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棗いつきを推し始めて本当に良かった【棗いつき 1st LIVE TOUR「TRAVEL2U」東京公演 後編】

こちらの記事は、以下の記事の続きです。

東京夜公演に関する重大なネタバレを含むのでご注意ください。また、2nd LIVE「パラレルショット」BD特典映像と「TRAVEL2U」パンフレットのネタバレも若干ですが含みます。


MC

アンコール1曲目の「My Entertainer」、写真・動画撮影、バンドメンバーによるツアーの振り返りの後、いつきさんの最後のMCが始まりました。

「私、話すのが本当に得意ではなくて、MCで何を喋ろうかとか目の前のモニターにメモして準備しているんですけど、今日この回だけは今自分の思っていることをちゃんと生の言葉で伝えようと思って、メモを準備せずに来ました」と話し出すいつきさん。

昼公演の時、前から2列目だったのもありステージ上のモニターにMCの概要とかメモしてあるのが見えちゃってたんですよ…やっぱりこういうメモがないとMCって難しいよねと思いつつ、ネタバレを食らわないように頑張って視界から外していましたが笑
そう思ってた所にこんな事を言われたらもう覚悟するしかないじゃないですか…

「私は人と深く関わったりコミュニケーションを取ったりということに凄く苦手意識があって」

「自分が思っていることが正しく伝わらなかったらどうしようとか、正しく伝わらなかったことで誰かを傷つけてしまったらどうしようとか…誰かを傷つけてしまえば自分も悲しいし」

「だから人と深く関わることに対して後ろ向きというか、なるべくそうしなくていいように生きてきている自覚があって」

「それで私は物語や歌を通して色々自分の伝えたいことを伝えたりとか、そういうことが好きなのも、きっとそういうのが逆にプラスに働いたというか、そういうのの影響なのかなという風にも思っています」

これを聞いて真っ先に思ったのは、「いつきさんも私と同じだったんだ…」ということ。いや、そんな事おこがましすぎてとてもじゃないけど思っちゃいけないし、その理由も私と真逆なんですが。
私も「人間同士はあまり深く関わるべきではない」という考えを拗らせているところがあって、でもその理由は自分が傷ついた経験があるから、傷つくのが怖いからでした。
でもいつきさんは逆に「傷つけるのが怖いから」だと。私がすごいちっぽけな人間に思えるくらい、いつきさんは本当に優しい方なんだなと感じました。

「2ndワンマンの時、私がもちろん物語が好きってのもあるけど、今日みたいな生のMCを一切しないというライブ、アンコールの時だけMCするっていうライブをやりました」

「それはそれとしてやったことは全く後悔してないし、その時私がやりたかったことは完全にやりきることができたなと思って満足したんですけど、その時に初めて、こんなに目の前に、こんなに近くに皆が会いに来てくれてるのにちゃんと言葉を届けられないということがすごい、初めて物足りないなって思って…」

「苦手だけど、どう喋ったらいいかいつも分かんないんですけど、でもそれでももっとちゃんと皆と向き合いたいし、皆と色んなことを話したいって思ってる、自分がそういう風に思えてるんだってことに初めて皆に気付かせてもらいました」

「なので、今日のライブ、今回のツアー、こうやってみんなの前で上手ではなかったかもしれないけど、しっかり、自分の言葉で思ってることを届けられてよかったなと思っています」

「私に一歩踏み出すための勇気をくれて本当にありがとうございました」

この言葉は、私にとって非常に衝撃的でした。私は2nd LIVE「パラレルショット」がきっかけでいつきさんを推し始めたのもあり、若干パラレルショット信者みたいな所があるので、てっきりあの形式のライブこそいつきさんが最もやりたい事そのものだと思っていたのです。だから生でMCができない事をデメリットとしては感じていない、もしくは受け入れた上だと思っていました。(少なくとも当時はそうだったんだと思います。)パラレルショットのBD特典映像でMCが苦手という話題の時に「次のライブは申し訳ないですけどMC多めで行っていただこうと思っているんですけど」と言われて「バンドの人に喋ってもらおうかな笑笑」とか言ってましたし…

それが、まさかライブが終わった後に物足りなさを感じていたなんて…これ、本当にすごい心境の変化だと思うんですよ…人と深く関わることを避けていたいつきさんが、初めて私たちに直接言葉を届けたいという思いに気付き、そして一歩踏み出した先でその楽しさを知ってしまった。

正直、この言葉を聞いて、私が惹かれたパラレルショットのようなライブはもう二度と観られないかもしれないと覚悟しています。でも、同じく人と関わることを避けていた人間として、その変化は本当に素晴らしい成長であり、全力で尊重したいと思っています。

