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『ApartmentBand』が好き
日テレで5月1日より放送を開始した『Apartment B』。SKY-HI日高さんが率いるBMSGの所属メンバーを中心としたアーティストやクリエイターが集う音楽番組で、セッションライクでラフなライブ演奏パートが一つの目玉としてアナウンスされている。
全国放送では無いが、日テレでの放送が終了した直後にTVerでの配信が開始される為、エリア外でも観る事ができる。初回放送の5月1日は日テレでの24:59~の放送が終了後、25:29から配信されたので、本放送から遅れること30分後には視聴可能だ。
普段滅多にテレビを観ない(なのでTVerの視聴方法も分かっていなかった)のに今回この番組が気になったのは、番組の目玉であるライブパートのハウスバンド「ApartmentBand」のバンマスを、ゴンドウトモヒコさんが務めるとのアナウンスがあったから(因みに本noteの直近の記事は全てゴンドウさんのお話です・・・)。
ハウスバンドのメンバーは、ドラムがオータコージさん、ベースがLÄ-PPISCHのtatsuさん、ギターが松江潤さん、と、ゴンドウさんが普段から活動を共にされている顔ぶれ。私から見ると、ゴンドウさんをきっかけにその演奏に触れる事が出来た方々ばかりだ。
ハウスバンドと共に、アパートメントを舞台にBMSG所属メンバーや、ALIのLEOさんや荘子itさんがセッションを繰り広げる・・・どんな様子なのかさっぱり見当がつかないでいたが、放送直前に日経クロストレンドに掲載された日高さんのインタビューを読んでいると、『tiny desk concerts』のイメージとのこと。分かりやすい例えだった。
とにもかくにも、こんな機会でも無ければ地上波の音楽番組を観ることもBMSGのアーティストに触れることも無いかもしれない。ゴンドウさんをはじめとしたハウスバンドの方々を毎週という頻度で映像で観る機会だって、とても貴重だ。
そんな訳で5月1日の初回放送、24:59から日テレでの本放送を観ていた他のゴンドウさんファンの、動揺を隠し切れないリアルタイムのメッセージやポストを眺めつつ、首都圏より遅れること30分、TVerで視聴を開始。
・・・これは、かなり面白いかもしれない。というか、ApartmentBand、思ってた以上に映る(そりゃあリアルタイム視聴組が動揺する訳だ)。かっこいい!
ということで、前置きが長くなりましたが、ライブパートを観た感想(というか、ApartmentBand 良い!という呟きに過ぎないのですが)をこちらに書くことにしました。まずは初回分。どうやら全20回あるそうなので毎週は書ける気がしませんが、気になる回があれば追記していく形にします。
あと、毎月アップしている他の記事よりもライトに書くつもりなので、かっこいい、好き、良い、の連発になりそうです。
第1回 2024年5月1日 BE:FIRST「Boom Boom Back」
初回放送はBE:FIRSTが登場。放送当日にtatsuさんやオータさんがBE:FIRSTの曲をセッションした旨をポストされていたのだが、放送開始直後、Xで「#ApartmentB」のタグを追っていたら、演奏パートが冒頭にあること、そして曲が「Boom Boom Back」であることが分かった。
改めて、まずは原曲を。ライブの締めの定番曲なのだろうか、ライブ映像もかっこいい。
さて、実際のセッション。冒頭、JUNONさんの生の口笛でスタートした時点で驚いてしまった。皆がいる場じゃなくて、離れた所から口笛を吹きつつ歩いてきて、輪に入ったところで(ALIの)LEOさんがこなれた感じで手拍子でリズムを取り、そこにBE:FIRSTのメンバーも手拍子で入ってくる。最初のたった10秒弱のこのパートだけで、ラフにその場のノリで音楽が始まる空気が伝わってくる。
そこからカウントで曲が始まる瞬間オータさんが映る。ここから全編通して、オータさんの臨場感溢れるドラムを捉えたカットが多い。「わ、今のオータさん、かっこいい!」と思う場面が何度もある。そして、松江さんのギターのリズムが始まり、音源では口笛になっている部分を荘子itさんのギターとゴンドウさんのフリューゲルのユニゾン(じゃない気もしたが細かく音取り出来なかった、すみません…)で重ねる、というイントロ。おお、バンドサウンドだ、と目も耳も釘付けになる。ゴンドウさんは、今回はミュートやエフェクターは使っていない。
Aメロからtatsuさんのベースも入ってくるが、音源にもある4小節目に来る1音ずつ下がっていくフレーズのかっこいいこと。このフレーズの時に一瞬映る、下から捉えたようなカットにも目が行く。Aメロ後半は全パートでのセッションになるが、原曲同様、リズムの軸はしっかりしつつも、ボーカルが自由に歌える余白がたっぷりあるように聴こえる。
