給付金の行方

皆さん、給付金は何に使いましたか。コロナ禍で生活に苦しんでいる人からすれば、10万円は生活費に消えていくんだと思うけれど、ダイレクトに売上に影響が出るような業界以外で働いている人たちは生活費以外のちょっとした贅沢に使うんでしょう。僕は、給付金をなくしました。以下、経緯を簡単に振り返ろう。

自粛生活でどこかへ出かけたいという気持ちが強くなっていたので、僕は当初、旅行に使おうと思っていた。GO TOキャンペーンもあるから、相当贅沢できるぞとうきうきしていた。給付金の申請書が郵送される前に、父のマイナンバーカードを駆使して、オンラインで給付金の申請をしていたから、5月中旬には10万円を僕は手にしていた。父からは現金支給で手渡された。封筒に入っていても感じる厚み。旅行に使ってやろうと画策していたものの、使いきれないだろうから、他にどんなことに使ってやろうか妄想を膨らますことで、自粛生活でストレスフルな毎日を慰めていた。

給付金のありがたみを噛み締めたくて、すぐに銀行口座に入れずに自分の部屋に置きっぱなしにしていた。机の上に置いておくのもなんだから、本棚に突っ込む、というあまりにだらしのない保管方法を僕は採用した。今考えると机の引き出しに入れるべきだったと思う。

僕は財布にほとんどお金を入れていない。クレジットカードやQUICPayなんかを駆使して、なるべく現金を使わないようにしている。その方が楽なのと、家計簿アプリにクレジットカードを連携させているから、勝手に家計簿もつけれて便利なのだ。家計簿つけていない人は今すぐMoney Forwardを入れるべし。飲み会で割り勘する時だけは、現金を使った方が楽なので、割り勘用に財布に現金を入れる。どうせほとんど使わないだろうから、給付金の10万円のうち、1万円だけ財布に入れる。

残り9万円。5月中旬以降、資格の講座の受講料だったり、友達への誕プレだったり細かい支出があったけれど、給付金の封筒からはお金を出さず、銀行口座から振り込んだり、クレジットカードで支払っていた。

自粛生活中、僕は在宅勤務を一回しかしていないけれど、その1回で自分の部屋がものにあふれているのが、気に食わなくて断捨離をした。無駄なものを捨てて、ものが少なくなると、心なしか気持ちもスッキリする。ものが溢れた生活に無自覚ながらストレスを感じていたのかもしれない。

緊急事態宣言が解除されて、新しい生活様式、とは言うものの少しずつ前の生活が戻りつつあるのを感じ、友達と焼肉を食べたり、ラーメンを食べに行く約束なんかをした。7月に入って、宅建の受験料を支払った。クレジットカードの支払いがうまくいかなかったので、給付金が入ってすぐ財布に入れたあの1万円で支払った。お釣りはあるものの、今後友達と遊んだりするんだから、給付金からまた1万円入れようと思ったら、ない。

本棚に突っ込んだ封筒がない。頭が真っ白になる。僕の部屋に本棚は3つあるが、どの本棚にもない。おかしい。

情報処理能力が著しく低下した状態で、僕は推理する。そして思い当たる。在宅勤務をしたあの日、断捨離で大量にものを捨てた時、捨てたかもしれない。最悪だ。だが、本棚から何か捨てた記憶がまるでない。どこいった？

本棚をひっくり返しても見つからないので、第二の可能性を考える。父親が僕のずさんな管理を見かねて回収した（悪く言えば、盗んだ）。こうしてnoteを書いている今でも父親に10万円回収したかどうかを聞けない。もし聞いたら、小言を言われるのが目に見えるからだ。けれど、父親泥棒説が僕の中でいちばん有力である。理由は二つある。

１.小学生の頃、ゲームボーイアドバンスSPを父親に隠され、1ヶ月くらい探していたのに、隠したすらしばらく教えてくれなかったことがある。

2.僕が会社に行っている間にたまに僕の部屋に入って本を借りていく。（しかも無断で）

過去の経験からこのような結論に至ったわけだが、状況証拠が全くない。どんな出来の悪いミステリ小説でも状況証拠のひとつはあるはずだ。僕がずぼらであることを利用した完全犯罪なのかもしれない。

僕は探偵ではないし、10万円がないことで生活が苦しくなるようなことはないので、自分の精神安定のために10万円は最初から存在しなかった世界線で生活していると思い込むことにした。まだなくしたことを知ってから1週間も経っていないけれど、すでに精神は安定しつつある。社会人5年目で得た切り替えの早さがここで生きた。

何も解決してないけど、謎のままにしておいた方がいいこともありますよね。おわり。