フェニックスプロジェクト第3期
仙台でのリーディング公演を観てきました。震災から10年で若い世代の劇作家たちが感じたことをテーマに創った脚本のリーディング。観たのは演劇ユニットせのび・村田青葉くんの「to」と三桜OG劇団ブルーマー・くまがいみさきさんの「上空より愛を込めて」の2本。
大きめな枠の創作課題でしたが、2作品はどちらも「記憶」を軸にしていて、「忘れない」でも「忘れよう」でもなく、忘れることが悲しくネガティブなわけでもなく、ややポジティブな記憶の揺らぎを、青葉くんは私小説的に、くまがいさんはSFエンタメに織り混ぜていた作品でした。
「to」はいつもの青葉くんらしいテーマではあったのですが、過去の記憶の変化だけではなく、思い描く未来だって各々都合よく変わるし、それもそれでそういうものじゃない?という、いつも以上に懐が深い内容だった気がします。締切に追われた(間に合わない)ことで、8回二死2ストライクから身を削った渾身のストレート(9回はクローザーに任せる)が出たような印象。過去作の「雲は透ける-」「月の流した涙-」と3部作のような、アンサーのような作品でした。
くまがいさんの作品は、シンプルに楽しめるSFエンタメの中に青葉くんの作品同様の記憶への寛容さとやさしさが含まれていて、素敵でした。才能!って思いました。
演劇の世界を知らない僕の印象では、(かつての)演劇は反体制みたいなものが根底というか本流にあるような、臭いものに蓋をするな!この蓋の中は汚いぞ!と世の中に一石を投じるようなイメージがあったのですが、昨日の二人の創る世界は「臭いものといえば、こないだね」って別の話を始めるような、でも世の中全員がそうやって別の話をし始めるくらいの世界なら臭いものに蓋をしなくなるのかもと思わせるもので、良い悪いではなくて、僕はそちらが好きです。