), edhiii boi, .ENDRECHERI., ApartmentBand(この回のみギターが松江潤さんではなく伏見蛍さん)
※この曲の映像はHulu版でのみ視聴可能で、Youtubeには無し。
1時間に満たないセッションだったが、どの曲も濃い内容で、冗談では無く本当に、一度再生を始めても2曲ぐらいで一旦小休憩を挟まないと次に進めない程だった。
私は本当に今回出演されている各グループの事を全然知らなかったので(この番組をきっかけにやっとBMSGの方々を知ったぐらいだ)、この後のグループ毎のライブを観て各グループのカラーを知った(と同時に、ボーカル&ダンスグループ、という共通点以外は本当にバラバラなグループが集まるイベントなのだと知った)。各グループのライブを観てから再度Apartment B Special Sessionを観ると、番組レギュラー陣だけではなくゲストが活きる構成とセットリストだったのだな、と気付く。
今回は現地に行けなかったことだけが悔やまれるので、是非シーズン2と、再びライブという形での復活を願うところだ(日高さんにリプしないと)。