推し香水が届いた話〈根地黒門編〉
話題のCeles推し活で注文した推しイメージの香水が届きました…
本格的な香水を体験したのは初めてなので、うまく言葉に落とし込めるか不安ですが、もう感じて考えたそのままのことを全力で残すことにします。
推し香水に興味のある方の参考程度にもなったらいいな…
推し香水って?
今回利用したのはこちらのサービスです。
自分の推しのイメージを伝えると、プロのスタイリストさんがその推しをイメージした香水を選んでくれるというもの。
推しの香水といえば、オーダーメイドでそういう香水を作ってくれるところがあるという話は聞いたことがあったのですが、こちらは市販されている既存の香水の中から、イメージに合ったものを選んでくれる、というのがミソ。
二次元の推しでも、三次元の推しでも、自分のオリキャラでも対応してくださるとのことで、いわば推しの”概念”を、実在の香りという形にして立ち上がらせてくれる、すんごいサービスです。
先人方の面白いレポが既に上がっていますので、それらを読んでいるだけでも楽しいのです。
そう、私はこれまで読んでいるだけでした。推しは何人もいるのですが、香水が欲しいと思うようなタイプの”好き”が向けられる子はいなかったのです。
いなかったのです、が。
ついに出会ってしまいました。そんなキャラクターに。
出会ってしまったが最後、思いついたが最後。私の頭の中はその人のことでいっぱいで、ワクワクしながら香水の注文のための推し語りを作成し始めました。
私がオーダーした推しキャラは、根地黒門。
少年歌劇シミュレーションゲーム、青春群像劇『JACKJEANNE』の登場人物です。
!注意!
以下、本編のネタバレを超多分に含みます。ご注意ください。
また、この先で紹介するキャラクターの解釈は、100%青ペン独自のものとなっているため、合わないなと思ったら即座にブラウザバックしてください。約束です。
注文文章の作成
この作業に3日ほど費やしたと思います。書いては推敲し、書いては推敲し。削ったり付け足したり、ほんのちょっとの言葉のニュアンスの違いも気になって、こだわった結果…2000字越えの文章が出来上がってしまいました。読む方には申し訳ないことをしたな…と思いつつも、文字数制限が無いのをいいことに、思いの丈を全力で書き連ねてしまいました。
後悔はしていません。とても楽しい時間でした。
記載した情報はこんな感じ。
・作品全体の世界観
・キャラクターの立ち位置
・キャラクターの基本情報(年齢や容姿の特徴)
・私が思うキャラクターの魅力・自分なりの解釈
・こんなシチュエーションを感じたい
・こういう香りは苦手
複数のレポを読んで、他の方がどんな注文文章を書いているのか参考にしながら書きました。苦手な香りは避けてくれるとのことだったので、香りに対して少ない経験から絞り出して、「ねばねばと纏わりつくような香り、甘ったるい香りは苦手」と記載して送りました。
時間がかかったのは、キャラクターの魅力・自分なりの解釈という部分です。ここの分量がやーーーばい。でも何とかして書きたかったので、私の場合は、3つの項目に分けることである程度整理したつもりです。
まず【舞台を作る姿勢】で根地さんの天才舞台人としての性質を、次に【根地のトラウマ】でこの人の過去、心に抱えた傷とそれに起因する危うさを、最後に【作中での変化】として、主人公・希佐ちゃんと出会い恋をした根地に訪れた変化と、私の思うこの人の本質みたいなものを書きました。
文章の詳しい中身は次以降の項目で、実際に届いた香水をレポしながら照らし合わせていきたいと思います。
いざ、お試し
私が購入した容量は50プッシュ分(2.5ml)。袋に入った状態の小さなスプレーと、今回選ばれた香水の銘柄が裏面に書かれたムエットという試香紙が届きました。まずは前情報無しで、香りを嗅いでみます。
袋を開けた段階で、つんとした香りがして「お?」と声が出ました。試香紙に吹きかけてみると…「!?」。ラベンダーとかローズマリー、森や緑を連想させるハーブっぽい香りが強く迫ってきて、刺激の香りにビビってしまいました。
「なんだろう、なんだろうこれ」と思って嗅ぎ続けているうちに、私の好きな柑橘っぽい香りを嗅ぎ取って嬉しくなると同時に、ほっとします。
最後は、優しくて深い、甘めの香りになった印象。前半の香りからの展開が早く、代わりにこの最後の甘さが薄く優しく、そして長ーーく続いているようでした。
香水は、トップノート・ミドルノート・ラストノートと、時間経過で香りが3段階に変わるとは聞いていたのですが、こんなに変わるものなのですね。素人の私でも分かるものなのか不安でしたが、本当に全然違くてすごく面白いです。
柑橘の香りはとても好きだし、最後の甘さはなんだか懐かしい、温かいものでした。清潔だけどちょっと湿っぽいのかな、なんか美術館とか、博物館みたいなものが思い浮かびました。初めのハーブ的な刺激には驚いたものの、それも慣れてくるとクセになってきて、全体的に好印象!
