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仮面舞踏会
少なくとも日本では「不倫や浮気は絶対悪であり、どんな理由があってもしてはならないものだ」とされている、もちろん同感である。ちなみに、フランスでは婚外子が許されていたり不倫に寛容な社会的風潮があったりするので「少なくとも日本では」という言い方になっているし、そもそも一夫多妻制が布かれている国や地域もあったりする。
著名人(芸能時や政治家)が一般人と不倫をすると、性別関係なく著名人の方がマスコミや週刊誌にたたかれ、ひいては社会的制裁を受ける。著名人と著名人が不倫関係にあると有名な方がマスコミや週刊誌にたたかれる。もしくは、どちらも有名な場合はどちらもたたかれる。一般人が著名人と不倫をすると、これまた著名人の側がマスコミや週刊誌にたたかれる。これはあくまで不倫の一例を類型化して抽出したときに考えられる例だ。他にも、著名人同士の不倫や一般人同士の不倫など、いろいろとあると思う。
さて、著名人が著名人であるが故にいつもたたかれることが正当化されることを皆さんはどう思うだろうか。もしくは、著名人が著名人だからではなく一般人が一般人であるからたたかれないことが正当化されることを著名人の例と比較してどう思うだろうか。僕は単純に、そういった構造が面白いと思って見ている。特に、クソみたいなスキャンダルで立場を追われた人や、そういった人を抱えて番組を制作しているメディアが来る日も来る日も一生懸命にスキャンダルを取り上げて、著名人を批判している姿を鳥瞰していると、とてつもなく滑稽である。
やらかした人がやらかした人のことをメディアというツールを用いて叩きのめす構図やについては知らないけど、少なくとも何でもかんでも芸能人をたたくのは視聴率が取れるからであり、それを見たいと思っている一般の視聴者が山のようにいるからである。某法律事務所の調査に面白いものがあったが、既婚男性(20代~60代)の15.8%、既婚女性(20代~60代)の10.8%が過去に浮気をしたことがあると答えたそうだ。ということは、著名人の不倫スキャンダルが生きがいであるかの如く、翌日の週刊誌やワイドショーを心待ちにして夜も眠れない人の中にも一定数は浮気男・浮気女が潜んでいるということになる。そういった人が不倫をした著名人をどう見ているのかは興味深いところだが、他人のスキャンダルに一定の興味を持っている時点で自分の事は棚に上げているか希釈しようとしているような印象をもつ。つまり、やばい人がやばい人をたたくおかしな構図の番組を望む視聴者の中にも、自分の過去の浮気や不倫を棚に上げて他者のスキャンダル興味津々である人が一定程度いる可能性があるということだろう。
著名人が記者会見で逃げる姿はあまり見かけないが、一般人の不倫経験者が語る、不倫のきっかけは「相談に乗ってもらう」とか「既婚者と飲みに行った」とか「残業で二人きりになった」という理由らしい。同じことを芸能人が会見の場で言ったらどうなることやら。一方で一般人が配偶者に対してこう述べるシチュエーションは多いのではないかと想像する。あくまで想像だが、そんな言い訳が通用するかというと、通常は到底通用しないだろう。
不倫がいいことであるとは全く思わないが、自分の事を棚に上げて他者を批判することは、尚更いいことだと思えない。今の世の中って、そういう精神状態の幼い人が多い気がする。プロ野球だって真っ先にたたかれるのは試合に出場した選手であり、二軍三軍をたたくことはしない構図のように。外面は紳士的雰囲気を構えておいて、実は人間の仮面をかぶったチンパンジーのような精神状態の人があふれかえる中で、チンパンジーの仮面をかぶった人間が生きていくのは容易ではない。そもそも、チンパンジーの仮面をかぶらなきゃ生きていけない人間ももはやオワコンなのかもしれない。
一度仮面舞踏会へ行ってみたい。