ここからBメロに向かう部分もtatsuさんから目が離せない。Bメロの一音目に向かってグッと入っていくところと、そのペースのまま他のパートよりも前に出て全体をリードしていくように見えるのがかっこいい。ここから、リズム隊がソリッドさを保つ一方で、ボーカルと共に横の流れを作っていくのが音源には無いフリューゲルのオブリガートだ。思わず「これはめっちゃゴンドウさんっぽい!」と叫んでしまった。一度聴くと、原曲にもあるんじゃないかと錯覚してしまうほど耳に残る。
そして、またもや「オータさんかっこいい」ポイントが。Bメロ終わり、8小節目の2拍目でクラッシュを一発鳴らす部分がばっちり映る。その2拍後、サビの入りでバスドラと、RYOKIさんのボーカルが重なったところの重さも堪らない。この重さがあるからこそ、サビで再びAメロと同じラフさに戻る緩急差も楽しめる。
2回目のAメロ冒頭はアカペラで歌い繋ぐSHUNTOさんとRYUHEIさんの姿に息を飲む。そして、その直後の松江さんがかっこいい!今回、松江さんは全編通してあまりアップで映らない為、ここは何度も再生してしまった。そこから引き継ぐようにAメロ2周目に入る部分のオータさんのドラムがバシッと決まるのも気持ち良い。
そこからBメロ、サビと進んで、Cメロへ。Bメロ同様にフリューゲルのオブリガートが入ってくるが、ApartmentBandにはキーボードやシンセが無いので(今後ゴンドウさんが弾く可能性も無いとは言い切れないが)、こういった横の流れや音の広がりを作るにはホーンの響きが効いてくるのかな、と感じた。
ラストのサビは全パートが一段上の盛り上がりを見せるが、特にアウトロに向かう最後の1拍でのオータさんのフィルがめちゃくちゃかっこいい(ここはALIのLEOさんのキメ所でもあったので映像では映らなかった)。こういうのも勿論音源には無いし、セッションならでは。
アウトロは松江さんと荘子itさんのギターソロにゴンドウさんも負けじとフリューゲルで応戦していて、あと1周聴きたい、と思わせつつも原曲通りの尺で終了。
原曲はしっかりと大きなステージで歌う事を前提に作られているように聴こえるが、ApartmentBand版は、「生っぽさ」は勿論だけどそれ以上に、もっとスケールをコンパクトにして「身近さ」を引き出せるようなアレンジになっていたのかな、と思う。
ゴンドウさんのこういう音楽番組でのアレンジというと、やはり『ムジカ・ピッコリーノ』を引き合いに出すべきなのだろうけど、私は同作の音楽については全ては聴き切れておらず(少しずつ聴いていこうと思って、ゴンドウさんが担当されていないシーズン1、2を含めて全作品のサウンドトラックを購入しているが…)。むしろ、ムジカにおけるゴンドウさん流のポップスのリアレンジや再解釈みたいなものをまだ理解できていなかったので、それならば今回のApartment Bで少しずつ見ていきたい、という想いもある(というか本来はそういう記事を書けたら、と思っていたのだが、自分にそこまでの力量が全然無くて、かっこいい、の連発に留まっているというのが本記事だ)。
ただ、朧げではあるがムジカの音楽に対する印象こそ、音楽やアーティストがすぐそこに在るという「身近さ」だった。ムジカの場合は教育番組だったが、Apartment Bもまた、音楽をラフに楽しむ、というムジカと少し似たコンセプトがあると思うので、その点については今後も着目していきたいと思う。
余談: 愚音堂流の tiny desk が観たい
番組の話から離れてしまうのだが、冒頭の日高さんの記事で挙げられていた tiny desk concerts 。このイメージでふと思い浮かんだのが、ゴンドウさんのスタジオである studio no-nonsense で、ApartmentBand がセッションをしているような様子だ。このスタジオ、ご本人のSNSや各種記事などで写真や動画を見る限り、所狭しと様々な機材や楽器が並んでいて、此処で 撮影されたtiny desk っぽい演奏動画があれば面白そうだなと思う(リンクの写真はApartmentBandメンバーでは無く、毎年開催されているクリスマスキャロルのライブのリハのものかと思うが、スタジオの様子がよく分かる写真かと)。
ゴンドウさんのソロでも良いのかもしれないが、数名で集まってリラックスしてセッションする、みたいな空気感が観てみたい。ApartmentBand とか、愚音堂所属の他のアーティストとか。言うだけならタダなので、観てみたいなあ、と呟いておく。
Youtubeリンク(2024/5/29追記)
2024年5月29日、BE:FIRSTの公式チャンネルにて、本セッションの動画が公開された。放送を見逃した方はこちらだけでも是非。
第3回 2024年5月15日 BE:FIRST 「Grow Up」
記: 2024/5/26
第3回は、第1回と同様にBE:FIRSTの楽曲が演奏された。曲は、2023年9月13日リリースのシングル『Mainstream』のM-3「Grow Up」。元々タイトルトラックしか知らなかったのだが、本番組の初回放送前にBE:FIRSTの曲を幾つか予習がてら聴いてみた際に、この曲かっこいいなあ、と思っていた曲だった。
