見出し画像

カタクリ

今年は、見に行けるものは行ってみよう!と思い、3月のセツブンソウ、ミツマタに続いて、今月初めには「カタクリ」を見に行ってみた。
今回行ったのは兵庫県丹波市氷上町の「清住かたくりの里」で、ここは関西最大級の群生地とされ、約30年前から地元の方達によって保護されているそう。
セツブンソウとミツマタも兵庫県丹波市だったので、丹波市は里山の自然が多く残っていることを実体験として知ることができたし、それを守ろうとする地元の方達の熱心な取り組みもあることを知って、ありがたいという気持ちにもなった。

群生地の入り口には看板。年季が入っている。
入ってみると、
クヌギ林の中、適度に木が刈られて少しひらけた地面に、
一面に薄紫色とグリーンが広がっていた。
思わず感嘆の声が出る。
カタクリ」は、早春、他の植物より早い時期に大きく広い葉を出して、
雑木林の林床で日差しを独占する。
花がみな同じ方向を向いているのがおもしろい。
花茎の先に一輪、うつむいて花が咲く。
花は、日が当たって気温が上がると開き、時間がたつにつれて花びらが反り返るのだそう。
天気が悪く気温が低いと開かないまま。
この日は薄曇り。時間はお昼過ぎ。
多くの花はそれほど反り返ってはいない。
でも微妙な日当たり具合の違いなのか?
他の花よりゆっくり開いていくような花もあれば、
しっかり反り返った花もある。
もっと日当たりが良さそうな場所の花はよく反り返っていた。
つぼみもたくさんあった。
葉には模様があり、花が咲く株には2枚、まだ花が咲かない株では葉は1枚。
地域によっては葉に模様がないこともあるそう。
球根植物だけど、原則として鱗茎は分球することはなく、種子で増え、
発芽から開花まで8~9年かかるのだと!7~8年は1枚葉の状態ということだ。
なので乱獲や開発で激減すると回復が難しい。
これは明日から咲くのかな。こういう姿も美しい。
球根植物だけど、種子がアリに散布されて広がる。
アリが作った群落だと思うと、きれい、だけではない面白さがある。

球根にはデンプンを蓄え、それから「片栗粉」が作られていた「カタクリ」。
かつては身近な里山に生育するごくありふれた植物だったという。別名が多く、地方ごとの呼び名がいろいろあることからも、それが想像できる。
セツブンソウの時も思ったのだけど、例えばうちの近くの雑木林を考えると、全体にうっそうと薄暗く、地面には落ち葉が厚く積もっていて、小さな花が咲けるような環境には思えない。
セツブンソウカタクリが減少したのは、雑木林自体が減っただけでなく、人の手が入って適度に日が入る状態が維持されていた林が減ったということかなと思うし、そもそもの林を構成する木自体が落葉広葉樹から常緑広葉樹林へと遷移してきたという変化もありそうだと思う。

それにしても球根を掘り出してデンプンを採るにはかなりの量が必要で、大量生産できるものではないのでは?と思うけれど、Wikipediaによると片栗粉は「江戸時代においては、播磨国、越前国など複数の産地で生産され、特に大和の国の宇陀では名産品となり幕府へ献上されるなど活発であった。」のだそう。
自生カタクリが減少し、明治時代に北海道でジャガイモが栽培されるようになってからは片栗粉の原料はジャガイモになったけれども「片栗粉」の名前は残ったということのようだ。
球根は生薬名「片栗澱粉(かたくりでんぷん)」として薬用にもされ、若葉は山菜としても利用される。

カタクリ」の名前は、
●日が当たると花びらが強く反り返る花の形から古名で「傾いたかご状の花」を意味する「堅香子(かたかご/かたかこ)」と呼ばれていてそれが「カタクリ」に転化した説
●「傾いて咲くユリ科の花」で「カタコユリ」から「カタクリ」に転化した説
●鱗茎の姿がクリの片割れに似ることから「片栗」の意味で名づけられたという説
●葉がクリの子葉の一片に似ることから「片栗」になった説
●未熟な株の1枚の葉(片葉)の模様を鹿の子模様になぞらえ「片葉鹿の子(かたばかのこ)」から「カタカゴ」になり、それが「カタクリ」に転化した説
など、調べるほど違う話が出てきて笑ってしまった。

セツブンソウと同じく、スプリング・エフェメラルと呼ばれる植物の一つ。
「温帯の落葉樹林の林床で、早春から春までの短い期間に葉を広げ、花を咲かせて実をつけると、地上部は枯れ、夏から冬までは地下で過ごす草花たちをスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral、春のはかないもの、春植物、春の妖精などとも)と呼ぶ」
カタクリ」が地上に姿を現す期間は4~5週間足らずで、群落での開花期間は2週間程という。このわずかな期間に花を咲かせて受粉、結実し、種子を散らしながら葉で光合成した養分を鱗茎に蓄え、6月には地上部を枯らして9月末まで土中で休眠状態、10月下旬ころに発根し、早春に地上に糸のような細い葉を伸ばす。成長が遅いのはそのため。
種子にはアリが好むエライオソームという物質がついていて、アリが巣に運んでエライオソームを食料としたあと種子を巣の中や巣の近くに捨てることで生息地を広げる。同じように、エライオソームを作ってアリに種子を散布してもらう植物は意外に多く、スミレ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、キュウリグサ、エノキグサ、スズメノヤリ、ムラサキケマン、アケビなどがある。

カタクリ(片栗、学名: Erythronium japonicum)
ユリ科カタクリ属の多年草。花期は4~6月。
日本原産といわれ、北東アジアと日本に分布。
日本では東北地方と中部地方の山地に多く、西日本では少ない。
九州は熊本県のみで、これが日本の南限といわれている。
ブナ、ミズナラ、イタヤカエデなどの落葉広葉樹の林床や、スギ林の日のよく当たる林縁などに群生する。
別名が多く、地方によって、カタコ、ブンダイユリ、カタカゴ、カタカシ、カタコユリ、カタバナ、カッコバナ、ヤマカンピョウ、アマイモなど。

いいなと思ったら応援しよう!