それから、バンドメンバーの皆さんとの思い出。

「私のワンマンなのにバンドの一人一人の皆のワンマンなんじゃないかっていうくらい本当にずっと一緒に一生懸命やってくださっていて…」

「そりゃ仕事なんだからちゃんとやるよねと思うかもしれないけど、そうじゃなくて、本当に…なんだろう…そもそも一生懸命やってくれるっていうのも全然当たり前のことじゃないって今まで生きてきて色んな人と色んな仕事をしてきて私はすごく感じたし…」

「今回バンドと一緒にツアーをやるっていうことが決まった時も、本当は楽しみな反面、どこかで本当に上手くいくのかなとか、ちゃんと気持ちよく終われるかなとか、私は結構自分だけが熱に入りすぎちゃって周りを置いてきぼりだったり、何となく温度差ができちゃってどうしようみたいな経験がたくさんあったので、今回のバンドがどういうライブを一緒に作れるかすごい不安でもあったんです」

「でも、そんな不安なんて吹き飛ばしてくれるくらい皆さん一回一回のリハとか公演終わりとかに毎回毎回真剣に話し合ってくれて…」

「本当に一緒に頑張ってくれて、私一人が頑張ってもこのツアーはこんな風には成功しなかったと思うし、バンドの皆さんがいてこそこんなにずっと盛り上がった最高のライブになったんだなと思っています」

「でも…だからこそというか、本当にこういうことを言うのは怖いんですけど、やっぱいい思い出だったからこそここで終わってしまうのが本当に寂しくて、怖くて、でも今日は皆から沢山勇気を貰ったので…」

一人一人、「また私と一緒にライブしてくれますか?」と聞くいつきさん。
「あたぼうよ!」と返す純平さん、三木さん、丸山さん。
そして「当たり前だーーー!!」と返すいなばさん。

本当に温かい皆さんで、私もこの東京公演だけで大好きになりました。

「私、今回のツアーの中で『天気雨の旅』という曲の話をする時に、どんなに楽しかった事とか、好きだったものの事でもやっぱりいつかは色褪せていって忘れてしまうものだし、私の歌とか今日のライブの事とかもきっとみんないつか忘れていってしまうし…でもそれでいいんだという風に言ってきました」

「半分これは自分に言い聞かせるようなもので、やっぱりみんなの事が本当に大好きだからこそ、もし忘れないでって言ったのに忘れられちゃったら多分凄く悲しいから、忘れないでって言えなかったんですけど…今日だけ言おうと思います」

みんな、ずっとずっと、私のこと覚えていてくれますか?」

オタク「あたぼうよ!」「当たり前だーーー!!」
忘れられる訳ないじゃないですか…!!

「私はコミュニケーション取ったりとか、人と深く関わったりっていうことは、必ずしもいつも仲良しこよしだけではいかないし、お互い意見がぶつかったりすることもあるけど、そういうのはやっぱり分かり合いたいという気持ちがあるからこそなんだなという風に、今回改めて心から思いました」

「こうやって皆と話をしていくこと、これが本当に正解なのかどうか分からない、もしかしたら、またしばらくしたらやっぱり何も話さない方がいいんじゃないかと思うときもきっと来るかもしれないし、進んだり戻ったり、そういうものだと思うんです。正解は分かんないです」

「やっぱ人と関わるということの正解…正解なんて無いかもしれないし…分からないままですけど、『天気雨の旅』っていうのは、そういうことを分からないままでいいから皆で一緒に前へ進んで行こうっていう…そういう曲です」

「分からないなりに、これからも皆と一緒に前へ進んでいけたらいいなと思ってます」

「長くなってしまいましたが、最後『天気雨の旅』歌って終わりたいと思います」

「それでは聴いてください。『天気雨の旅』」

天気雨の旅

このMCを聞いて、私の中の「天気雨の旅」の解釈は180度ひっくり返りました。というのも、ツアーが始まる前、私はこのような予想をしていたからです。

私の考察として「天気雨の旅」は

起:希望に出会い、物語を綴り始める
承:時が流れるにつれて、初心を忘れていく
転:夢を描けなくなり、物語を締めようとする
結:希望との出会いを思い出し、次の物語を綴り始める

という起承転結がこの一曲に詰まっていると思うのです。セトリはこのストーリーに沿ったものになり、そのEDとして「天気雨の旅」が歌われるのではないかと考えています。

(中略)

ツアータイトル「TRAVEL2U」。ライブツアーということで「ファンのみんなに会いに行くよ!」って意味は当然あると思いますが、もっと深い意味も込められてるかもしれない、そんな妄想です。