トラックがかっこいいと思ってクレジットを探したら、リリース当時、X上で公開されていた。また、放送当日に荘子itさんがポストされていたが、プロデュースを務めたMONJOEさんと荘子itさんは同級生らしい。UK Garage、2step、といったところだと思うのだが、バンドサウンドだとどうなるのか。今回は放送直前に曲を知り、ああ、あの曲か!と思いながら翌日にTVerで視聴したのだが、事前に曲が分かっているのであれば、バンドサウンドだと何処が見せ場になってくるのか予想したうえで視聴するのも楽しいのかもしれない。
そういえば、この曲はシングルの3曲目だからなのか、YoutubeにはオフィシャルのMVやパフォーマンス動画がアップされていないように見受けられる。今回、このようにライブ演奏が放送されたのはファンの方にとっても嬉しいものだったのだろう。
2023.09.13
— BE:FIRST (@BEFIRSTofficial) August 21, 2023
4th Single ‘Mainstream’
M1. Mainstream
M2. SOS
M3. Grow Uphttps://t.co/vMSqv9czYX#BEFIRST#BF_Mainstream pic.twitter.com/g1tOJGzMdZ
今夜の放送で披露するBE:FIRSTの"Grow Up"は、僕が初めて一緒に音楽を作り始めた中高の同級生MONJOEがプロデュースした曲です。
— 荘子it(Zo Zhit) (@ZoZhit) May 15, 2024
あの頃を思い出しつつ、彼の曲を僕がこうしてテレビで演奏する今、「僕等は何も変わってない そのために変わっていく」と歌う原曲の世界観がとてもしっくりきたので、#1… https://t.co/FWfMg54jsB
原曲はスマートな始まりだが、オータさんのカウントから始まるセッションは、松江さんのギターもゴンドウさんのフリューゲルホルンもギラギラとしている。1小節毎にはっきりと鳴らされるギターの音色に、トランペットほど鋭利では無いフリューゲルのミュート音の厚みが重なることで、たった20秒足らずで原曲とは正反対の印象を決定づける。また、このギターの音色によって私は、原曲のトラックで聴き逃してしまっていた4小節目と8小節目のコードの差を知った。
そのイントロに重なるように(BE:FIRSTの)LEOさんが歌い始めるが、こちらも原曲と比べると、バンドに呼応するかのように深みを増しているように聴こえる。原曲ではAメロの2周目もコードとボーカルだけの静かなパートが続いた後、Bメロでがらっとスイッチングするかのような展開だが、今回はRYUHEIさんのボーカルを下支えするかのようにtatsuさんのベースが鳴り始め、Bメロに向かってサウンドを推し進めていく。
Bメロからはオータさんのハイハットとスネアのリズムが細かくなり、松江さんもリズムへとシフト、ゴンドウさんのフリューゲルも入ってきて次第に盛り上がり、疾走感のあるサビへと突入する。そこから先は、とにかくtatsuさんのベースがかっこいい!原曲は重心が低めでベースが目立つが、バンドアレンジも主役はベースだと言っても過言では無いだろう。そして、原曲ではボーカルに沿うように鳴っているアルペジオはゴンドウさんのフリューゲルで奏でられる。原曲とは対照的に短めの音価で渋く鳴る音は、(ALIの)LEOさんのリラックスしたボーカルと共に、JUNONさん・RYOKIさん・SHUNTOさんのファルセットにスパイスのようなアクセントを添えているように思う。
2回目のAメロ冒頭は、バンド側はサビの勢いを引き継ぎつつ、そのうえで口火を切るようにSOTAさんのラップがハマっていくのが気持ちいい。因みに、初回の「Boom Boom Back」同様、Aメロ1周目終盤のキメのところで松江さんを捉えたカットがあるのだが、このアングルの映像はもう少し増えても良いのに、と細々と思う。
このAメロ部分は、「一時代築く深夜一時台」という番組そのものを象徴するリリックを含む、本セッションオリジナルの荘子itさんのラップパートも見どころだ。初回放送時のセッションは原曲の尺通りで終わっていたが、こういうコラボが観たかった。原曲の構成からはみ出したセッションやソロパートはもっとあっても良いとも思う。
この辺りは原曲同様、8小節単位で緩急がしっかりつくアレンジでBメロ、サビと進んでいくが、サビでの松江さんのアルペジオやゴンドウさんのオブリガードは、「前しか見ていない」(セッション後の荘子itさん談)筈のこの曲に抒情的な揺らぎを醸し出している。そういう風に受け取るならば、この後のCメロのMANATOさんのパートは揺らぎを振り切る決意表明のような8小節間なのだが、ここに向かうまでのサビのラスト1小節で入ってくるtatsuさんのベースラインも聴きどころ。原曲ではこの2番サビからCメロへの切り替えはかなりスムースなものだが、本セッションではこのベースで勢い付けているのが特徴的だ。
