【VTuber】六原小森の特異性 ~魂を持ちながら作品に帰属するキャラクターでもある存在~
VTuber。それはフィクションのキャラクターであると”同時に”配信者としてのリアルの魂をもつという、ハイブリッドな二面性をもつ存在です。
この定義についてもう少し掘り下げると、
《キャラクター》
二次元としてのガワ、見た目、声、外面的な要素。
→第一印象。興味を持つキッカケは基本的にこちら
《魂》
配信者、中の人、演者、タレント。その人がもつ人格、性格。
→配信やコンテンツを見ていく中でこちらへの興味が強くなる
この二つの側面の両方を楽しめるのが、VTuberの魅力であり特性と言えます。
フィクション(空想)の存在であるアニメやゲームのキャラクターではない。しかしリアル(現実)の存在である芸能人やアイドルでもない。それでいて両方の特性を持っています。
序論:VTuberという存在がもつ”情報量”について
上記で述べたキャラクターと魂という2つの側面は、VTuberが活動を重ねていくことでさらに深みが増す=”情報量”が増えていくことになります。情報量→解像度と言い換えてもかまいません。
この情報量という観点について、主に「設定」「ストーリー」に分けて言及すると以下の特徴があります。
※2024年時点、有名企業Vなどで多く見られる一般的なVTuberモデルでの想定です
《キャラクター》
〇設定 キャラクターとしての見た目。Live2D・3Dモデルや新衣装などで情報が追加されていく
△ストーリー 最初の自己紹介こそあれど、キャラクター自体の生い立ちなどが掘り下げるようなことはほぼ無く、情報量は少ないまま維持される
《魂》
〇設定 動画や配信を通じて、人格・人となりがより深く見えてくる。それにより、その人のもつ属性もキャラクター以外の情報として増えていく
◎ストーリー 中の人の日常や、配信などで不意に出る過去話。なにより今を生きているというリアルタイムな体験が全てストーリーという情報となり、魂とあわせてVTuberそのものに対しても情報が追加される
すなわちVTuberが持つ設定・ストーリーは、魂の部分から生まれる情報量が大きいと言えます。
リスナーがVTuberに対して理解と興味を深めるのも、今では多くの場合”中の人について知っていくから"という部分が大きい。
例えばホロライブなどの有名VTuberでいえば、アイドルと同様に歌・ライブ・イベントなどを通した活動とそれに伴う成長物語がウリのひとつです。その活動の中で追加されていく設定・ストーリーは、どちらかというと魂=”中の人への愛着・中の人の成長”に伴う情報量が大きくなる。
キャラクター側の設定についても、新規ビジュアルなど追加される情報量は大きいですが、比較すればやはり魂のほうでしょう。
上記のようなVTuberモデルでは特に、キャラクターのストーリーという側面から情報が追加されることはまずありません。
端的に言えば”何かの作品に帰属するキャラクターではない”。
この点でVTuberは、アニメやゲーム内のキャラクターのような、ストーリーによって情報が追加されていくフィクションのキャラクターとは大きく異なります。
私自身もVTuberを実際に見始めてからは、キッカケこそキャラクターという見た目と声にあれど、徐々に内面=魂・中の人の魅力に惹かれていきました。特に配信で長い時間をともにすれば否が応でも愛着も生まれてきます。
新規ビジュアルや新衣装が出れば非常に喜ばしい。それはそれとして、キャラクターを通して中の人を見ているのも事実でした。
あえての例でいえば、見た目が変わっても魂=中の人が変わらなければファンのままでいるようなケースも多くあります。そのように魂が重要視される傾向が2024年現在ではあります。
本論:六原小森と一般的なVTuberとの相違点
ただし、六原小森さんについては上記の在り方に異なる部分があります。
キャラクターの部分に対して多くの設定と、加えてバックボーンとなるストーリーが存在しているのです。
「ProjectNo.6」とは
ProjectNo.6というプロジェクトがまずありきで、そこに紐づいてVTuberと小説という要素が含まれている構造です。
VTuberとしての歌ってみた動画も、あくまでProjectNo.6のイメージソングという位置付けとなっています。
小説・ストーリー動画:GambleЯ (六原小森の過去・出生の秘密)
第一部(完):生前~0才
第二部(完): 9才
第三部 :14才 ←VTuberとしての姿はこの時点
第四部 :???
VTuber:六原小森 & 歌ってみた動画
先に六原小森さんという存在から知った私は長い間、あくまで「六原小森(主)が作成したProjectNo.6という作品(従)」という主観的な解釈をしていました。
しかし客観的な事実としては「ProjectNo.6という作品(主)に帰属するキャラクターが六原小森(従)」となっています。
この事実だけ見れば「作品に帰属するのであればフィクションのキャラクターなのでは?」という疑問が浮上してきます。
しかし、最初で述べたようにVTuberという存在はフィクションとリアルを内在した存在です。そのため、フィクションの部分の情報量の多さがVTuberにおいては全体での情報量とかけ合わさり、長所のひとつとなるのです。
《キャラクター》
〇設定 一般的なVTuberと同様にキャラクターとしての見た目、プラスして小説:GambleЯからの設定開示も成される
◎ストーリー 小説:GambleЯでの膨大なバックボーンの掘り下げ
《魂》 ※ここは全て一般的なVTuberと同様
〇設定 キャラクターとしての部分に加えて、中の人の情報も増える
◎ストーリー 同じく中の人の日常や過去話はそのままVTuber全体の情報として増えていく
一般的なVTuberモデルとは異なり、六原小森はキャラクターとしてのストーリーにも厚みがある=VTuber全体としての情報量すなわち解像度が高い状態となっているのが、画期的な在り方であると言えます。
例を挙げれば、「キャラクターとしての過去が存在する」という利点を生かして幼少期の姿で配信することも可能となり、実際に実現していたこともありました。
結論:キャラクターのストーリーを拡充するというアプローチでも、VTuber全体としての情報量を増やせる余地がある
私もここ1年で大手企業Vから個人Vまで何十人と見てきたため、「こういうアプローチの仕方もあるのか」という観点で、六原小森さんのプロジェクトとその作品群に注目しています。
フィクションのキャラクターがVTuberになるケースも少なからず見受けられます。しかしそれはあくまで宣伝などのための一時的なもので、魂を別物として扱うケースはありません(直近ではドラクエ3リメイク発売時のゾーマ配信など)
キャラクターと魂の両方の良さを活かすという活動は、まさにVTuberの多様性=可能性のひとつの形であると言えます。
もちろん一般的なVTuberを否定するものでは全くありません。
キャラクターとしての厚みを持たせた場合でもVTuberとして破綻しないバランスがある、という実例のひとつとして挙げさせていただきました。
また、多様化を極めるVTuberの中でのモデルケースのひとつとして注目すべき存在がある、と伝えたいのが本論の主旨となります。
補記:六原小森さんの今後の展開
ProjectNo.6については、第二部が完結したばかり。
第三部からが現在のVTuberでの姿と同じ14才でのストーリーとなっており、六原小森さん自身の出番が多くあると予想されるので、いちファンとしては期待が深まるばかりです。
まさに第三部用のオープニングといった歌みた動画。
なお今回の話は狭い自分の観測範囲での話でしたので、他にも似たようなアプローチのVさんがいるよーとかあればぜひコメントなどで教えてくださいませ。