とりあえずダメな香りじゃなくてよかったぁ。
ちょっと調べてみましょう
ムエットの裏に書かれた香水の名前は、[コムデギャルソン・コムデギャルソン2]。…なんかすごい名前だ。
一緒に記載されたQRコードから飛んだ先で、香水の解説が読めます。以下、Celesさんのサイトから引用。
日本の書道からヒントを得て作られた、性別問わず使えるユニセックスな香水。光と影をテーマに、陽はオレンジとマンダリン、陰は墨汁を用いることで表現されている。一見珍しい組み合わせながら、そこにパチョリやラブダナム、アンバー、ベチバーの香りを合わせることでオリエンタルな香りにまとまっている。
ぼ、墨汁!?そんな香りしたっけ!?と思っていたのですが、この記事を書いている今、試香紙に付けて半日ほど経った今!感じています…付けてすぐにはあまり感じられなかったのですが、なるほど墨汁の香り…これが、ラストノート…
あとは柑橘系、やっぱり入っていましたね。
ユニセックスというのも、中性的な魅力があり男女両役をこなす根地さんらしいと思えました。
さて、読み取れたのはここまで。パチョリ、ラブダナム、アンバー、ベチバー、このあたりの単語は何がどういうものなのかさっぱりでした。オリエンタルな香りって、どんな香り…?
なので1個1個調べました。
これがですね…初めに言っちゃいますが凄かったんですよ…
※以下、妄想過多となりますのでお気を付けください。
【パチョリ】
最初に感じたハーブの刺激はこれでした、パチョリ!スッとしてツンとした、それこそラベンダーとかローズマリー的な香り。でも少し個性的で、湿った土の匂いとか、古くて懐かしい感じ、あるいは一種のカビ臭さとも表現されるらしく、なんだか独特みたいです。
ここで思い出しました、私がオーダーしたシチュエーション。
「根地さんとすれ違ったときにどんな香りがするのか、大丈夫だよって抱きしめてあげられたらどんな香りがするのかが気になっています」
ああ…あーーー…
彼はこう、トリッキーな劇薬なんです。初見だとビビってしまう刺激的な強いハーブの香りは、あの初見の印象に近い気がしました。「な、なんだこいつ!?」っていう…。で、湿った土とかカビ臭さは、彼の作業部屋の空気なのかもしれないって想像しました。根地さんは脚本家兼演出家で、その執筆やらなんやらのために自分の作業部屋を校内に持っています。カーテンを閉め切った薄暗い部屋で、大量の本に囲まれて、満足に電気も点けずパソコンに向かい執筆作業をする人だから、すれ違ったときに古い本の匂いとか、ちょっと埃っぽい湿った空間の匂いとかがするかもしれないって…
まじかあ…これが、推しの概念…
え、私後半なんて書いた?「抱きしめてあげられたらどんな香りがするのか」…これはちょっと、この調子でいくとやばいのでは?
【ラブダナム】
スモーキーで甘く強い香り、とのこと。
トップノートのパチョリ、ミドルノートの柑橘系から飛んで、この辺りから先はおそらくラストノートに影響しているものだと思います。
分類としてはムスク系…麝香(じゃこう)の香りだそうなのですが、この辺りの単語で予感がしました私。調べればすぐに分かることなのですが、まあ古くは媚薬効果のある香料として重宝していたとのこと。
あれえ?と思いました。私は注文文章にこう書いていたからです。
「彼は女性が苦手です。舞台演出家だった父親が愛人を作り、その才能を失い、舞台から遠ざかって、苦しみの末死を選んだことから来る女性への拒否感を抱いています。同時に恋愛やセックスへの拒絶も。その辺りに関しては潔癖とも言えるかもしれません。」
潔癖…潔癖がこうなるか?