そこからCメロのブレイク部分に入る冒頭1拍目は上述のtatsuさんのベースを皮切りに、オータさんのドラムを土台にバンド全員の音圧がグッと上がるのだが、これがMANATOさんのパートをリードする役割のように聴こえた。Cメロ後半、疾走感を取り戻しつつも再度静かなBメロへと着地するラスト2小節間での松江さんとtatsuさんそれぞれのフレーズも聴き逃せない。
終盤は、Bメロ、サビ、アウトロと「前しか見ていない」サウンドだ。サビのラストのオータさんをもう少しアップで映してほしい、等とも思いつつ、やはりベースがどんどん前へ出るうえにしっかり映るので最後まで見逃せない(特にアウトロの3、4小節目が好きだ)。この人数でしっかりアウトロまで締めた後、たった一人でラストを担うRYOKIさんの歌いっぷりにも拍手。
原曲がスマートで、小節、パート単位でスパッと切り替わっていく曲なのに対して、セッション版はギラついたサウンドであり、段階的な場面転換も多かったように思う。それによって同じリリックでも曲の印象がガラッと変わるので、好き嫌いが分かれるのかもしれない。原曲が好きだっただけに、かなり別物だな、と思いながらもバンド演奏ならではの1つ1つのフレーズや音に注目出来たのが面白くて、私はこちらも好きだった。
最初は、え、この曲バンドでやるの?とも思っていたのだが、第1回とは違い、原曲との差が如実に出る曲だったので、その点でも良い選曲だった。
次回辺りからBE:FIRST以外のアーティストもセッションパートに登場するのかなと期待している。予習、しておかねば・・・。
Youtubeリンク (2024/6/12 追記)
2024年6月12日、本セッション動画が公開。決して派手では無いが、聴けば聴くほど味のあるセッションを何度でも。
第20回 2024年9月18日「ApartmentB Special Live」
記: 2025/1/8~10
最終回となる第20回、久しぶりにApartment Bandが登場し、全4曲のうち3曲に参加。今回はギターが松江さんから伏見蛍さんに交代しており、また楽曲によってメンバーが増えている。
なお、1月12日~13日の2日間にわたって開催される『D.U.N.K. Showcase in K-Arene Yokohama』の初日に行われる「Apartment B Special Session」では再び、松江さん、オータさん、tatsuさん、ゴンドウさんの布陣となるようだ。
楽曲ごとの感想は、第1回と第3回の感想が冗長気味だったので、今回は手短にまとめます。
ALI「LOST IN PARADISE」
セッション尽くしの最終回は、番組MCを務めるLEOさんのプロジェクト、ALIの「LOST IN PARADISE」からスタート。
番組開始当初、ALIについては何となく知ってはいるけど、曲はちゃんと聴いたことないな、と思って調べて最初に聴いたのがこの曲だった。『THE FIRST TAKE』の動画なども有名なのだと思うが、ちょうど2023年の『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL』は第5回放送時のP-FUNK特集の際にも話題に上っていたので、こちらを。
因みに、この感じは私などが言うまでもなくCHICの「Good Times」だよなあ、と思っていたら(というかリファレンスはCHICに留まらないのだろうけど)、曲間でそのまま「Good Times」をやるくだりがある。
セッションの参加メンバーは以下の通り。BMSG所属のラッパー、edhiii boiさんは、なんとまだ17歳の高校生だそうだ。
LEO (from ALI)
アオイヤマダ
edhiii boi
ギター: 伏見蛍
ベース: tatsu
ドラム: オータコージ
ユーフォニアム: ゴンドウトモヒコ
トランペット: Luis Valle
サックス: Ryoji Ihara
トロンボーン: Yusuke Enomoto
見ての通り、以前と違ってホーンがユーフォニアムを含めて4管編成となっている(庵原さんと榎本さんについては存じ上げなかったのだが、ルイス・バジェさんは、tatsuさんが参加されているGANGA ZUMBAのライブ映像で観た事があった。この後に登場する.ENDRECHERI.のサポートもされているそう)。
番組でゴンドウさんがユーフォニアムを吹くのも初めてのことだ。
以下、ここが良かった!とか、気になる!と思ったポイントを列挙していきます。
冒頭のユーフォニアム
いきなり意表を突かれたのがイントロ部分。私はゴンドウさんの音楽のリスナーなのでポップスでユーフォニアムが使われる事にもすっかり慣れている筈だが、そんな私の耳でも、「ん?ユーフォから始まるの?!」と驚いてしまった。イントロ後半のホーンセクション
