樋口了一さんの「手紙」を読んで、母に優しくしたいと思った
年老いた親のことを、重荷に感じていた。
介護に費やす時間をもったいない、と思っていた。
しかし、樋口了一さんの「手紙」を読んで、自分の驕りを恥じた。
「ママ、ごめんね」
と、心の中で謝った。
母はアルツハイマーになり、自分の世話もできなくなって久しい。
箸を持つ手も、いつの間にか握り箸になっていた。
先日、母は芋をつかめず、芋がテーブルの上を転がった。
私は、転がる芋を横目で見て、ため息をついた。
また、昨日は、食事中もずっと両肘をついたままだった。
母は、食事も面倒になったのだろうか?
ティッシュペーパーも箸でつまむ母の姿を見て、私はまた溜息をついてしまった。
美しくて気取り屋さんだった母は、どこにいったのか?
そんな母を、寂しい思いで眺めていた。
でも、この手紙を読んだとき、母の涙が見えたような気がした。
******************************
なりたくてこんな姿になったわけではない
もっと優しい眼で見てほしい
子育ての時に、自分の時間をあなたにあげたのだから、
親の最期の一時に、あなたの時間を少しばかり分けてもらえない?
全てを見てと言っていないでしょ?
ちょっと気にかけてくれるだけでいいの
ちょっと声をかけてくれだけでいいの
ちょっと顔をみせてくれるだけでいいの
あなたに犠牲を強いているわけではないの
あなたと同じ時間を共有したいだけ
あと少しだけ共有したいの
******************************
そんな声が聞こえてきそうな気がした。
「ママ、ごめんね、今まで優しくできなくて・・・」
心の中で、何度も何度も謝った。
残り少ない母との時間を、優しく穏やかなものにしていきたいと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?