【ショートショート】しゃべるピアノ
7人の白男爵と5人の黒男爵のおしゃべりは尽きない。
師(白男爵)「先程の7歳の女の子は、緊張してましたな。手が汗まみれでした」
羅(白男爵)「まあ、コンクールのトップバッターですからねえ。そりゃあ緊張するでしょう」
祖(白男爵)「次は10歳の男の子みたいだよ。見てみよう」
師「始まりましたな。お、良いタッチです。才能を感じさせますな」
怒♯(黒男爵)「これはひょっとして、とんでもない逸材ではないでしょうか」
羅「おお、あの厳しい怒♯さんがそこまで言いますか」
怒♯「はい。私の先祖はショパン家に仕えておりましたが、この少年からはショパンに近いものを感じます」
祖「はぁ〜、出た出た。またホラ吹き男の自慢話かよ」
怒♯「なんだと!私の先祖とショパンを愚弄する気か!!」
怒♯はそのまま憤死した。
10歳の男の子の演奏中だというのに。
このコンクールの優勝者は、一番手の7歳の女の子だった。
二人目以降は全員、ドのシャープの音が出なかったからだ。