冒頭のユーフォニアムに合流するように3小節目辺りから他のホーンセクションが入ってくるのだけど、イントロ後半(5小節目以降)からサックスだけが既にソロのような動きをしており、早速このセッションを華やかに盛り上げている。
あと、曲全体に言える事なのだが、トランペット、サックス、トロンボーンの3管編成にユーフォニアムが加わることで中低音域が分厚くなっているのだけど、これがゴンドウさんが出演されていた頃の『ムジカ・ピッコリーノ』におけるポップスに近い聴き心地になっている(そういえば、出演時期は違うが、伏見さんもムジカ出演メンバーだ)。edhiii boiさんのラップ
Hulu版の限定パートで語られていた事なので詳細は割愛するが、この曲にedhiii boiさんを迎えたのはLEOさんの希望によるものだそうだ。その期待に応えるべく繰り広げられるキレの良いラップ、改めて、まだ17歳という事実に震えてしまう。Bメロのユーフォニアムのオブリガード
この辺りからホーンセクションとユーフォニアムが別の動きをする場面が増えてくる。
キーボードやシンセが無い分、Bメロ辺りからユーフォニアムの存在感が増してくるのは過去のBE:FIRST楽曲と同様だが、今回のアレンジはもうとにかく「ユーフォがおいしい」のである。全体を通して…ギターのカッティング
1番サビで伏見さんがアップになるカットがあるのだが、ほぼ全般を通してギターのカッティングが気になる曲だ。1回聴いてギターに耳が行かなかったとしても、2回、3回と聴けば(特にイヤホンやヘッドホンだと左側から聴こえてくる)次第にギターの存在感が増していく。サビ後のアオイさんパート裏のトロンボーン
アオイさんのポエトリーリーディングの勢いをさらに煽るようにホーンセクションが入ってくるのだけど、トロンボーンのグリッサンドの音も聴き逃せない(ユーフォニアムと重なっていて、少々埋もれ気味なのが惜しい…)。2番に入る前の4小節間におけるサックス
イントロ同様、ここも乱れ打つようなサックスソロがかっこいいのだけど、せっかくだから映してほしかった…。2番AメロのLEOさんボーカルとホーンセクション
直前4小節の勢いとは裏腹に、少し抑えて歌うLEOさんのボーカルは聴きどころ。あと、LEOさんの真後ろにいるホーンセクションの御三方が踊っているのが可愛い。2番サビの「Lost in Paradise~」から、2周目の「Tokyo prison~」部分のユーフォニアム
この辺りもユーフォニアムが目立つ。「Tokyo prison~」のくだりは、それまでは他のホーンセクションと同じ動きをしているのだが、ここからは分かれていくのがエンディングへの予兆のように聴こえる。再度のアオイさんパート裏でのハイノートのトランペット、そしてベースとドラム
ここまで来るともう終盤なので、どんどん勢い付いていてこれでもかと鳴るトランペットが耳から離れなくなってくる。
そして、この部分はベースとドラムが2小節毎に裏から入ってくるのが良いのだけど(1回目のアオイさんパートでも同様)、特にこの2回目のラスト1小節のドラムがこの曲の中で一番かっこいい(例によって、なんで映してくれないの、とも思いつつ)ラストのサビ「Lost in Paradise~」からエンディング
最初の2小節、短くもソロのようなサックスのダメ押しのフレーズが舞う。全パートが120%を出し切るような8小節間だが、LEOさんのボーカルを含めたラスト1音で綺麗にまとまる着地点に拍手喝采。
今までApartment Bandが関わってきた2曲と違い、音数が多くごった煮な印象のサウンドでもあるので、観てるこちらとしては、誰がどこで"おいしい"ところを持って行くのかを追うのが楽しいアレンジだった。
また、これはもう完全にゴンドウさんのリスナーとしての意見なのだけど、ホーンセクション3管とユーフォニアムで棲み分けされているのが、ユーフォニアムという楽器の特性を活かし、しっかりと聴くことの出来る編成でもあり、とても良かった。
そして、Hulu版限定パートでのみ観る事ができる場面だが、LEOさんがこの曲、パフォーマンスに懸ける意気込みとこだわりは凄まじかった。有観客となる『D.U.N.K. Showcase』のステージではさらに熱の籠ったライブになるのだろう。
.ENDRECHERI.「MYND」
日高さんとBE:FIRSTのJUNONさんによるSKY-HI「クロノグラフ」のセッションを挟み、3曲目が.ENDRECHERI.とのセッションだ。第6回のセッションを観て、.ENDRECHERI.とGakushiさんとApartmentBandのセッションが観たいなどと独り言ちていたら、最終回で実現していた。
原曲はこちら。あまりP-FUNKは詳しくないので(そのくせ、去年のGeorge Clinton来日公演はしっかり観てきたが…)的外れな事を言っていたら申し訳ないのだが、サビの辺りが特にP-FUNKっぽいな、と思う曲。
セッションの参加メンバーは以下の通り。
.ENDRECHERI.
