私が着ている服はどこへ還るの?~ファッション界の環境問題~
皆さんは、今着ている服がどのような素材で作られ、どのようにつくられているかご存じでしょうか。
SNSや雑誌、テレビでは次々と、トレンドのアイテム、デザイン、色などの情報がひっきりなしに流れてきます。毎シーズン、トレンドのアイテムを求めてショッピングに出かける人も多いのではないでしょうか。中の人は特に、デニムジーンズの形に流行り廃りを感じ、何着も同じようなジーンズを持っています(笑)。皆さんもファッションでついつい集めてしまうアイテムや、心惹かれるデザインの服があったりするでしょう。ファッションは選ぶ時も、身に着けている時もワクワクしますよね!
中の人は少し前に、『燃えるドレスを紡いで』という映画を観てきました。主人公はファッションデザイナーの中里唯馬さんで、2016年に日本人では森英恵さん以来2人目となるパリ・オートクチュール・ウィークの公式ゲストデザイナーに選ばれて以来、日本人として唯一、コレクションを発表し続けています。この映画は中里さんがケニアを訪れ、そこから持ち帰った古着を使って、パリコレに出品する服をつくりあげていく様子をカメラにおさめたものです。ただ、この映画はただのファッション好きに贈る映画というわけではないです。
ファッション業界は石油産業に次いで、第2位の環境汚染産業です。世界で生産される服の75%は捨てられていると言われています。そして、廃棄された多くの服が行きつく先はケニアです。特に、ケニアのギコンバという町は古着の町として活気があります。住民が、廃棄された服の中からまだ着られるものを選んで売っているんですね。しかし少し町を離れると、巨大なゴミ山が現れます。ケニアは、以前は繊維産業が盛んな地域でしたが、大量の古着が流入するようになり、すっかり廃れてしまったそうです。さらに、深刻なことは安価な服に含まれるポリエステルなどのプラスチックを含んだ素材が、ゴミ山から川に流れ出しているということです。プラスチックは土に還らないので、そこに残り続け、生き物の口に入ってしまったりマイクロプラスチックとして海に浮遊したりします。
映画の前半で、中里さんは葛藤しているように見えました。自身が携わるパリコレは、世界中のファッショントレンドの先駆けとなるようなものを生み出す場です。特にファストファッションブランドはトレンドを取り入れた服を大量生産しています。その一方で、ファッション業界がもたらす深刻な環境汚染の現実、そしてケニアに暮らす人々の嘆きを目の当たりにするという矛盾がありました。
しかし、ケニアの旅で中里さんはゴミ山だけではなく、衣服の起源にも出会います。動物の毛皮をまとったものが衣服の起源とされていて、その伝統が残っている民族に出会うシーンが映っていました。このシーンで、服を着る、デザインするということに人間本来の営みの美しさを感じました。
この映画を見て、服を身にまとうことによって自分の個性や思いを表現するということは、とてもすてきなことだと感じました。ただ、ファストファッションのように経済合理性の極地で、単に消費させることだけを目的にして無尽蔵に生み出すことに対しては、一度考え直してみる必要があるように思いました。
中の人は服を選ぶ時間が大好きなのですが、普段着ている服がどのような素材で、そのブランドがどういうコンセプトでやっているのかを考えたことはこれまでありませんでした。この映画を見てから、「環境を破壊しない」「労働者から搾取しない」といったエシカルファッションについて興味を持ちました。例えば、タレントのローラさんが立ち上げたstudioR330というブランドがあります。ジーンズの加工過程では大量の水を消費し、二酸化炭素が排出されるのですが、studioR330では、環境負荷を軽減するためにコットンでできたサステナブルデニムを販売しています。
もちろんエシカルファッションの服を購入する以外にも、ファッションの環境問題に貢献できることはたくさんあると思います。中の人が実践していることを2つ紹介します↓
1つ目は、着なくなった服を裁断して、料理で使ったお皿やフライパンの汚れをふくのに使うことです。例えば、お家で揚げ物をして、油を吸い取りたいときありますよね。私は以前、キッチンペーパーを使って拭いていたのですが、少しもったいないなと思いました。着なくなった服を捨てる前に何か代用すると良いと思います!
2つ目は、あまり着ないうちに好みではなくなり、クローゼットに眠ってしまっている服などを、私の住んでいる家の近くに古着を売買するお店に持っていくことです。着なくなった服に自分で値段をつけ、お店に2週間置いてもらいます。2週間たっても売れなかった場合は、お店の人が寄付に回してくれたりしています。自分が着れなくても、その服を欲しいと思う人が着てくれると嬉しいです。
ココ・シャネルのファッションが女性の社会進出に影響したように、環境問題に向き合っている世界中のデザイナーさんが生み出したファッションが、地球の持続可能性に影響していくと思います。消費者単位で見ても、服のサイズや値段を確認するのと同じように、環境にやさしい素材を確認して服を買う人が増える社会になっていくのかな、と想像しています。