先ほど書いた「天気雨の旅」のストーリーについて、1st表題曲「SEEK for MYSELF」もライブ本編のストーリーに沿った曲でしたが、こちらはいつきさん自身の物語でした。一方、「天気雨の旅」はいつきさんが私達に向けた物語なのかもしれません。MVの内容もいつきさんがフミカちゃん(青髪の子)の心に飛び込んでくるような、まさに「あなたの心に旅する棗いつき」という感じの内容だと思います。つまり、いつきさんが旅するのは物理的だけでなく精神的な意味合いも含んでいるのかもしれません。

1stと2ndのストーリーはいつきさん自身のやりたいことをやりきったというか、自身の活動に対するスタンスを表明するようなものだったと思っています。もちろん私もそれにすごく元気づけられたのですが、あくまで私たちに直接向けたメッセージではない訳です。しかし、今回は「TRAVEL2U」ということで、私たちに寄り添い、直接向けられたメッセージが飛んでくるのではないかとヒヤヒヤしています。もし本当にそうだったら私は一体どうなってしまうのでしょうか…爆散してしまいそうです…

棗いつき 1st LIVE TOUR「TRAVEL2U」で聴きたい曲|白砂碧波 より

つまり、いつきさん自身の表現したい事は1stと2ndである程度出し切ったから、今回は私たちのためにこの物語を創ったのだと予想していました。当時はいつきさんがこれほどまでに人と深く関わることに苦手意識を持っていることを知らなかったからというのもあるかもしれません。
でもとんでもない、「天気雨の旅」こそ最もいつきさんらしく、いつきさんが伝えたかった本心そのものを歌った曲だったのです。

これに関してはMVに大分引っ張られていた部分はあると思います。確かに最初、1stアルバム「ビタミンノーツ」のジャケットそのものみたいな青髪の女の子が出てきたのを見た時は、「これは昔のいつきさんが今のいつきさんを思い描く話なのか…?それにしてもあまりにド直球すぎないか…?」と一瞬考えたのですが、この子に「フミカ」という名前が与えられていたことで、この子はあくまでMVの登場人物であり、棗いつきとは別人なんだと考え、いつきさん視点という発想は引っ込めてしまったのです。そして、先程の「私たちが希望に出会う物語」としての解釈に至りました。

しかし、本当はいつきさんも含め、皆で前へ進んでいこうという曲だった訳です。このMCの後に聴いた「天気雨の旅」は歌詞の一つ一つが伏線回収されていくようで本当に鳥肌が立ちました。まるでいつきさんのアルバムの特典小説を読んだ後に曲を再び聴いた時のような…。まさか最初に予想していた「セトリで組んだ物語」よりもよっぽど強力な「いつきさんの生の言葉」に沿ったEDになるとは思いもしませんでした。
「君」とは私たちのこと、「さよなら」とはいつきさんが私たちに忘れられてしまうこと、「伝えなくちゃ」「応えなくちゃ」とはいつきさんが「どんな言葉」「どんな姿」で私たちに想いを伝え、応えようか思い悩むことのように聞こえました。

後日読んだパンフレットの堀江晶太×棗いつき対談で、堀江さんは「何もかも話しすぎるとその人のままの曲になってしまう。音楽は色んな人に楽しんでもらうものなので、あえて妄想で補った余白を作ることを大事にしている。」いつきさんは「今回歌詞を貰って『これは私のことだ』と思ったけど自分だけのことにしたくなかった。表現的には感情的に歌える曲だと思ったけど、これは自分の歌だって思ってもらえるような表現のバランスで歌うようにした。」という旨のことを話していました。(他にも色々と凄いことが書かれているので是非買ってください…!)

これには本当に脱帽しましたね…結局私は見事に堀江晶太と棗いつきの掌の上で転がされていた訳です。まさか自分事として解釈できるよう、あえてゆとりを持たせて作られていたとは…。でも、東京夜公演の「天気雨の旅」は間違いなく「棗いつきの歌」でした。この曲はあの千秋楽で歌うことによって完成したのだと私は思っています。

おわりに

前編から長々と書き連ねましたが、人生で初めての「推しのライブへの参戦」、本当に、本っっっ当に楽しかったです!いつきさんの歌とバンドサウンドの迫力を生で体感したこと、それにコールを入れられたこと、次にどんな曲が来るかワクワクしたこと、曲の印象は歌われる時々で変わるのを実感したこと、そして、いつきさんの生の言葉を受け取ったこと…今まで映像で観ていた光景の中に自分がいるということがまるで夢のようで、一生忘れられない思い出になりました。半年前、思い切ってこの世界に足を踏み入れ、いつきさんを推し始めて本当に良かったと思っています。

棗いつきさん。
誰かを推すこと、ライブに行くことの楽しさを教えてくれたあなたのことを私は決して忘れません。Birthday LIVEでまた会いましょう!

以上、白砂碧波でした!

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