SKY-HI
キーボード: Gakushi
ギター: 伏見蛍
ベース: tatsu
ドラム: オータコージ
フリューゲルホルン: ゴンドウトモヒコ
私自身はよくSkoop On Somebodyのライブで観ているGakushiさんだが、ライブだとどうしても距離が遠くなる(サポートメンバーなのでステージ後方に居る)ので、映像で観るのは少し新鮮だった。以下、感想を。
冒頭のドラムソロ
もう言うまでも無く、だが、めちゃくちゃかっこいい。原曲だとシンセの音が重ねられているが、完全にドラムソロになっているのも良かった。Aメロ以降のキーボードとギター
全体を通して、キーボードとギターがあまり波を作らずに一定のエネルギーを保ちつつ、ずっと大きい音で鳴り続けている、というのはこの曲の特徴の一つだと思う。実は鳴ってる…フリューゲルホルン
最初、Aメロの裏、遠くで鳴っている16分のフレーズはGakushiさんが弾いているのかと思ったのだが、よく聴いたらフリューゲルホルンだった。あまり聴き取れておらず申し訳ないのだが(そもそも、ゴンドウさんが演奏されているからこのnoteを書き始めたのに…)、恐らくエフェクターが使われている。この番組の他のセッションではエフェクターはあまり使われていないので、その点では、少々埋もれ気味なのが勿体無いようにも思う。Aメロ2周目の前半のベース
原曲ではベースは結構動いていて目立つのだけど、今回のtatsuさんのベースは屋台骨のような印象だ。だが、3小節目辺りで動くところは観てるこちらも唸ってしまう。例によって、映してよ、とも思うが、ベースを弾くジェスチャーをするSKY-HIの姿も良い。Aメロ2周目のキメの直前
上記のベースが動いた後で入ってくる三連っぽいキメの部分、これに入る直前(4小節目の1、2拍目辺り)のドラムが曲の勢いを一旦着地させるようなイメージで、この直後のキメへの踏み台に鳴っているように思う。サビのキーボード
ここでは(Gakushiさんから見て)手前側のキーボードからオルガンのような音が鳴っているのだが、全編に渡ってアクセル全開なこの曲に、少しだけ空気が緩む唯一のポイントを与えているのがこの音なのでは。ラップの裏でのギターとキーボード
再びAメロ、今度はSKY-HI→剛さんとラップで繋いで行くのだけど、序盤よりも目立つギターと、各4小節目の2拍目辺りでガツンと入ってくるキーボードが、ラップを煽っているように聴こえる。ラップ~ボーカルパートと歌い続ける剛さん
SKY-HIのラップが終わった後からノンストップで歌い続けながら、要所要所にあるキメどころにボーカル(ラップ)がバシッとハマるのが最高だ。再び、三連のキメに入る直前のドラム
またもやこの直前(2拍目)のドラムが、先程よりもさらに細かく入ってくるのがたまらない。Bメロのベース
それまでの勢いを加速させるようにグイグイと8分で鳴っているのだけど、特に、ラスト2拍で下降していく部分が、直後の展開に向けて全体をリードするような印象だ。Bメロラストのキメ
(全然テンションが違う例えで申し訳ないのだが、D'Angeloの「Brown Sugar」のイントロ2拍と同じ動きの…絶対にもっと近い例えがある筈なのだが何も思い浮かばず…なあの部分です)
全パートがガツンとかます場面なのだが、やっぱりドラム。何かイベントがあればドラムに注目、の曲である。この4拍のフィルも言わずもがな。Cメロ(ラストサビ)のフリューゲルホルン
この部分のフリューゲルホルンは原曲でサックスとトランペットのような高音で鳴っている部分を再現していると思うのだが、かなり細かく動いていて、ここも、剛さんとSKY-HIの掛け合いに応戦するぐらい、もう少し聴こえていたら、とも思う。Cメロのドラム
剛さんとSKY-HIの掛け合いのパートである1周目、剛さんのギターソロである2周目と、計32小節あるのだが、8小節が終わる毎に入るフィルインや、2周目の後半で入ってくるロールなど、最後の最後までドラムが裏の主役のような立ち位置だ。
原曲は各パートが細かく動きながら出たり引っ込んだりするようなイメージだった(私は、この音作りに剛さんが第5回の放送でお話されていた"雑味"を感じた)のだが、それに対して今回のセッションは敢えて手数は少なくどっしりと構えたうえで、ドラムで緩急をつけていく、というものだったと思う。
