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命のパンケーキ
カメムシ臭の漂うキッチンで、私は米粉のパンケーキを焼いていた。
今月は食費を一万円以内に収めたいと考えていた。お米が底を尽きたけれど、お米を買うだけの資金は残っていなかった。残り二十日余りの主食は米粉のパンケーキになりそうだった。
米粉のパンケーキミックスは、一度に十二袋購入していた。一袋につき四枚焼くとして、全部で四十八枚は焼くことができる。二十日間は余裕で凌げそうだった。
砂糖不使用の米粉のパンケーキミックスに、牛乳ではなく無調整豆乳を投入する。それだけで健康的な気がしてくるのだから不思議だ。
卵と豆乳と少しの水と、それからミックス粉を混ぜ合わせ、スプーンで練っていく。ガス代節約のためにカセットガスコンロにガスボンベを用い、フライパンで焼く。
観察していると、生地がむくむくと膨れてくる。これを観察するのがとても好きだということに、最近気がついた。パンケーキが着実に膨張する様は、健気で可愛いのだ。とはいえいつまでも観察していると焦げてしまうので、適当なところでひっくり返す。
せっかちだからなのか、いつもタイミングが早く、べちゃっと潰れてしまう。それも含めて楽しいのだから面白い。今一番楽しいことは、米粉のパンケーキ作りだ。
もちろん、米粉のパンケーキは食べても美味しい。主に目玉焼きにケチャップか塩胡椒をかけたものを載せて食べる。一度だけ納豆をかけて食べたことがあったが、特に問題はなかったので、卵に飽きたら再度やってみるつもりだ。
米粉のパンケーキを食べるとき、いつも喉が詰まる。窒息しそうになりながら、必死にお茶かスープを飲む。よく噛むことはできない。何せ喉に詰まらせながら食べるのが楽しいのだ。よって、二回か三回だけ噛んだのち、勢いをつけて飲み込む。喉が苦しくなり、水分を摂る。これが楽しい。生きている感じがする。私は米粉のパンケーキを食べるとき、この上なく生命を感じている。