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男が見る『娼年』レビュー。体を売ることは悪なのか?

『娼年』を見たのでそのレビュー(感想)記事を書いていきます。ネタバレは基本なしの方向。

結論から言うと、

「AVを見ていたのに気が付いたら哲学の授業を受けていた」

ような映画です。

娼年は娼婦と体を売ることについて、考えさせられる哲学的映画。

「松坂桃李が脱いでる!?」

「女性も脱いでる!?」

「いやそれどんな映画や!」

と、正直身体目当てで見始めたのですが、そんなやましい心が浄化される映画でした。

娼年ってどんな映画?

娼年は直木賞作家の石田衣良先生の恋愛小説が原作の映画。この『娼年』も直木賞の候補になりました。

日々に退屈している主人公の男子大学生が、娼婦(娼年)となり様々な女性、欲望と交流して、自分の生きる道を見つけるという物語。

時間は2時間ほど。ちなみに小説では続編として『逝年』があります。補足として『娼年』には男性同士の性的な絡みもあります。いわゆるBL。

なぜ大学生が娼婦(娼年)になったのか

一言で言うと「スカウト」。

松坂桃李さん演じる主人公の森中領(もりなかりょう)は名門大学の学生ですが、大学に通わず、バーでアルバイトをしている毎日を送っていました。

「何も面白いことがない」

そんな彼の元にバーの客としてやってきたのが、ボーイスクラブの運営者である御堂静香(みどうしずか)。

「女なんてつまらない」

領が言ったその一言が彼女に火を付けて、領はスカウトされ娼婦の世界へと足を踏み入れます。

本当に脱いでるのか?

脱いでます(即答)。

まず映画の出だしから脱いでます。しかし娼年は中盤にかけて「脱ぐことがメインではない」と分かると思います。娼年はとても真剣な映画です。

最後まで脱ぎますがそれはあくまでも演出に過ぎません。

松坂桃李の演技がすごい2時間

役者全員の演技がすごいとですが、特に松坂桃李さんの演技は凄いです!

変な話、演技をしながらさらに演技をしていると言いましょうか。彼の演技力に圧倒されました。

そんな松坂桃李の演技が映画娼年をAVではなく、映画に昇華したと言っても過言ではありません。

松坂桃李でなければ娼年の実写化は不可能でしたし、出来たとしてもそれが映画になっていたかは分かりません。

映像が美しい

娼年は肉体美に拘ったと映像を見て感じます。影と光をうまくつかって人の肉体、性行為を芸術に昇華しました。

音楽もその芸術を活かすように使い分けられていて、普通に映像作品としてオススメできます。

男が見る映画娼年レビュー

僕はちょうど主人公の領くんと年齢が近いです。そんな僕のレビューですがまず、シンプルに言うと「面白かった」。

それは決して性行為の演出や、女性の体に満足したというわけではなくて、娼年という作品に対して満足しています。ここまで考えさせられた作品は久しぶりでした。

非日常が実は日常なのかもしれない

娼年は娼婦と、それを買う人の世界を描いていくわけですが、僕自身初めましての世界で最初は非日常な世界だなと感じました。

しかし見ていくうちにその非日常の娼婦の世界は、自分が知らなかっただけでずっと昔からある世界だと見方が変わりました。

お金を払って体を買う──そんなやりとりは今日も当たり前のように行われている日常なのでしょう。

娼婦は悪なのか?

これは『娼年』の中で触れているテーマの1つだと思いました。

イメージとして「娼婦」というのは「汚らわしい」というのが存在するでしょう。表向きに「あ、自分娼婦やってます」とは言えませんし。

しかしそんなある種の「偏見」を娼年は「考え直すべき」と言っているように感じましたね。娼年を見ると娼婦のイメージが変わることは間違いありません。

体を売ることは悪なのか?

娼年の1つのテーマであろう体を売ることについて考えてみます。

娼年を見た後だと悪とは言えませんし、僕は娼婦は必要な物だと感じました。なぜなら、

娼婦は孤独を救う

娼年で男を買う女性たちはみな孤独な部分がありました。性的な欲求というよりもシンプルに寂しい心を満たしてほしい──その思いで男を買うのではないかと。

また、自分を理解してほしい。自分を受け入れてくれる人に会いたい。そういう気持ちもあるのでしょう。

娼婦(娼年)はそういった人の孤独を埋めることができる、数少ない存在だと思います。

「娼婦にしか話せないことがある」
「娼婦にしか癒せない傷がある」

僕はそう思います。もしも世界から娼婦が消えたら?娼婦に癒してもらっていた彼女らは、どうやって心を癒せば良いのでしょうか。

娼婦が消えた後の世界はとても寂しいものだと娼年を見れば分かります。

娼婦の仕事はセックスなのか?

「娼婦の仕事は何か?」

そう問われたら僕は「セックス(性行為)」と答えたでしょう。そう、娼年を見る前までは。

見た後は娼婦の仕事は「セックスだけではない!」と答えます。先述したように娼婦は人の心を癒すことができる。いわば心理カウンセラーに近いと思います。

映画の中でもそうですが、娼年の仕事はセックスだけではありません。食事をしてデートをしたり。趣味を共有したり。ただ話を聞いてあげたり。ある時は願いを叶えてあげたり様々。

しかし全てにおいて共通しているのは人との対話。

娼婦の仕事とは人と真剣に対話することではないでしょうか?

娼婦は人を愛せるのか

娼年を見て個人的に思った疑問。

言ってしまえば誰とでも寝る存在。お金を払って身体を売る娼婦に、1人の人を愛すことは出来るかの。それがとても気になりました。

娼年に関して言うとまだそこまで話を踏み込んでいないので分かりません。ただ領くんがいつか、1人の人を愛せると良いなと個人的な願望ですが思いました。

娼年は哲学

ここまで娼年のレビュー(感想)を述べてきましたが、ご覧のようにとても考えさせられる映画です。

愛とは何か。
セックスとは何か。
娼婦とは。

と、まさに哲学で考えることが尽きません。

ちなみに作中の領くんは哲学の本を読む人間だと分かります。また、哲学好き(読書好き)の女性も登場します。

それらはただの設定に過ぎないかもしれませんが、普段真面目に考えないセックスや娼婦について、娼年という作品が「真面目に考えてみては?」とメッセージを送っているのかもしれません。

娼年レビューまとめ

物語、映像、音楽ともに芸術性が高い
娼婦について考えるきっかけになる
娼婦の仕事は人ととの対話

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