冒頭に書いた通り、.ENDRECHERI.とApartmentBandのセッションが観てみたかったのだけど、ApartmentBand流のFUNKってこうなるのか、という気付きも含めて楽しいセッションだった。
「Theme of ApartmentB」
ラストは大人数で9分ほどのセッションで大団円。この曲は元々、第18回で、SKY-HI、LEOさん、荘子itさん、アオイさん、Novel Coreという顔ぶれで荘子itさんが作ってきたトラックにラップとボーカルを重ねて作られていたもの。このトラック自体はイントロ部分を含む要所要所で使われているようだが、基本的にはレゲエっぽい曲調のシンプルなセッションとなっていた。
セッションの参加メンバーは以下の通り。
SKY-HI
LEO (from ALI)
荘子it
アオイヤマダ
JUNON (from BE:FIRST)
RYUKI (from MAZZEL)
edhiii boi
ギター: .ENDRECHERI.
ギター: 伏見蛍
ベース: tatsu
ドラム: オータコージ
フリューゲルホルン: ゴンドウトモヒコ
直前のトークコーナーでも触れられているが、ここに来てアパートの住人が増えたということで、MAZZELのRYUKIさんが初登場。そして、.ENDRECHERI.こと剛さんは本セッションではギタリストに徹しているのだが、(普段の活動をあまり存じ上げないのだが)かなり貴重なのではないだろうか。以下、感想を。
序盤のバース部分で見えてくるバンドサウンドの骨組み
シンプルな構成の曲なので序盤で骨組みがしっかりと見えてくる。
先ずは何と言ってもtatsuさんのベース。ベースを聴くだけでも体が自然に揺れるような、このセッションの要だ。
続いてドラム。ベースと共に全体の重心を低めにグッと推し進めているような印象だが、この部分のようにフロントマンが誰も居ない箇所ではハイハットがかなり細かく刻まれているのが聴こえてくる。
ギターは左側から聴こえてくるのが伏見さん、右側が剛さん。伏見さんがリズムパートのような役割を担うのに対して、剛さんは隙間を縫うようにフレーズを入れてくる。
このバンドサウンドの上に、ゴンドウさんのフリューゲルを含めたフロント隊のパフォーマンスが重ねられるという構成だ。バース部分のフリューゲルホルンソロ
直前のLEOさんの煽りに乗って最初に見せ場が回ってくるのはゴンドウさんのフリューゲルホルン。正確に焦点を定めたかのような(リスナー的には"いつもの"と言っても良いだろう)真っ直ぐなフリューゲルホルンが鳴り響く。主役でありつつ主張し過ぎないフリューゲルホルンの傍らで、ベースやギターが緩急を添える。剛さんが入れるギターのフレーズと、4小節目の3、4拍目で動きを見せるベースは、映像でもしっかり映っているので要注目。JUNONさんのサビ
このサビ部分は第18回のレコーディング時には出てこなかったパートだと思うのだが、後付けされたのだろうか。そうだとしたら、歌詞も含めてどなたが作られたのだろう。
私はこの番組で初めてBE:FIRSTの皆さんの歌声を知り、それでも一番聴いてるのはApartment Bandとのコラボセッションの2曲のYoutubeなので、こういう少し気怠く熱のあるメロディを艶っぽく歌うJUNONさんは何だか新鮮に感じる。荘子itさん→SKY-HIのバース
ラップに対する感想じゃない気がして申し訳ないのだが、荘子itさんは低めの声なのに対して、SKY-HIは高めな印象なので、そのコントラストが良いなと思う。始まったばかりだと思っていたのに、もう終わるのか、としみじみ。ところどころでラップに応えるように声を出したりパフォーマンスをするアオイさんの姿も見どころだ。LEOさんのサビ
JUNONさんとはまた違って、この曲を何年も歌い続けてきたかのような風格のLEOさん。「君のハートに火をつけて」と歌いながら剛さんにギターソロを振るのも良い(そして、LEOさんの方を一切見ない剛さんもまた良い)。.ENDRECHERI.のギターソロ
このセッションでの剛さんは(一応マイクはあるものの)本当に全然歌わなくてずっとギタリストであり、ソロだけでなく各バースでラップに掛け合うようにバッキングする様子も含めて、セッションギタリストなのだな、と思った。このソロ部分は、後半の細かいフレーズが特にかっこいい。
