ゴンドウトモヒコさんのソロアルバムが好き(Vol.24)
前回から少し期間が開いてしまいましたが、音楽家のゴンドウトモヒコさんがソロ名義でリリースされているアルバム、Vol.24の感想です。
ソロアルバムに関する公式情報は以下を参照してください。
なお、本記事投稿時点での最新作は2024年7月11日リリース『untitled』となります。
Vol.24『24 Seasons』
配信リンクはこちら。
2024年6月2日リリース。24作目だからか「二十四節気」をテーマにした作品であり、ソロワークス最多の24トラック収録、勿論24トラック全てが二十四節気名である(トラック名がいずれも英語表記なのは、意図されたものなのかは不明)。これまでもリリース時期を踏まえて季節をコンセプトとしたアルバムはあったが、それらのダイジェストのようでもあり、ある意味「ゴンドウトモヒコ ソロワークス 導入編」としても聴ける1枚だ。
いつもは始めから終わりまで通して聴きながら流れで書く感想文も、今回はトラック毎に区切りながら、1曲ずつ簡単に書いていこうと思う。なお、恥ずかしながら私は二十四節気についての知識があまり無く、各見出しに記載した新暦の日付は、以下の国立国会図書館のページを参照した。
1.「Sho-kan」(小寒/1月5日頃)
1月上旬にあたる小寒から本作はスタートする。ひんやりとした空気の中に広大な雪景色が広がるようなエレクトロサウンドで、今年1月6日、まさに「小寒」の頃にリリースされたVol.20『Frosthony』の楽曲群に近い感触だ。
2.「Dai-kan」(大寒/1月21日頃)
乾いた空気を思わせるカラコロとしたパーカッションの音が淡々と響く1曲。中盤以降で鳴るトロンボーンも効果音のようで、二十四節気をテーマにした作品なのに、東アジアでは無い何処かエキゾな雰囲気を纏う。
3.「Risshun」(立春/2月4日頃)
冒頭2曲での寒さを吹き飛ばすような、エレクトロファストスウィングと呼べば良いだろうか。まだまだ寒い時期なのに、過剰なほどにハイテンションで春の到来を祝うような曲調が微笑ましい。
4.「Usui」(雨水/2月19日頃)
立春を過ぎたとは言え、体感としては冬である。しとしとと冷たい雨が降り続き、窓や屋根に当たるような音が鳴り止まず、春なんてまだまだ先の話だと言わんばかりの重苦しさが付き纏う。
5.「K-chitsu」(啓蟄/3月5日頃)
寒さと暖かさが交互に来るような時期だが、曲の方もM-4とは打って変わって朗らかで牧歌的だ。珍しく男声コーラスも入ったスタンダードナンバーのような曲で、全体を下支えする少し古びたピアノのような音は今年2月にリリースされたVol.21『NeBuLa』収録楽曲でも使われていたようにも思うのだが、どうだろうか。
6.「Shun-Bun」(春分/3月21日頃)
いよいよ本格的な春の訪れを知らせるような明るい四つ打ちのエレクトロ。ピアノが中心に据えられているのは、M-5のストライドピアノからそのまま季節が引き継がれているようにも聴こえる。
7.「Seimei」(清明/4月5日頃)
お花見シーズンを思わせる笛の音に、おどけた調子のサックスやファゴットのような音が陽気に絡み合う。目に浮かぶ光景に思わず、お酒はほどほどに…と苦笑いしてしまうような1曲だ。
8.「Kokuu」(穀雨/4月20日頃)
季節や時間帯を問わず、日常のワンシーンに添うような1曲。この時期の雨は、1年の中でも数少ない不快では無いものだが、0:32頃からは花々が咲き誇った後の雨のごとく電子音が降り注ぐ。
9.「Rikka」(立夏/5月5日頃)
1分未満の短い曲だが、ここから少しずつ夏の気配が漂ってくる。昨年7月にリリースされたVol.14『Autonomy』は夏らしいアルバムだったが、同作収録曲が持つ、ちょっとした冒険が始まるような幼少期の夏を思い出すサウンドがここにも表れている。
10.「Showman」(小満/5月21日頃)
次第に暑さも見え隠れしていく中で、湿度の高さを思わせる重心の低いエレクトロ楽曲。はっきりとした大きい展開は無いが、一定のテンションでひたすら刻まれるビートがクールで、特に好きな曲の1つでもある。
11.「BowShu」(芒種/6月6日頃)
アップテンポな曲が続く中で、やっと一息つけるようなバラード。ユーフォが似合いそうな曲だなとも思うが、メロディを奏でているのは、シンセなのか、それとも、声にエフェクトをかけたように聴こえなくもない不思議な響きで、妙に耳に残る。
12.「Geshi」(夏至/6月21日頃)
