【TXT】Back for More - VMAs ステージ演出とTXT ver. 歌詞についての考察
「プッシュ・パフォーマンス・オブ・ザ・イヤー」の栄冠とともに、先月開催されたVMAs(2023年MTVビデオ・ミュージック・アワード)にて初披露されたのが、『Back for More』でした。サブリナ・カーペンターがトゥバを紹介する際「この星、最高のK-POPグループのひと組」とコメントしてくれていたのも素敵でしたね。
公式MVにはわかりやすい日本語訳が掲載されていることもあり、この記事ではおもに、 VMAsのステージから見えてきた曲の背景、そしてアルバムに収録されたTXT ver. の歌詞について、それぞれ考察してみたいと思います。
※大人目線からの考察です。リアコなモアちゃんはそっと画面を閉じて立ち去りましょう。
※記事を修正しました(10/25)。
VMAs ステージで描かれた3つのメタファー
オペラ座の怪人
「Back for More」の公式MVとは大きく異なっていたのが、VMAs ステージでの演出でした。雷雨の視覚的演出や音とともに冒頭を飾ったのは、不穏な空気を感じさせるパイプオルガンの音。『The Phantom of the Opera』(オペラ座の怪人)でおなじみ、大事なシーンになると必ず流れてくるあの曲、「Overture」です。
日本語では「怪人」と訳されている phantom ですが、元々は幽霊や幻想の意味。ということは、あのパイプオルガンはおそらく、これから幻想の世界が始まりますよと告げるサインだったのではないでしょうか。
雷雨の演出
冒頭、雷雨の中で踊るという演出からは『Sugar Rush Ride 』のMV冒頭で雨上がりの様子が映されていたことも思い出されます。
これは、Thursday’s Child の後も困難な現実を前にして、彼らの心の中では雨が降りしきっていた(コンセプト REALITY フォト参照)。けれど、幻想の誘いにのって、彼らは Sugar Rush Ride な世界へやってきた。そんなイントロダクションを描いたのではないでしょうか。
さて。歌詞で何度も繰り返される「I can see you comin' back for more (どうせ戻ってくるんだろう)」という悪魔的なフレーズからは、Back for More の世界が「Devil by the Window 」から「 Sugar Rush Ride 」で起きていたことだったのだろうとわかります。
歌詞半ばで「夢見心地だ 僕たち二人 昼間からほろ酔い気分」と歌っている辺りは、公式MVで彼らの目元にクマのメイクが施されていることから、お酒を飲んだというよりも、FREEFALL の考察でもふれた、映画「トレインスポッティング」で退廃に陥っていた青年たちの姿に重なってしまいます。
マイケル・ジャクソンの曲
それにしてもあのステージ、5人とも気迫に満ちていて本当に圧巻でした。マイケル・ジャクソンを彷彿とさせるパフォーマンスも、あちこちで話題をさらっていましたね。
海外でも「MJは誇りに思うだろう」「マイケル・ジャクソンのかつてのVMAsショーが再びよみがえったよう」。そう評した方や記者の方もいて、胸がアツくなりました。
MTV の公式チャンネルになかったので映像の掲載はしませんが、先のマイケルのステージとは、調べた限り、彼のシルエットが背景に浮かぶステージ演出などから、おそらく1995年のVMAs のことではないかと思われます。
ちなみに、この時ステージで披露されたメインの曲は『Billie Jean(ビリー・ジーン)』と『Dangerous(デンジャラス)』。どちらも、危険な女性から誘惑があったという曲なんですね。コラボしていただいたアニッタさん、彼女の歌詞パートでわかってはいたけど、やはり悪女の設定だったのですね。
トゥバはカバー曲で次のアルバムのネタバレやストーリーの伏線を描くことも多いのですが、6月の「 2023 Weverse Con 」でオム・ジョンファの『초대(INVITATION)』をカバーした妖艶なステージも(こちらもデンジャラスな歌詞でしたが)、今にして思えば Back for More への伏線だったのかもしれません。
世界市場を拡大していくためにあえて、アニッタさんパートのようなセクシーな歌詞が織り込まれた楽曲を取り入れたんでしょうけど、モアとしては「そんなに何度も誘惑のダメ押ししなくても良いのに…」と複雑な心境に陥ります。でも、それもすべては幻想だった、というところでしょうか。
TXT ver. の歌詞について
さて。トゥババージョンでは、そんな幻想を振り切るかのように、前向きな話が語られています。
とはいえ、次に続く『Dreamer』~『물수제비』までは、過去を内省して自分たちのアイデンティティを発見していくプロセスが語られていくこともあって、この歌詞後半の「みんなが抱えてる問題なんてない、依存を強いるものなんてない」は、少しだけ違和感を覚えました。何というか、一番最後の曲にしても良さそうなぐらいの強い意思。いったん過去の誘惑についてちゃんと振り返ったうえで、固い決意をしたということでしょうか。
そこで、悪魔的な誘い文句だと思った歌詞を見直し再解釈してみると─
幻想に誘惑する悪魔の代わりに、一緒に歩もうとしてくれる「君」がいてくれた。現実は厳しくても、魔法のような再会があったからこそ、あのような強い言葉になったのですね。
個人的にはこの3行、FREEFALLのストーリーの中で青年たちが未来に向かって進みはじめた決意であるとともに、今の 彼らの率直な意思表明でもあるように思えました。
というのは、「~みんなが抱えている”問題”」に problem ではなく issue がチョイスされているということ。problem には、困ったこと、解決されるべき問題という意味合いがある一方、issue は problem よりもマイナスのイメージが弱く、議論されるべき問題という意味があるのです。
つまり、みんなと同じような悩みがないというより、「(世の中で議論されているような)偏見や差別を僕たちは持たない。だから僕たちと同じ波に乗ろう、君に依存を強いたりなんかしないよ」と言いたいのではと。テヒョンは以前に、偏見のない音楽を追求していると語っていましたし、ヨンジュンはいつかジェンダーレスなアパレルショップをやりたいとも話していたかと思います。
どんなジャンルの音楽やファッションにも、ファンに媚びることなく果敢にチャレンジし、自分たちのものにしていく彼らのアティチュードに、そんな意思を感じますし、物事に対してそんな風にニュートラルな目線でいられたらいいなと思いました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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