あと、この裏でのフリューゲルホルンのバッキングだが、特にラスト2小節辺りのフレーズがとてもゴンドウさんっぽい(METAFIVE辺りが好きな方なら分かって頂けるだろうか)。edhiii boiのバースとベースライン、フリースタイル好き嫌い色々
17歳のラスト高校生が放つ起爆剤。お邪魔しますと言いつつもその場を掻っ攫っていくような存在感だ。このラップと同時に、ここだけベースラインが少し変わっていて勢いが増すのも良い。さらに、効果音のような剛さんのギターは映像も含めて注目。
フリースタイルが嫌いだったと言えば、俺も大嫌いだったと返す荘子itさんと、最初から大好きだったというSKY-HIが乗ってくる。さらにこの裏で右の隅の方に剛さんが映るのだが、ここで凄く細かいフレーズを入れているのが見える。
edhiii boi、最後は乾杯の音頭を取りつつ、まだジュースなのが17歳らしくて微笑ましい。アオイさんの独白パートと、RYUKIさんとのダンスパート
アオイさんの細やかな動きのパフォーマンスと独白のような語り、そしてバンド側の浮遊感のあるサウンドの組み合わせは、セッション随一の見せ場であり、他の番組やアーティスト、ミュージシャンによるこの手のセッションでは見ることが出来ないものだったと思う。ギターやフリューゲルホルンと、シンセっぽい音が混ざって溶けていく中で、アオイさんが発する「今日でここ出て行かなきゃいけないの?」という台詞が特に好きだ。
この裏でオータさんが一旦ドラムから離れ(この間、ドラムセット横に置かれたエフェクターを操作されていたようだ)、代わりにSKY-HIがドラムセットの前へ。バンド側がグッとボリュームを押さえる中、大家さんことSKY-HIがドラムを叩くと、新しい住人ことRYUKIさんが躍り出る。溢れんばかりの眩しい笑顔と、長くは無いソロパートに全てを込める姿が印象的だった。
そこから自然にアオイさんと二人でのダンスパートへと移り、再度アオイさんお一人でのパートへ、という流れも良かった。再びバースへ
オータさんがドラムセットに戻り、浮遊感を断ち切るような一音でバースへと戻る。ここもMC、ラッパー組では無くアオイさんが前のパートからそのままリードしていくのがかっこいい。
そのままフリューゲルホルンのソロ、ブリッジと続きセッションも終盤へ。ラストサビでのJUNONさんとLEOさん、少しずつ目立ってくるギター
言うまでも無く、かもしれないが「次の季節へ向かおう」の部分でハモるのが聴いててとても気持ち良い。
そして、ここまであまり触れてこなかったのだけど(すみません…)、この辺りから伏見さんのギターが影の主役のように聴こえてくる。上記のハモリが終わって次の小節へ移る直前2拍や、その4小節ほど後にもう一度入ってくる、さらりと滑らかなフレーズはエンディングらしさが漂っている。ApartmentBand 最後の見せ場
ブレイクを挟んで16ビートにリズムチェンジするアウトロ部分は、突破口を開くようなオータさんのドラムで始まり、シンプルながらも時々(8小節目の終わり頃など)細かくうねるように鳴るtatsuさんのベース、フロント隊に応戦するようなゴンドウさんのフリューゲルホルン、どのパートも文句無しにかっこいいが、この曲の中で一番かっこいいと思ったのは9小節目以降の伏見さんのギター。軽やかに、しかし、ここまでため続けたエネルギーを放出するかのようにも聴こえるギターのフレーズは、聴いていて本当に痺れそうになる(アップで映る部分も注目)。
長い曲で構成もシンプル、コードチェンジもそこまである訳では無いのに、都度気になるポイントがとにかく多いセッションだった。ドラムとベースの土台で体を揺らしつつ、フリューゲルホルンの音色に耳を傾けつつ、なのだが、そのうえでギターの小技に毎回唸る、という9分。あまり想像していなかったギタリストとしての剛さんと、今回だけの参加だった伏見さん、お二人とも主役級だったと思う。
番組テーマ曲という位置付けなので、恐らく『D.U.N.K. Showcase』でも披露されるのではないかと思うが、長いセッションだったとしてもきっと体感は一瞬のような演奏になるのだろう。