いや、いや待て。私はこう続けた。
「根地の書く脚本・演出は、彼自身無意識ながら、自分のそんなトラウマを抉るようなものばかり。顕著なものだと、自ら愛人役を演ったり…自傷行為にも程がある暴挙なんです。ねじれているにも程があります。」
こ、これはまさか、まさかですけど、そういう…?
ああ…よりにもよって麝香だなんて、貴方はまたそういう、自分の傷を抉るようなことを…嘘だろ…しんどっ…
だって、普段から男性として意識されないよう意図的に振る舞っている根地ですよ?そんな人に、異性を誘う類の香りなんて、なんて皮肉。でも、根地さんらしいとも言えて。
女性を避けてきた根地さんにとって、でもどこかで必ずぶち当たる問題はこれなんです。結局避けられないんですよ。避ければ避けるほど、問題の存在感が際立つ。この人にとって切っても切り離せない要素になってしまう。
希佐ちゃんとこの先も共に行くなら、プロポーズの前に超えなきゃならない山や谷がいくつもあるでしょうに、この人ときたら……
あーもう、絶対2人で幸せになれよ…
また、ラブダナムの効能としてこんなものがあるそうです。潜在意識に深く入り込み、古い記憶を蘇らせる、心を落ち着かせる瞑想にいい香りとのこと。
…この辺りの注文文章、【根地のトラウマ】って項目でまとめたそれなんですけど、もうなんか、そういうことですよね?
フックが多すぎて処理しきれないのですが、いやもう…マジか………
【アンバー】
基本は重厚感のあるセクシュアルな甘い香りだそう。アンバーにも種類があるみたいで、いろいろ調べたのですが、この香水に使われているのはたぶん樹脂系のもの…でしょう、たぶん。
落ち着きのある温かい甘さ…"お香"みたいな香りと言われて、なるほどと思いました。
アンバーとは、琥珀のこと。琥珀に火をつけたときの香りを人工的に作ったものを"アンバー"と言うらしいです。
根地黒門に、アンバー。『JACKJEANNE』においては関係がありすぎる単語です。
歌劇学校には宝石の名を冠する4つのクラスがあり、それぞれに特色があります。物語の舞台の中心となるのは、主人公が所属することになる"透明なる《クォーツ》"。根地黒門もここに所属していますが、この人はこのクラスに来る前、違うクラスに所属していました。それが、"暗躍せし奇才集団《アンバー》"。1人1人のポテンシャルが高く、どこか仄暗い才能を持った人間が集まるクラスです。根地さんの才能は確かにアンバーらしいと感じられるのですが、本人が強く望んだクラスはクォーツという…なんというか…スリザリンに行くか、グリフィンドールに行くか、みたいな(?)。
在学中半分の期間はアンバーに所属していたので、クォーツに転科して尚、根地さんなりにアンバーへの愛着はあり、その所縁というか因縁が、物語にも大きく影響してきます。根地黒門という人間の底知れない深みを見せてくれる部分です。
アンバーはよく使われる香料のようですし、私はアンバーについては注文文章で一言も触れませんでした。だからこれはきっと、運の良い偶然だったのかもしれません。でもでもそれでも、根地黒門とアンバーの縁を見たようで、うわあっと感じてしまうものがありました。
【ベチバー】
花の華やかさや薬草類の清々しさとは程遠い、少し陰気な香り。湿った土の匂いで、クセが強い。墨汁の匂いもここから来るようです。
トップノートに出現した根地の第一印象、ハーブといった表層的な部分にある香りからは程遠い、この人の深い深い所にある甘さを引き立てているのがたぶん、これです。鎮静力がとても高く、静寂の精油とも呼ばれるそうで、もう普段のおちゃらけハイテンションお騒がせ根地黒門とは全く違う側面です。
実はシャイな根地さんのことですから、日常の中でふっとその甘さを垣間見せたかと思えば、次の瞬間には柑橘やハーブの刺激で茶化してかき混ぜてしまうのだと思います。
甘さを引き立てるこの香りまで知っているのはきっと、根地さんをその心の傷ごと抱きしめてあげられる、希佐ちゃんだけでしょう。
地に深く根差した植物、ベチバーの根から作られるこの精油は、土や大地を強く感じさせるため、冷静に現実と向き合い、行動できる力をサポートするような「地に足を付ける」という効果もあるそう。