おおよそ梅雨本番とも呼べる時期。M-11での穏やかな雨を思わせるサウンドから一転してアップテンポなテクノポップだが、勢い良く電子音が降り乱れる様子は、次第に湿度と暑さを増す中での大雨のようだ。
13.「ShowSho」(小暑/7月7日頃)
夏本番、燦燦と降り注ぐ太陽光を思わせるシンセとフリューゲルが印象的な1曲。夏の海、と言ってもレジャーのようなシーンではなく、都市部の埋め立て地に臨む港湾を思い浮かべるのは私だけだろうか。
14.「Taisho」(大暑/7月23日頃)
真夏、としか言いようのないエレキギターの音色が全体をリードする。時々トリッキーなフレーズに変化しつつ忙しなく繰り返されるギターの音を聴いているうちに、もしかして蝉の声をイメージしているのでは、と気付いた。
15.「Risshu」(立秋/8月8日頃)
大暑の時期にけたたましく鳴くのがセミならば、こちらはヒグラシを思わせるようなイントロからスタートする。物悲しく響くトロンボーンの音色も、夕暮れ時に微かに訪れる秋の気配の様だ。
16.「Shosho」(処暑/8月23日頃)
本作で特に好きな曲のうちの1つ。レゲエのような乾いたギターの音は厳しい残暑を描く一方、その後ろで鳴るエレピには夏の終わりを告げる哀愁がある。夏から秋へとスイッチングするかのように、転調と同時にギターの主旋律が消える1:33以降の静けさも聴きどころ。
17.「Hakro」(白露/9月8日頃)
昼間はまだまだ暑いものの、朝夕はすっかり涼しくなる時期を表すかのように穏やかな曲調だ。朝露が見られる時期の曲になるが、雨や露など、水を連想させる曲はすっきりと電子音でまとめられている事が多い、と気付く。
18.「Shu-bum」(秋分/9月23日頃)
過ごしやすい気温を喜ぶかのように、軽快なトラックとフリューゲルのメロディが駆け抜ける。元は歌ものの想定で作られた、と言われても不思議ではないほどの愛嬌を振りまくが、ラストでひっそりと聴こえる調子はずれのユーフォは何を示しているのだろうか。
19.「Canlo」(寒露/10月8日頃)
M-18の終盤で少しユーフォの音が聴こえていたが、こちらはユーフォを中心に据えた1曲。フリューゲルも重なった豊かで安定感のある音色は、すっかり過ごしやすくなった秋の訪れのようだ。ミニマルでアコースティックなサウンドは、Vol.8『anonymous lounge』収録の楽曲群と併せて聴きたい。
20.「So-kou」(霜降/10月24日頃)
本作で最も好きな曲。冬に近づく一歩手前、朝晩に冷え込む時期、そう長くは無い秋らしい瞬間を捉えるような少し緊張感のある1曲だ。シンセとエレピのオリエンタルな響きが印象的だが、特に1:11頃に訪れる束の間の静寂では、木々が色付き始めた寺院や庭園の風景が思い浮かぶ。
21.「Rittoh」(立冬/11月7日頃)
本作のM-1でも聴けるような凛とした空気が再び訪れ、いよいよ冬の足音が聞こえてくる。朗々と歌うユーフォの音は、寒空の下、枯れ葉が舞う様子を描くように聴こえる。
22.「Sho-setsu」(小雪/11月22日頃)
本作では珍しい3分超えのトラック。カラッと晴れた晩秋の青空と、木枯らしが吹く様子が交互に来つつも、次第に季節が深まっていくように展開していく1曲だ。昨年の10月から11月、秋のシーズンにリリースされたVol.17『17』やVol.18『Euphobient Music』と併せて聴きたい。
23.「Taisetsu」(大雪/12月7日頃)
いよいよ冬も本番。雪が降る様子を暖かな部屋の窓から眺める時間を切り取ったような1分強の楽曲だ。リズムを刻むのはカホンのような音だが、これが暖炉で薪が爆ぜる様子を表しているように聴こえる。
24.「To-ji」(冬至/12月21日頃)
1年の終わりと始まりを同時に告げる1曲は、ピアノだけで綴られる。一音ごとに暖かさを持つピアノの音が、しんとした静寂の中、長過ぎる夜にそっと寄り添い、緩やかに心を解きほぐす。
二十四節気があるならば…
24トラックで53分、1分から2分台の短い曲が殆どだが、どれも丁寧に季節を切り取っており、これまでのソロワークスで聴いてきたサウンドも少しずつ味わうことができるアルバムだと思う。
24作目にして二十四節気であれば、72作目の際には七十二候も取り上げてほしい、などとぼんやりと考えてしまうのだった。ここから月1回のペースが崩れなければ、順当に行けば72作目のリリースは2028年6月だ。果たしてその時期までソロワークスのリリースは続いているのだろうか…。
今回は以上。7月に東京にライブを観に行ったのでその感想も書こうと思いましたが、まだVol.25編が控えているのでそちらで併せてアップ予定です。