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年末年始の影バイト

 勇気を出してアルバイトに応募した。年末年始限定の、郵便局の年賀状仕分けバイト。高校生の頃に一度、姉や友人と一緒に同様の業務に就いたことがある。立ち仕事ではあるが一日数時間程度だし、ただ引き篭もっているよりは健康にも良いだろうと思い、数日悩んだ末にウェブから応募した。
 すると、すぐさま自動送信メールが届いた。ウェブから面接の予約が出来るとのことだった。素晴らしい。私の高校時代には、もちろんそんな機能はなかった。私は面接予約ページにアクセスした。すると、こんな文面が表れた。
『面接予約可能枠がありません。お手数ですが、応募先へご連絡をお願いします。』
 もう応募枠が上限まで到達してしまったのか、それとも短期バイトはそもそも面接予約が出来ないのか、分からなかった。
 ひょっとしたら私はとんでもない闇バイトに応募してしまったんじゃないかとも思った。私には闇バイトと光バイトの見分けがつかなかった。郵便局の公式サイトから応募したつもりだったが、それは巧妙なフェイクで、実は強盗の片棒を担がされるとか、通帳の名義を貸さなければならないとか、そういう目に遇うんじゃないかと、気が気じゃない数時間を過ごした。
 数時間。たった数時間後に、電話がきた。郵便局からだった。
 私は恐れ慄きつつも電話口の人と話し、その結果、面接を受けることに決まった。相手が指定した日は偶然にも私の休日だったが、もしも違っていたならば、即刻不採用となっていたかもしれない。何はともあれ、顔写真付きの履歴書が必要とのことだった。それで早速履歴書をパソコンで作成し、印刷した直後、不安が押し寄せてきた。履歴書は手書きじゃないといけないんじゃないか? というか何故数日間のバイトに履歴書が必要なのだろう? 百歩譲って履歴書が必要だとして、顔写真は一体何に使うのだろう? 顔採用枠があるのだろうか?
 インターネットで調べていると、履歴書は手書きが良いという意見が多く見受けられた。顔写真は三ヶ月以内に撮影されたものでないといけないらしい。写真撮影の前に美容室に行くのが面倒なため、自分で前髪を切ることになりそうだ。
 不安点はまだまだあった。
 電話で面接の説明を受けた際、入り口までの道も教えてもらったのだが、私にはそれがよく分からなかった。そこは一度も行ったことのない郵便局の上、私は極度の方向音痴だった。一応メモは取ったけれど、頭の中に地図を思い描くのは困難だった。
 兎にも角にも、私は証明写真を撮り、手書きの履歴書を準備し、面接に行かなければならない。採用される展望は全く持って見えないが、まずはそこからだ。