作中、希佐ちゃんに恋をした根地は、舞台人としての才能を全て失います。神様が地上を見下ろすような、これまで当然のようにできていたことの全てがままならなくなり、地に堕ちて人間になってしまうのです。
地に足を付け、根を下ろし、自らの足で歩く覚悟を決めるということが、彼のルートでの課題でした。
この作品を監修した石田スイ先生のことですから、”根地”なんて名前にも、そのあたりがかかっていると見て間違いないでしょう。
【作中での変化】を思わせる落ち着いた香りでした。スタイリストさんはいったいどこまで読んでいたのでしょうか。
いっそ怖いんですが…
もっと調べたい
こうなるともう止まりません。コムデギャルソンというブランド自体についても調べました。
コムデギャルソンは、日本のファッションデザイナー、川久保玲さんが1969年に設立した、日本の高級ファッションブランドでした。コムデギャルソン2というのが、この香水の名前だったようです。
コムデギャルソンの服を調べてみたのですが、ファッションに詳しくない私にはよく分からない世界でした…こう、「ファッション」って感じで。
これなら普段着にできるなってものから、これは着られない…という個性的なものまで。いろいろでしたが、たぶんこれ、根地さんには似合うものがあります。全部とは思いませんでしたが、「あ、これ着てほしい」と感じる服もありました。多趣味な知識人なので、興味を惹かれたものは嬉々として袖を通したり、舞台衣装のデザインに取り込んだりするかもしれないなあ。
作中で他キャラクターから「クロの服のセンスは人を選ぶ」とも言われ、実際ちょっと個性的な柄や色味を身に着けている印象のある彼に重なるようなデザインでした。
さらに面白かったのはそのコンセプト、”アンチモード”。世界のファッション潮流を意識しつつも、それに抗して独自のコンセプトを貫徹させる、というもの。デザイナー川久保さんによると、それはただ単に反対を行くということではなく、「多勢に動じない自分としての工夫、独特さ」を表現し続けることなんだそう。
ほほーん…
では、お手元の資料をご覧ください。(無い)
以下、注文文章。
「世の中の常識やモラルに囚われていないので、言動がぶっ飛んでいます。でも、この人の中では理屈が通ってるんです。周りがどう思うとかじゃなくて、自分が良いと思ったものを疑わない。ただひたすら良い舞台を作るために。周りに左右されない自己はとても自由で、すごく自分勝手で、周りを振り回すけど、最高に輝いていて…だから周りの人を惹きつけます。」
めっっっちゃくちゃ根地じゃん…
【舞台を作る姿勢】じゃん…
まじか、語った要素全部回収されたんだが。信じられない。
どこまでが狙ったものでどこからが私の妄想?
もう分んないわこれ…
〈参考サイト〉
コム・デ•ギャルソン
総評
120点万点でした。
嗅いだ瞬間「推しだ!」となる感覚ではなかったのですが、香りという表現方法とのチューニングが自分の中で合ってくると、どんどん面白くなっていって、「ああこれが根地黒門だ。そうですこれです。間違いありません。これがいいです」って気持ちになりました。
奇才・根地黒門と、不器用な人間・根地黒門の二面性を見事に落とし込んでいただきました…大感謝です。凄い。
Celesさんありがとうございました…また利用させていただきます…
こんなクソ長いレポを読み切ってくれたあなたにもありがとう、ありがとう…
蛇足
超個人的な身の上話なのですが、私の父は書道の師範で、自分の教室で子供たちに書道を教えたりしています。なので墨汁というのは、私にとって父を連想させる要素です。
根地さんを語る上で外せない"父親"という存在が、全くの偶然にして私自身の父親を思い起こさせることになった墨汁の香りと相まって私に迫って来ていて、なんかもう情緒が、どうしたらいいのって。
しんどっ…(さめざめ泣く
あと香水って、かなり香りが長続きするんですね。寝て起きて朝になっても香りが隣にあってびっくりしました。部屋のそこかしこから、ふとした時に感じるんですよこの香りを。
…これ、続ければ続けるほどやばいんじゃないですか。根地さんの香りって認識が自分の中でどんどん馴染んでいくし、普通にいい香りなのでどんどんは離れ難くなってしまう。
いやあどうしよう。どうしようどうしよう…
めっちゃ楽しい…